剣のウインドウショッピングです!
初めて依頼の報酬をもらってからというもの、
剣はいつ買えるのですか?
とりあえず買う買わないは別にして見に行きましょう!
寝る前にファーナがひたすらにおねだりをしてくる。
そのうちなとごまかしていたのだが、昨日もそのうちって言って!いったいいつですか!?と言われたので、現代の物価を説明することにした。どうやら金貨の価値を高いものだと思っているらしいからな。
いいか?小金貨三枚じゃ包丁くらいしか買えないぞ?
そんなことありません!私の時代だと金貨三枚もあれば立派な剣が買えましたよ!?
時代が変わったの。
今は中金貨、大金貨っていうのがあってだな。
中金貨が小金貨の五倍。
大金貨が中金貨の二倍の価値になっている。
それに戦争がほとんど無くなって剣というか武器の需要が無くなった。
そのおかげで剣の値段も上がり、そんなに簡単に買えるものじゃないんだ。
なんですって……?
私の時代だと武器屋防具屋はそこら中にあり、セット価格で大量に売られていたというのに……
今じゃ専門の店が街に一軒あるかどうかだぞ?
買う人も国の関係者で害獣対策や、犯罪の取り締まりの騎士団が利用しているだけ。
一般の人はまず近寄らないな。
そうですか……平和な世の中で、羨ましい限りです。
私の時代だと子供でも剣を覚える必要がありましたからね。
ファーナの心の声が少しだけ寂しそうに聞こえた。
過去を懐かしく思っているのだろうか?
俺はそんなファーナを励まそうとしたが、
まあ、それはそれとしてこの街にはお店があるのですか?
驚くほどの早い立ち直りに驚いてしまった。
一応学園で武具を多く使うからあるけど……
それでは見に行きましょう!
さっきも言ったけど買えないぞ?
ウインドウショッピングですよ!
女の子は見るだけでも楽しいものです!
えらく物騒なウインドウショッピングだなぁ……
というわけで俺は休日に街へと向かうことになった。
まあ、気分転換にはいいか。
クリス先輩の対策が中々まとまらないでいるしな。
……まさか、ファーナはそんな俺を心配して?
剣♪剣♪剣♪
どのような素晴らしい剣があるのでしょうか……
いや、気のせいだな。
俺ははしゃぐファーナに苦笑しながら、目的の店へと向かう。
初めてきたけどこれは入りづらいな……
そうですか?
まるで城壁のような高い壁の中にレストランくらいの大きさの店があり、門は空いているが入って来るなという威圧感を放っているように思える。
「いっらっしゃい。初めて見る顔だね?身分証はある?」
門をくぐり、扉を開くと受付の屈強な男が怪訝そうに話しかけてきた。
「あ、はい」
俺は慌てて生徒手帳を提出する。
「ああ、学園生か。今日は買い物かな?」
それを確認した瞬間、厳しい目をしていた男性の警戒心が溶けたように感じた。
「今日は見るだけです。値段を見てから依頼を受けようと思いまして」
「ああ、なるほど。学生にとっては高い買い物だからな」
「ここには初めて来たんですけど、随分と厳重なんですね」
「扱っているものが武器だ。厳重にしておくことに越したことはない。自分の店の武具が犯罪者に渡るのは避けたいだろう?」
豪快ににかっと笑うのを見ると、俺はこの人が自分の商品を愛していることが分かった。
「ええ、そうですね」
平和になったとはいえ、盗賊や反社会的勢力は存在している。
そんな人たちに武具が渡らないように細心の注意を払っているのだろう。
「おっと、話が長くなっちまったな。ゆっくりと見ていってくれ」
「ありがとうございます」
お礼を言うと、さらに中へと進んだ。
そこには……
剣がいっぱいあります!
やはり使う人が多いのか、様々な剣が目立つところに置いてある。
「おや?若いお客さんですね。何かご入用のものがありますか?」
興味深そうに周りを見ていると、眼鏡を掛けた若い男性店員が接客をしてくれた。
「えっと剣が欲しいのですが、どれも結構なお値段がするものですね……」
安くても大金貨三枚、高いものでは百枚なんてものもある。
「申し訳ございません。どうしても武具というものはお値段がしてしまうものでして……」
「ははは、そうですよね」
分かった?
今の俺の財布じゃあ買えないの。
ほ……
ほ?
欲しい欲しい欲しい!
やっぱり見るだけじゃ物足りないので自分の剣が欲しいです!
駄々っ子はやめなさい!
マスター!お願いですから買って買って買ってぇぇぇ!
はぁ……買ってって言ってもなぁ……
財布には小金貨が五枚と銀貨や銅貨が数枚。
一応聞いてみるからダメだったら諦めるんだぞ?
はい!
「あのぉ……何でもいいので小金貨五枚くらいのお値段の剣ってありますか?」
「何でもいいのであればありますよ?」
「あるんですか!?」
きました!
やはり聞いてみるものです!
「どうぞこちらへ」
案内されて向かった先は、古い剣が並んでいた。
「こちらは召喚獣が武器を持つのが可能だった時代のものです。人が持つには重量があるので扱いきれないため格安で販売しております」
「こういうのって溶かしたりして再利用しないんですか?」
「そこまでしなくても鉄は余っていますからね。再利用するのも手間がかかるので」
「へぇ……そうなんですね」
古いものとはいえ、商品として扱っている以上綺麗にされている。
「持ってみますか?」
「えっ?」
「剣を振れるかどうか試さなくていいのですか?」
「それじゃあその一番小さなやつを持ってみてもいいですか?」
「もちろん構いませんが、重いのでご注意してくださいね」
俺が振るうわけではないのだが、少し興味が湧いたので持ってみることにした。
見た目は片手剣なのだが、
「ふぬぅぅぅぅぅぅ!」
両手でなんとか持ち上げることができた。
大剣くらいに重いんだけど!?
「召喚獣だからこそその重さを振り回すことができたので、近接型の召喚師が闘いについてこられなくなったんですよね。そのため召喚獣の武器が禁止されたと聞いています」
この重さと普通の重さの人間の武器がぶつかり合ったら負けるわな。
俺がそんな武器体験をしていると、
マスター!私これがいいです!
兜をふよふよさせて、はしゃぎながら見ていたファーナがお気に入りの一本を見つけたようだ。
どれだ?
これです!
今度は右腕をにょっきと出現させると、一本の長剣を指差した。
俺の身長よりもわずかに短いくらいで、装飾も煌びやかなものだ。
単純計算だが、先ほどの片手剣よりも倍くらい重いものだと予想できる。
「しかしお客様の部分召喚は見事ですね」
「部分召喚?」
「違うのですか?召喚獣の一部を呼び出すスキルのことですが、扱いが難しいので学生の内に身につけているのはすごいことですよ?」
勝手に出てくるだけだよな?
勝手とはなんですか!
私にも自由意志の権利があってもいいでしょう!?
まあいいけど、悪さするんじゃないぞ。
しません!
「そ、そうなんですね。ところでこの長剣が欲しいのですが。おいくらですか?」
「そちらは装飾が美しいので少しだけお値段がしまして……大金貨一枚です」
げっ……半分しかない。
ファーナ、お金が足りないや。
そんなぁぁぁ!?
「とはいえ初めてのお客様ですし、これからもご愛用していただけるのであれば小金貨五枚で構いません」
「いいんですか!?」
「はい」
やったぁぁぁぁぁぁ!
店員さんの好意に甘え、俺はその剣を購入することにした。
「しかし、先ほどの剣を持つのも大変そうでしたが、この長剣を試合で使われるのですか?」
「いえ、わがままな俺の召喚獣へのご褒美ですよ」
誰がわがままですか!
「ふふっ……お客様は良いマスターなのですね」
「ははは、そうだといいんですけど」
俺はファーナに剣を持たせて、売り場を後にした。
「んっ?召喚獣用の剣を買ったのか?」
「はい、いい買い物ができてよかったです」
「そりゃよかった。また来てくれよな」
「もちろんです。ありがとうございました」
剣♪剣♪剣♪
私の剣がやってきたぁ♪
帰り道、ファーナはずっとご機嫌だ。
振り回したらダメだぞ?
子ども扱いしないでください!
それくらい分かっています!
店内での態度は完全に子どもだったが……
そう言えばその剣ってどれくらいの重さなんだ?
そうですね、例えるならフレアさんくらいの重さですよ。
そっか、ファーナは少し前にお姫様抱っこしたことがあったな。
……少し持ってみてもいい?
いいですけど、落とさないでくださいよ?
俺はファーナから預かった剣をお姫様抱っこのようにして抱えた。
プルプル……
あ、足が震える……
これではフレアを同じように抱えることもできない……よしっ。
俺はこの剣を簡単に持ち運べるようになるまでは筋力トレーニングをしようと、心に誓ったのだった。




