最近幼馴染の様子がおかしいと思う
普段は読むだけで初めて書いたのですが、最初書こうとしていたものが別物になっていました。
書くのって難しいですね。
生暖かい目でおねがいします。
「最近幼馴染の様子がおかしいと思う」
普段は特にそう感じることもない、ふとした違和感を感じ始めた。
日に日に感じる違和感をとうとう俺は何かが起きていると確信した。
最近ではあからさまに避けられて居る。
最初に感じた異変なんて、声を掛けただけで素っ頓狂な声をあげて100メートルなら自己ベストじゃないだろうかと言う速度で走り去った。
そうかと思えば、夕方には飯を作りに来てくれたりとなにかと忙しない。
今では俺のことも見ようとせず話もおなざりな有様である。
俺としてもなんとかしたくて彼女、有馬七重に何か気に触るような事をしたか確認してみたところ。
「透君は何も悪くない!」
の一点張りだった、謎は深まるばかりである。
この状況になる前の俺たちは仲の良い幼馴染だったはずだ、お互い兄弟がおらず幼い頃は近所では兄妹のように思われていたほどだ、うちの母なぞ俺と七重を交換したいとか真顔で言うくらいだ。母は娘が欲しかったらしい、そんな感じなもんでマジで兄妹のように今まで来たのにこのよそよそしい感じになってしまって困惑している。
今は母も父の出張先に一緒に付いていっている。母は七重に俺の面倒を押しつけたらしい、その事を怒っていて今の態度なのかと言うと違うみたいだ。
彼女七重は10年くらい前、だいたい5歳の頃に隣に引っ越して来た、その頃の俺には理解できなかったが今なら少しはわかる。
若い女が幼い子供を連れて隣のボロアパートに越して来た。近所では少し腫れ物扱いだったであろう、よくアパートからは七重の泣き声とそれを宥める母親の紗子さんの声が聞こえていた。
その日俺は母と買い物帰りだった、七重が俺の家の玄関先で泣き出していて紗子さんもそれを茫然と眺めていた。母は難しい顔をしていたが、俺は先程買ってもらったお菓子を握りしめて七重にかけよった、母が何か言っていたが止まらなかった、七重の前まで行くと俺のお気に入りのお菓子のパッケージを破いた、勢いよく破いたせいか中身が飛び散ってしまった。
飛び散ったお菓子を見た俺は七重以上の大声で泣き始めた、最初は格好良く七重を泣き止ませようとしたのだろう、逆に大泣きして見せたせいか七重は泣き止み紗子さんは茫然から呆然と言った感じだろうか。
「これ」
落ちていたであろうお菓子を拾い集めて七重が差し出してきた。
「いいこいいこする」
先程までガン泣きしていた子とは思えない良い笑顔でいわれた。
「きちゃないよ!」
そう言って手を跳ね除けようとしたところで母の拳骨をもらって、身悶えた。
何があったのか痛みに悶えていたのでわからないがいつの間にか我が家に俺と母と七重と紗子さんがリビングのテーブルを囲んでいた、俺と七重は用意されたお菓子に貪りついていた、いや食べない七重に無理やり食べさせながら俺は食っていた。
母と紗子さんの話は難しくわからないので、七重を連れて居間で遊ぶことにした。途中で七重が眠ってしまい俺も眠ろうとしたところに紗子さんの泣き声が届いた、覗くと紗子さんを抱きしめてあやしている母と目が合った、怒ったような悲しいようなそんな目だったのを覚えている。それから間もなく七重の隣に寝転がると数秒でねてしまった。
それから程なくして有馬家と神山家は家族ぐるみで仲良くなっていった。
とまぁ話が逸れたが、いまは俺の所の両親は出張先に居て俺の面倒を七重に任せている。母いわく七重ちゃんが居るから何も心配ないわ、とのこと。
七重は専業主婦の母から家事全般仕込まれている。毎日夕食を作りに来る位なら造作も無かった、ただ俺がズボラで掃除洗濯をほぼしていなかった以外は、いつのまにか掃除も洗濯もされていたのだ。少し思う所はある、同い年の女の子に何させて居るんだ!とか。
悶々と思考の渦に落ち込んでいると、プハッと息を吐くのと同時に缶ビールをテーブルに置いた女は七重の母である紗子さんだ。
「んで透、七重ちゃんの様子がおかしいって?」
自分だけではどうにもならず、七重の母である紗子さんに相談していたのだが、紗子さんからの反応がなく待って居る間に考え込んでしまっていたようだ、失敗だったかもしれない。この人酒癖悪いのにお酒好きで、そして弱いと来て居る。普段はピタッとしたスーツを着た本当に格好良い女性なのだ、七重の前だと酒もタバコもしないのだが俺の前だとお構いなしだだ。
紗子さんはタバコを取り出し火を点けながら促してくる。んで?ってぐあいに。
「最近避けられてるって言うより、距離を置かれてるきがするんだ」
ふーん、となんとも興味無さげにタバコの煙をくゆらせている。
「これでも真剣に悩んでるんだぞ、紗子さんの事も母親だと思って相談してんだからな」
紗子さんは少し驚いたようにこちらを見た。
「何キモイ事言ってんのよ、華さんの息子だからって調子に乗るんじゃないわよ、まぁいいわ」
タバコを灰皿に押し付けて火を消した。華さんとはうちの母親の名前である。
「多分あれね、思春期特有の反抗期ってやつ、私も最近煙たがわれているしね」
「紗子さんの場合スキンシップが激しいからだと」
「そりゃ、可愛くないクソ息子より可愛い愛娘でしょ?」
にやりとだらしなく笑う紗子さんは最高にダメ母だとおもった。
「俺は紗子さんに何か恨まれる事した覚えはないんですが」
そういうと紗子さんは険のある目で俺を見て来た。
「男ってだけでマイナススタートで貴方が未だプラスに出来ていないだけよ、まぁこれからも下降予定だし」
不機嫌そうにそう言うとビールを呷った。なんとも理不尽な。
その後は酔い潰れるまで俺と元旦那の悪口を言っていた。
「男なんてみんな碌なもんじゃないわ、でもあんたには一応期待はしてるわよ」
酔い潰れた紗子さんを見ていると、先程酔った勢いでの言葉が紗子さんの複雑な心境を表して居る様だ。
ため息をつきながら棚に置いてある消臭スプレーを手に取ると紗子さんに向かってそんなの知るかよと、スプレーをかける。
今はもう隣にボロアパートは無く更地だ、買い手もなく雑草が生い茂っている。
有馬家はここから一キロほど離れた高級住宅地に引っ越していた。こうして酔い潰れている紗子さんだが実はかなり凄い人なのだ。あのズタボロな状態から数年で上流階級まで上り詰めたのだ。
そんなすごいのか残念なのかわからなくなった人を背中に背負うと家を出た、丁度夜中の10時を回ったところだ良い感じに今夜は満月で外も明るかった。
七重になんて声を掛けたものかと考えながら歩いていたら、有馬家まであっと言う間に着いてしまった。
インターホンを鳴らして待つ間、今まで七重とどう喋っていたのか思い出せなくてあせってきていた。
「はい、有馬ですがどちら様でしょうか?」
インターホン越しだが、久しぶりにまともに七重の声を聞いた気がした。
七重の声に気を取られていて返事が遅れていると備え付けのカメラが動く音がした、不審者だと判断されると警備会社への通報システムで物の数分でセキュリティが駆けつけるらしい。紗子さんがいっていた。
「あ、透君とお母さん!」
そう言うと慌ただしくパタパタと言う足音を残し遠ざかっていった。少し待っているとガチャウィーンと言う機械音がした後に扉が開くと、顔を覗かせる七重と目が合った。
「こんばんは、紗子さん酔い潰れちゃって送りにきたよ」
平静を装いつつも内心変な緊張でどもらなかったか自分をほめたかった。そんな些細な心配は七重が玄関の扉を大きく開いて迎え入れる迄だった。
七重は風呂上がりだったのか薄着で髪もしっとりしていて、頬なんかはほんのり赤みをおびていた。月明かりの下にその姿はくっきり浮かび上がりとても神秘的ですらあっつた。
呆けて居る俺を訝しみ俺の視線を辿った七重は一瞬で耳まで真っ赤になった、ボンって音が鳴るんじゃないかと思うほどの変化だ。
もちろん薄着のシャツを押し上げている最近おおきくなったなーとか思っていた胸なんか一瞬しか見ていないはずだ。体感一瞬。
胸元を腕で隠す様にしてから少し硬質的な声で「どうぞ」と迎え入れてくれた。
怒らせたかもしれない七重に視線を送らないように気をつけながら玄関をくぐった。
「ごめん、ここで少しだけ待ってて」
言うが早いか七重は慌てて駆けていった。まさに頭隠して尻隠さずである。
スポティーなショートパンツに包まれたお尻にスラット伸びた脚を見えなくなるまで見送った。
「エロガキ」
ビクンと心臓が跳ねてサーッと血の気が引いていく音を聞くと、言い訳せずにごめんなさいした。
おんぶから肩を貸す体勢にかえ、チクチクと紗子さんに嫌味を言われながら待つ事数分七重が帰ってきた、上にガウンを羽織り下は学校指定の芋ジャージを履いていた。
起きた紗子さんを認めるとガウンと芋ジャージを着て来る時に一緒に持って来たであろうミネナルウオーターを手渡した。
「ありがと、七重ちゃん」
紗子さんからはハートが飛び出しそうな感じだ、どんだけ七重好きなんだよ。そんな七重は紗子さんを心配気に見ていた。
「大丈夫だよ、呑み過ぎたと言っても缶ビール2本だからいくら弱くても二日酔いにはならないと思うよ」
俺の話を聞いてか七重は安心したように息を吐いた。
「透君申し訳ないけどお母さんを二階の寝室までお願いできる?」
もともとそのつもりだったので二つ返事で了承した。
紗子さんを寝室のベッドに寝かせると七重が申し訳なさそうに話しかけて来た。
「今日はお母さんが迷惑かけてごめんね」
「俺も紗子さんに相談したい事あってさ、だから紗子さんを怒らないでやってほしい」
手を振りながら紗子さんの弁明をするも、紗子さん本人からは「そーだそーだ!ー透が悪い!」とか言っている。やっぱ怒って貰おうか。
「お母さんが重ね重ねごめん」
七重はそう言って苦笑を浮かべた。
「いつもの事だしいいよ、もう遅い時間だし帰るな」
そう切り出した俺に紗子さんは爆弾を落としてくれた。
「そうだよね、さっきガン見して目に焼き付けた七重ちゃんの胸と尻をオカズにしないといけないしねエロガキ」
などと言いながら枕にうずくまった。そして数秒後には寝息を立てはじめた、はやいなおい。
七重の方を見ると真っ赤になってプルプル震えていた。表情は怖くてうかがえなかった。
そんなこんなでも、玄関まで見送ってくれる七重。
「お母さんいつも酔っ払うと「男は皆程度はあるが狼、透見たいのには一番気をつけろ」って」
何故か不安気にこちらを見てくる、マジで覚えてろよ紗子さん!否定出来ない部分があるけど俺の名前いれるなよ!
「あははは、やだなー紗子さん」
笑って誤魔化すことに努めてそいじゃまた明日と言い残し急いで有馬家を後にした。
月明かりの下家路を急ぎながら、なんだかんだで紗子さんのおかげかいつもよりはまともに喋れたんじゃないだろうかと思うも、余計なこと言いやがってと言う強い思いが残った、今日はさっさと寝よ。
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先程閉じられた扉をしばらく眺めた後重たい息を吐く。今回は上手く透君と話せただろうか?
先日、ある事件をきっかけに知り合った先輩に言われたのだ。
「七重君は好きな男の子はいるのかな?」
その言葉を聞いて何故か透君が脳裏に浮かんだのだ、今までだってそう言う話をしてこなかった訳ではない。この先輩の纏っている死の気配が私の本能を刺激したのかもしれない。
ただハッキリと今まで幼馴染で兄妹であった透君を異性として認識していた。意識し始めるとどうしても顔に熱が上がってきてしまう。
そんな様子を愉しげに眺めていた先輩は七重にイタズラぽく笑いかけた。
「命短し恋せよ乙女」
最近では特に聞かなくなったフレーズだが私の胸の奥にスッと入り込む何かがあった。
「栗栖野先輩は好きな人はいないんですか?」
意趣返しのために発した言葉だった。
私は先輩の見たこともない優しげな笑みに見惚れてしまった。
「居るよ」
「誰ですか?教えて下さい!」
自分でもビックリする様な食いつきだった。
「さてね、おっと時間の様だ行くとしよう、次は七重君のオモイビトの話が聞きたいな」
また意識させられて顔に熱が上がる。だが今はゆっくりと芽生えた気持ちを整理している時間はなさそうだ。
今から私は・・・・・・
そんなこんなで慌ただしさに流されて、翌日に透君と顔を合わせるまで、忘れてしまっていた私ははしたなくも乙女が出してはいけない声を発して透君から逃げ出したのである。
はあ、ともう一度深くため気をつくと後ろから声が掛かった。
「こら、あんまりため息をつかない!くせになるよ?」
言葉とは裏腹にニヤニヤと意地の悪い笑顔のお母さんを認めて、またため息をつきそうになる自分に気付き苦笑いを浮かべる。
お母さんはそれをどう受け取ったのか、満面の笑みを浮かべ。
「久しぶりに一緒に寝ようか、色々と聞きたいことがあるしね」
今度こそ大きなため息を止めることは叶わなかった。
「お母さん、お酒とタバコ臭いからヤダ」
絶望感を表した表情に満足してお母さんの寝室に向かう、どうせ一緒に寝ようと来るのだから諦めてしまった方がはやい。階下では慌ただしく脱衣所へ向かうお母さんの姿を見送る。
お母さんのはしゃぎぶりを見るに今夜の家族会議は長くなりそうだ、明日は寝不足かな。
翌日、目を覚ますと同じベッドで寝ていたお母さんの姿は既になかった。リビングに向かうとお手伝いさんの佳菜子さんが来ていた。
「佳菜子さんおはようございます」
お手伝いさんの佳菜子さんはここに来てから3年ほど経っていた。
「七重さんおはようございます」
テーブルには食事が用意されていたので素早く済ませると洗面所で顔を洗い身だしなみを整え、佳菜子さんに「行ってきます」と言うと家を出る、いつもより早い時間だ。というか、ここ最近では早い時間である。
昨夜、根掘り葉掘りお母さんに聞かれて茹で蛸みたいになっていると。
「七重ちゃんの世界は物凄く変わったかも知れないけれど、それ以外の人は何も変わっていないことを忘れないで」
「七重ちゃんは何も悪くないけれど、その変化に透は付いて行けてないみたいだしね」
そうお母さんに言われて私は頭をハンマーか何かで殴られた様な衝撃を感じた。
「そうだよね、私の内面の変化なだけで世界の何かが変わった訳じゃないんだよね」
少しだけしょんぼりしてしまう、浮かれていた自分がはずかしい。
「私はそれで失敗したからね、可愛い娘には同じ事はさせられないかな」
そう言うとギュッと私を抱きしめて
「感情に任せないで一度整理してから・・・・・・答えを出しなさい、私は貴女の出した答えを応援したいわ」
私は何も答えずお母さんの言葉を胸中で繰り返した。
「もう、遅くなっちゃったわね、寝ましょうか」
お母さんは微笑みながら私の髪の毛をかき混ぜた、いつもなら反発していたがその時はされるがままになっていた、ただただ心がポカポカしていた。
思い出すと気恥ずかしい記憶だけれど、今の私には沢山の勇気を与えてくれる。
この時間、この角を曲がると彼が丁度家を出てくる。
昔のように、ううん昔より一歩進んだ関係を先ずは目指していこう!
昔住んでいた、今は空き地を越えると丁度彼・・・・・・透君が出てきた。
先ずは、いつも通りに
「おはよう透君、一緒に学校行こ」
私に気がついていなかった透君が驚く。
私はそれだけで何故か嬉しくなってしまう。
青く晴れた空を見上げて願った。
今日は素敵な日になりますように!
ありがとうございました。