魔法の授業は大変だ!
「少し空気が悪いようですが、気にせずに授業を開始しましょう。本日は魔法についてです」
何事もなかったように授業が始まった。
すると一瞬で学びの姿勢に入るクラスメイトたち。
みんな、真剣なんだな。
俺も頭を切り替えよう。
「魔法には詠唱が必要ですが、口に出す必要は無く念じること、そして発動のキーワードによって効果を発揮します。ここまでは皆さんもご存知でしょう。ただ慣れてくると詠唱を短縮したり、追加することで違う効果を与える事もできます。ですので簡単な魔法だからと侮るのは禁物です。何故なら工夫の余地がたくさんあるという意味でもあります。そういった工夫が勝利へ繋がることでしょう」
まあ普通に暮らす分には特に必要ないもんな。
光の呪文なら手に灯せばいいし。
ただ戦闘中なら相手の目の前で発動すれば目くらましにもなる。
それを知らないと開始早々に目を潰されて戦闘終了だ。
さすがにプロの召喚士ならこんな手には引っかかったりはしないけどな。
「そして魔法には種類があります。生活魔法が明かりを灯したり等、日常的なものですね」
「それとは別に攻性魔法。相手を攻撃するためのものです。色々な属性がありますが、各々に弱点もあります。木属性は火に弱いといった法則性を理解しておきましょう」
「次は防御魔法。攻撃を防いだり、跳ね返したりするものですね。自分や召喚獣を守る上で非常に重要になります。しっかりと身につけておくことをお勧めします」
「次に回復魔法。その名の通り傷を癒すものですが、治癒力を上げるというものなので手や足を失った場合の再生はできません。ただし、切断されてすぐに回復魔法を唱えた場合は繋がる可能性が高くなりますのですぐにギブアップして治療を受けてください。血を流し過ぎると、傷は治ったとしても死亡する確率が上がります。絶対に無理はしないように」
「次に幻惑魔法。惑わしたり、分身を作ったり、眠らせたりですね。抵抗力が高い場合には効果が薄いですが、疲れ果てていた場合や魔力が尽きかけの場合には効果が高まります。ですが難易度は高いのですぐに覚える必要はありません。あるという認識だけしておいてください」
「次は身体強化魔法。自分や召喚獣の強化をするものです。前衛スタイルの方は必須になってきますので、しっかりと覚えてください。早さが欲しいなら足に、力が欲しければ腕に、かける場所によって効果は変わってきますので臨機応変に闘うことが可能になります。いずれは全身にかけることを目標にするように」
「最後になりますが、魔法にはイメージが大事です。どういう風に発動させるのか?大きさ、長さ、数、それらをイメージし、キーワードを発動することにより様々な応用ができます。各自、自分のスタイルにあった魔法を身につけていきましょう」
「では午前の授業は以上になります。午後からはスタイル別の授業となります。後衛型はこの教室ですが、前衛、中衛型は別教室になります。前衛型はこの隣、中衛型はさらにその隣となります。間違えないように。それでは終わります」
「「ありがとうございました!」」
午前中の授業が終わるとお楽しみの昼食だ。
「覚えることがいっぱいで頭が痛いよ……」
「俺も筆記の授業は苦手だ……体で覚える派だから……」
そんな会話をしつつ、ルースと昼食を食べていると、
「隣いいか?」
フレアが話しかけてきた。
俺は突然の申し出に驚いたが、特に断る必要もない。
「ああ、どうぞ」
「失礼する」
……やはり、デキてるのか!?
あの野郎……どうしてくれよう?
二人も美少女を……!両手に花じゃないか!(ルースは残念ながら男だぞ)
どういう心境の変化かは知らないが、周囲は戸惑いを隠せない。
そんな中で上品に食事をするフレア。
周囲の視線におろおろするルース。
……そして嫉妬に狂った瞳で睨まれる俺。
「オーレリア様は自分の意思で動くことができるのか?」
素早く食事を終えると、突然話しかけてきた。
「えっ、どうだろう?ちょっと待って」
命令したとおりに動くのと、自分の意思で動くのは違うからな。
本人に聞いてみるしかない。
ファーナは自分の意思で闘えるか?
はい、今なら問題なく自分の意思で可能です。
ただマスターの指示が最優先されますが。
なるほど、今知れて良かった。
フレアには感謝しないとな。
「自分の意思で動けるって」
「そうか、ではいつでもいい。付き合ってくれないか?憧れのオーレリア様と闘ってみたい……」
これはいかん。
後半の声の小ささで、みんなには付き合ってくれの部分しか聞こえていない気がする……
まあそれはひとまず置いとくとして。
ファーナどうする?
そうですね。
模擬戦など許可がでた場合はいいのではないでしょうか?
「構わないってさ。ただし、模擬戦とか先生が許可した場合だって」
「本当か!?ありがとう!」
まっすぐな瞳で俺を見つめ、にこやかに笑うフレア。
よほど嬉しいのかポニーテールがぴょこぴょこと動いている。
やっぱり可愛いよな。
マスターは女の子好きですね。
なんだよ、悪いのか?
別にそんなことは言ってませんが?
言葉にとげがあるように感じるがまあいいや。
それよりもこの空気はどうしよう?
怒りの視線が先ほどよりも強力になり、今にも襲い掛かってきそうだ。
うん、逃げよう。
「じゃあ俺は部屋で休んでるわ」
「ぼ、ボクもそうしようっと!」
あまりの居心地の悪さにルースも一緒に逃げ出す。
しかし俺たちが動き出すと一斉に野郎どもの顔も同時に動き、まるで仮面のように俺たちを見つめてくる。
「ひっ!?」
恐怖のあまり、ぎゅっとルースに抱き着かれた。
何くっついてんだ……?
見せつけてんのか?
ユルサナイユルサナイユルサナイ…
それによりまたしても殺意が高まってしまう。
ルースは男だってば……
「こ、こわいよ!早く部屋に戻ろう!」
ただ、おびえた表情がすごくかわいく見えてしまい、非常に困った。
それに何だかいい匂いするし、瞳はウルウルだし、俺の腕を掴む手は柔らかい。
えっとぉ……
マスターはそちらもイケるのですか?
ち、違うわい!……多分。
完全に否定できないのが恐い。