心の塊
カウンター棟でヨハンが膝から崩れ落ちていた。
「どうしたんだ? なあ」
ヨハンが大きな涙を落とし
「姉様だ、絶対…… 」と泣きながら呟く。
力が入らないヨハンを支えながら寮に帰った。
そんな今まで見たことのないヨハンの姿に驚いているセシルに
「セシル、ごめんな、びっくりしたな、ありがとうな、ヨハンは俺がいるから大丈夫だ。セシルは、気をつけて家に帰れよ」
「はい、リル様 ヨハン様 」とお辞儀をしてセシルは帰っていった。
ボーゼンとしているヨハンを俺の部屋に連れて帰った。
「大丈夫か? ヨハン! ほらスペーリィが心配してるぞ」
ヨハンの使い魔白い鷹のスペーリィがヨハンに心配そうに寄り添ってる。
温かいミルクが入ったカップをヨハンの両手に握らせて
「ほら、飲んで、体もあったまるからさ」
「あ、ありがとう、なあ リルあの人……さ…… 今どこに住んでるの?」
「え?ずっとジーザメリウス領の城下町で住んでるけどお前どういう関係なんだ? 」
「姉様だと思う。ずっと行方知らずの双子の兄様と姉様だと思うというか絶対」
「確かに髪色と瞳の色は同じだけど肌の色が違うぞ」
「姉様たちとは母親が違うんだ、姉様たちは母親に似て肌が白い。あのさ、うちの父様と俺の母様は政略結婚でさ1番上の兄と俺は母様の子供なんだけど二番目の兄と姉は父様が侍女に恋して生まれた子供なんだ兄様達の母親は俺が生まれる前に病気で亡くなったんだけどその後離宮に閉じ込められていたんだけどいなくなってから行方知らずでさ」
「もう一人お前と同じ年の妹いなかったっけ? 」
「ああ、ミルフィーな、あいつは、兄様達の母親が亡くなったあとも父様と母様も喧嘩ばかりでな……あいつは、側室の娘なんだ、俺の下に母親が産んだ第4王子と側室が産んだ妹もいるよ、うちの父様マジで訳わかんね~ 」
俺と違う意味で複雑なんだな。ヨハン…… 頭の中で相関図描きながら話聞いてたよ。
ということはティコは、カリオス王国の第2王子でシルフィさんは、皇女だったのか。
ヨハンは、結局その日は俺の部屋に泊まり、次の日の朝早く自分の部屋に帰った。ヨハンの、見送りがすんだ途端すぐに、父上に通信した。
「朝早く申し訳ございません、父上 」
「ああ、どうした何かあったのか? 」
「ティコとシルフィさんがカリオス王国の第2王子と皇女って父上ご存知だったんですよね」
「ああ、だからどうした」
「私の友人でカリオス王国の第3王子が、ティコ達に会いたがっています」
「そうか、でもあの国の皇后は、自分の第1王子を皇太子にするためティコ達が邪魔の様だ、リル…… 時には、感情だけで動くのは、危険だ。だからお前にもティコの行先は、伝えない。いいか、リル これからは、人としての感情を時には切り捨てないといけない時もある事も学んでいけ」いつに無く厳しい父上からの言葉だった。
「はい……わかりました、父上」
「ところで、もうすぐ剣術大会だろう。今度は、私も見に行くから会えるのを楽しみにしているぞ」
「え! 本当ですか、必ず優勝いたします! 優勝の花の冠必ずお渡しします」
「ハハハ! それは女性に渡すものだろう」
「そんな人は、いませんから! 」
「そうか、まあ楽しみにしているよ」と、いつもの笑顔の父上にいつの間にか戻っていた。
いつか、ヨハンをティコに会わせてあげたいなという思いが塊になって心に沈んでいった。
ご覧いただきありがとうございます。
ティコにも実は複雑な環境で育った過去がありました。
コントレールは、厳しいけど1番優しい人なのかもしれません
剣術大会私も楽しみです
次回は7・25 9時の更新です、よろしくお願いします