姉妹っていいものですね……
カイたちを客室に案内した後、フレアは久しぶりの自室に戻る。
「ふぅ……」
そこに彼女は荷物を置くと、一息ついた。
流石に疲れたな……
そう思いつつ、ベッドに腰かけて休息していると、急にドアが開く。
「お姉ちゃん!お帰りなさい!」
勢いよく姉に抱きついたのはマリーだ。
「まったく、ノックをしなさいと何度も言っているだろう?」
「えへへ!ごめんなさい!」
全くこの子は……
「それで?何か用か?」
「手紙で読んだけど、ほんとにオーレリア様がカイお兄ちゃんに宿ってるの?」
「ああ、間違いない。父上からも話を聞いてみるがいい。しっかりと認めていたからな」
「へぇ、そうなんだ」
自分で聞いておいてそれほど興味がなさそうに答える妹に、姉の勘が働く。
「本当は何の用だ?」
「別に嘘じゃないよ?興味はあったし。だけど一番聞きたいのはぁ……」
マリーはニヤニヤと笑いながら言葉を続けた。
「カイお兄ちゃんのどこが好きになったのかなぁってこと」
「べっ別に!?好きなんてことないが!?」
「それで騙せるのはパパくらいだよ。あのお姉ちゃんが恋するなんてねー♪」
「だから違うと言っている!」
フレアは真っ赤になって否定するが、お構いなしのマリーは姉のベッドに並んで腰かける。
「だって、手紙の内容の五割がオーレリア様のことで、その次に多いのがカイお兄ちゃんのことだもん。男の子のことなんかまるで興味なかったお姉ちゃんがだよ?」
「む、むぅ……」
「でもライバル多そうだよね。みんな可愛いしおっぱいも大きいし!」
「マリー……!」
「やばっ!」
自分の失言に気づいたマリーは一目散に逃げ出すが、ドアの前で振り返る。
「えへへ、お帰りなさい。お姉ちゃん」
「ああ……ただいま」
フレアは妹の満面の笑顔を見て怒る気が失せてしまう。
寂しい思いをさせていたようだな。
そう思わずにはいられないほど、嬉しそうな妹の笑顔だった。
「空き部屋でこの大きさって……」
「うん、驚きだよね」
俺とルースが案内された二階の部屋は広々とした客室で、テーブルにソファー、それに大きいベッドが用意されていてまるでホテルのようだ。
「それに涼しい……」
「どこかに冷気の魔道具があるのかな?とっても気持ちいいね」
「ああ、火照った身体に効くぜぇ……」
「ほら、堪能するのもいいけど着替えないと風邪ひいちゃうよ?」
「それは困る。さっさと着替えようっと」
制服から私服への着替えを済ませてソファーでくつろいでいると、コンコンとノックの音がする。
「はい、少々お待ちを」
俺が扉を開けると、そこにいたのはフレアだった。
「どうだ?二人ともくつろげているか?」
「めちゃくちゃ堪能しています。なぁルース?」
「うん、とってもリラックスしてるよ」
「そうか、それはよかった。もう少しで食事の支度が整うのでな、良ければ食卓で話でもしながら待たないか?」
「俺たちもなにか手伝うぞ?」
「客人にそのようなことをさせられん。気にするな」
「わかったよ。それじゃあ待たせてもらうか」
「うん」
そうして俺たちはフレアの案内で一階の広間に向かう。
「あっカイさんにルース君」
「やっほー」
そこには大きな長方形の木製テーブルが置かれており、椅子もひじ置きが付いたお洒落なものだ。
テーブルの上には食器類が綺麗に配置されており、リーナ達もすでに席についている。
あと、調理場からだろうか?
とても美味しそうな香りが漂ってきている。
「もう少しでできるから、もうちょっと待っててね!」
エプロン姿のマリーちゃんはお手伝い中のようだ。
その姿がとても可愛らしい。
「マリーちゃんはお手伝いができて偉いですね」
「それにかわいい。わたしも妹がほしくなった」
「えへへ!嬉しいなぁ!カイお兄ちゃんもルース君も座って座って!」
「ありがとう」
「それじゃあ失礼します」
俺たちは並んで座ると、ふと疑問に思うことがあった。
あれ?なんでルースだけ君呼びなんだ?
「やっぱりルース君の方が私の好みだなぁ♪ねぇ?彼女っているの?」
マリーちゃんは椅子の背もたれ越しからルースの顔をのぞき込む。
なんで俺じゃなくてルースなんだ?
それはまあルース君の方が可愛いからじゃないですか?
そうか、なら仕方ないな。
「えっ!?い、いないよ!?」
「あはは!真っ赤になっちゃった!ルース君かわいい♪」
「マリー!ルースに失礼なことをするんじゃない!」
だが姉の叱責は届くことなく、マリーちゃんは自己アピールに夢中だ。
「私、おっぱいは大きくならないと思うけど、結構美人になると思うよ?ママもお姉ちゃんもそうでしょ?だから、どうかな?」
「だ、ダメだよ!まだマリーちゃんは小さいんだから!カイも何か言ってあげてよ!」
「俺ぇ!?」
急に俺にもたれかかってくるんじゃない!
ドキドキするだろうが!
「えっ……カイお兄ちゃんとルース君って、そういう関係なの?」
「「違います!」」
「……いえ、結構怪しいと私たちは思っています」
「うん、二人はいつも一緒で仲良し」
こそこそとマリーちゃんに良からぬことを吹き込むリーナとサリア。
「お姉ちゃんたちも大変だね……」
「分かってくれますか……」
「マリーはほんとうにいい子」
よしよしと二人がマリーちゃんの頭を撫でる。
「はぁ……フレアもなんか言ってくれよ」
「ふふふ……」
話をフレアに振ると、なぜか笑みを浮かべていた。
「何を笑っているんだ?」
「あっ、いや、大したことではないが……」
優しい眼差しをマリーちゃんに向けながらフレアは、嬉しそうに微笑む。
「妹の笑顔とは嬉しいもので、つい……な?」
「ははは、フレアはいいお姉ちゃんだな」
「うん、羨ましいよ」
「なんだか照れるな……」
「ただいま帰ったぞ!」
笑顔に包まれる広間に、クレドさんの大声が響き渡る。
おかげでほのぼのとした空気は全部吹き飛んだよ。




