フレアのお父さんは豪快です!
フレアのお父さん、魔獣化した熊を投げ飛ばしたぞ……?
ふむ、なかなかの身のこなしです。
熊を投げられるのは私の時代でも少数でしたから、よく訓練されていますね。
フレアとファーナが救援に向かおうとして振り返ると、魔獣が空を舞っているところを目撃してしまった。
「よし!状況終了だ!各班ごとに周囲の警戒に移れ!異変は見逃すなよ!」
「「「はっ!」」」
指揮が行き通ったのを確認したフレアのお父さんは、
「ふぅ……」
兜を脱ぐ。
素顔は赤髪の男性で、一言で表すなら豪傑だろう。
ゼルウェル先生と似た感じだが、年齢的には下のように感じられる。
「フレア!久しいな!元気にしていたか!」
「ええ。父上もお変わりないようで」
「ふははは!フレアの方はずいぶんと変わったようだな!どうだ!剣を交えんか!?」
こ、声がでけぇ……
まるで怒られているように聞こえるのだが、フレアは平然と笑っている。
あれは職業病のようなものですね。
指示出しをする役職の人間は、一言で素早く指示を伝達させないといけません。
そのため平時でも大きくなることがあります。
へぇ、ファーナもそうだったのか?
ふふっ……大声コンテストで優勝した私の肺活量を舐めないでもらいましょうか?
メイドさんに、よく静かにしてくださいと怒られたものです……
自慢なのか自虐なのか、よく分からないファーナの過去を聞いていると、
「いえ、今は依頼の途中ですので馬車の方へ報告に向かいます」
「そうか!ところでそちらがオーレリア様だな!」
突然、こちらに話を振ってきた。
「はい、そうです」
「おお!光の剣の召喚に白銀の鎧!まさに伝説通りの姿!私はフレアの父であるクレド・ラーカシア!ぜひ握手をお願いします!」
とりあえず、俺とのリンクを解くか。
握手を求めた相手の中に、無関係な俺が入ったままというのは無礼だろうしな。
「うん?君は?」
突然現れた俺に、少し驚いた表情を見せる。
「フレア、さんの友人です。ファ、オーレリア様の召喚師をやっています」
近くで見ると余計迫力ある姿に見えてしまい、少し言葉が詰まった。
「おお!君がカイ君か!娘の手紙からよく君の話は聞いている!私の招待に応じてくれてありがとう!」
声がでけぇぇぇぇぇぇ!?
鼓膜が破れるぅぅぅ!
あまりの声量に耳がキーンとなり、ぐらんぐらんと身体が揺れる。
「父上、ボリュームが大きいですよ。カイが驚いているじゃないですか」
「うん!?いやぁすまんすまん!気をつけるようにしてはいるのだが、外ではどうしても大きくなるのだ!はははははは!」
謝るなら抑えてくれませんかぁぁぁ!?
「改めてよろしく!フレアの父であるクレドだ!」
「よ、よろしくお願いいたします……カイです」
差し出された手を握る。
ぎゅぅぅぅぅぅぅ!
いだぁぁぁぁぁぁ!?
握力も尋常じゃねぇぇぇ!
「ほう!君も剣を振るうのかね!」
「す、少しだけですが……素振りなどをしています……」
ファーナの剣を持つために手首の強さを鍛えていた。
しかしよく分かったな。
「是非とも私と剣を交えようじゃないか!」
絶対にやりたくねぇ。
「そ、それよりもオーレリア様とのご対面はよろしいのでしょうか?」
俺はその問いに答えることなく、矛先を変える。
「おお!そうであった!」
クレドさんは笑顔から真剣な表情へと整えると、ファーナの前で膝をついた。
「再び、貴女様にこの街を救っていただけたこと、心より感謝を申し上げます。そしてお帰りなさいませ」
……その顔に面影があります。
あなたの家系の祖にクラルドという名の騎士はいますか?
「あ、あの……クレドさん?クラルドっていう人がご先祖様にいます?」
「おお!ご存知ですか!はい!クラルドは我が家系の祖にあたります!」
そうですか……
どうぞ立ち上がってください。
俺がそのままを伝えると、クレドさんが立ち上がる。
このドスケベ男!末代まで許しませんとはこのことです!
「ほがぁぁぁぁぁぁ!?」
ぱしーん!
思いっきり籠手でビンタした。
あれ、痛いんだよなぁ……じゃなくて!?
えっ!?いきなり何で!?
「父上ぇぇぇ!?」
「な、なぜ……ぐはっ」
フレアもクレドさんも意味が分からないようで、呆然としている。
あなた本人に恨みはありません……
ですが!クラルドの私や他の女性への数々のハレンチな行為の恨みは根深いのです!
どんなことされたんだよ……
スカートをめくられたり、急に抱きついてきたりですね。
子どもか……
当時の法ではあまりに微罪過ぎて裁けませんでしたが……ここであったが末代め……
ではありますが、この一発で終わりとしましょう。
「だ、そうです……」
「我がご先祖様……なにやってんの……」
クレドさんはがっくりとうなだれて、
「オーレリア様!申し訳ございませんでした!」
フレアは深々と頭を下げる。
いえいえ、フレアさんには罪はありませんからね。
大丈夫ですよ。
それを言うなら、クレドさんにもまったく罪はないはずなのだが……
そんなツッコミを入れることなく、クレドさんに手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?」
「ふふっ……何かに目覚めそうな気持ちだよ……」
……先祖の魂末代までってことかな?
ファーナに殴られた場所へ、嬉しそうに手を当てるクレドさんを見て俺は手をひっこめた。
さぁ、報告にいくか。




