初めてのお給料です!
「カイ君、リーナさん日曜日はお疲れ様でした。キク園長から大変良い評価をされていまして、私も嬉しい限りです」
放課後、職員室に呼び出された俺とリーナ。
だいたい呼び出しというものは憂鬱なものだが、今回は堂々と向かえる。
「ありがとうございます。自分にとっても楽しい時間でした」
「はい!可愛くていい子たちばかりでしたので私も楽しかったです!」
「楽しみながら依頼をこなせる場所というのは得難いものです。あちらから指名も入っていますので次も頑張ってくださいね」
「「はい!」」
「それではこちらが報酬です。二人分まとめて入っていますのでお好きに分けてください」
「ありがとうございます。リーナ、受け取りなよ」
「は、はい」
リーナが差し出された布袋を両手で受け取ると、
ジャラリ。
程よい硬貨の音が聞こえてきた。
「ありがとうございます……」
リーナにとって恐らくだが、初めての報酬だ。
硬貨だけの重みではないのだろう。
少し手が震えている。
「リーナさん」
「な、なんでしょうか?」
「これまでよく頑張りましたね」
「……ルナ先生。本当に、ありがとうございます……」
リーナはとうとう涙をこぼした。
俺にはよく分からないが、ルナ先生に相談していたのだろうか?
だが、リーナの流した涙は悲しい涙じゃない。
それがとても嬉しく思う。
「なんだかよく分からんが……よかったなぁ……」
「ええ……そうですねぇ……」
いつの間にか、ガレフ先生とサフィール先生までもらい泣きしている。
うぅ……リーナさんは本当にいい子です……
ついでにうちの召喚獣も泣いていた。
「あ、あの……これで失礼いたします」
リーナは恥ずかしくなったのか、ルナ先生へと一礼すると退室しようする。
「それでは俺も失礼します」
「はい、ゆっくり休んでくださいね」
ガラガラ。
「「失礼いたしました」」
二人で声を合わせると、職員室から出ていく。
「お疲れ様」
「ちゃんと報酬もらえた?」
「はい、この通り」
職員室の外ではフレアたちが待っていた。
「おお、すごい。どれくらい入ってるの」
布袋を見たサリアが興味深そうにリーナに聞いている。
「ちょっと待ってくださいね。えっと……小金貨が十枚も入ってます!」
「大した額だな」
「次は僕も何かやってみようっと!」
「わたしにも何かできるのあるかな?」
二人分としても二時間ほどの依頼内容としては中々の報酬だ。
普通の学生がやるようなアルバイトが同じ額を稼ごうとしたら五時間はかかるはずだ。
「あっ、カイさん。はい、半分こです」
リーナがにっこりと微笑むと、半分を俺に渡してくれる。
ファーナ、少しだけわがまま言ってもいいか?
マスターのことですからそう言うと思ってました。
構いません。
ありがとな。
「依頼をこなせたのはリーナのおかげだ。俺だけじゃ騒ぐ子どもたちに振り回されて良い結果になったかどうかは分からない。だから、報酬は六対四だ」
「で、ですが、こういうのは半分にするのが基本なのでは?」
「リーナ、その通りだから受け取っておけ」
「あははは、カイってば本当にグルグル回ってたもんね」
「おもしろかった」
「……だから俺はこれだけもらう」
俺はそう言うと、リーナの手から三枚の金貨をもらった。
「あっ、あと一枚ありますよ?」
「それはまあ……心ばかりの寄付ってことで」
「カイさん……」
「ふん!カッコつけおって!」
パシーン!
「痛っ!何するんだよ!」
なぜかフレアに思いっきり背中を叩かれてしまう。
「私からの寄付だ!ありがたく受け取っておけ!」
「いらねぇぇぇ!」
「リーナ、僕たちも報酬をもらったらその中から寄付しようと話してたんだ」
「だから、一人で頑張り過ぎないでね?」
「みなさん……私、本当に幸せ者です……」
「こ、こら!泣くんじゃない!」
俺はリーナの涙に動揺するフレアを見て、
「あぁ!フレアがリーナを泣かした!」
ここぞとばかりに先ほどの背中の痛みの仕返しをする。
「貴様!人聞きの悪いことを言うな!」
「クラスメイトのみんなにも言ってやろうっと!」
「待たんかぁぁぁ!」
俺が教室へと駆け出すと、その後を全速力で追ってくる。
ヤバい!からかい過ぎた!
追ってくるフレアの表情がマジで怖い!
「はぁ……相変わらずだね。あの二人は」
「仲がいい証拠」
「ふふふ……そうですね……」
マスター!そのお金で剣は買えますか!?
「待てぇぇぇぇぇぇ!」
今はそれどころじゃないって!
嬉しそうに聞いてくるファーナだが、今の俺に答える余裕は全くないのだった……




