食べ物の恨みは怖いです!
「うぅぅぅ……よく寝たぁ……」
身体を伸ばし、ベッドから起き上がると、カーテンからこぼれる爽やかな朝の光を浴びる。
何故かはわからないが、非常に良い目覚めで朝を迎えることができた。
マスター、おはようございます。
おはよう。
ファーナ、なんだかご機嫌じゃないか?
ええ、良い夢を見ました。
へぇ、どんな夢を見たんだ?
ふふっ……それは秘密です。
なんだよ、気になるなぁ……
あまり無理に聞き出そうとするのも良くないと思い、その話はそこで終わらせた。
(前回の教訓があるからな)
ファーナは嬉しそうだし、良しとしておこう。
そんなやり取りをしつつ準備を済ませると、教室へと向かった。
「本日の終業後、フレアさんとサリアさんの模擬戦を行います。見学は自由ですが、特に用が無いのであれば見学することをお勧めします。自分では気づくことができない発見があるかもしれませんよ?」
マスターは当然見学に行かれるのですよね?
もちろん。
どんな闘いになるのか楽しみだよ。
お二人とも相当な努力をされていましたからね。
速さではサリアさんに分があるでしょうが、一撃の威力ではフレアさんが上回ります。
どちらが勝利するかは終わってみないと分からないと言えるでしょう。
サリアの手数が圧倒するか、フレアの一撃がサリアを捉えるか。
いやあ、興奮するなぁ!
それでマスターはどちらを応援するのですか?
……ど、どっちも応援してるけど?
はぁ……先は遠そうですね。
どういう意味だよ……そう言いたいところだったが、やめておこう。
沈黙は金というからな。
「時間ですね。それではここまでにしておきましょう」
「「「ありがとうございました」」」
朝の授業が終わりを迎え、昼食を取るために食堂へと向かう。
「さて、いよいよ席次を決める時が来たな」
「負けないよ」
「こちらもだ」
いつもの丸テーブルにフレアとサリアが対面で座り、バチバチと視線を交わしている。
普段は仲の良い二人だが、いざ闘いとなるとライバル心むき出しで競い合う関係へと変化する。
それが俺たちの友情であり、相手への敬意なのだろう。
「それにしても、お二人のどちらが勝つか本当に分かりません」
「うん、それだけ実力が拮抗しているって言えるんだけどね。カイはどっちが勝つと思う?」
「お、俺か?」
「この中で一番予想が上手いでしょ?クラスの模擬戦の結果を結構当ててるし」
じぃぃぃ……
フレアとサリアの視線をものすごく感じる。
「正直言って分からん。どっちが勝っても納得できるし文句もない。だから二人の闘いを楽しみにしているよ」
「そうだよね」
「ああ、楽しみにしておけ」
「いただき」
フレアがそう言って笑った瞬間、サリアの箸がフレアの皿にあるハンバーグの一切れを奪っていく。
そして、
「あむ」
パクっと口に入れるとモグモグと食べてしまった。
「き、貴様!私の最後の楽しみを!」
「これもせんひゃくのうち」
サリアはごっくんと喉を鳴らし、モグモグしていたフレアのハンバーグを飲み込んだ。
「わたしのエネルギーになった」
「私のハンバーグの恨み……その身体に叩き込んでやるからな!覚えておけ!」
「代わりにニンジンあげるから」
「野菜はちゃんと食べろ!」
「「「あははは!」」」
そんな二人のやり取りを見て、俺たちは笑った。
どうやら前哨戦はサリアの判定勝ち、かな?
「これよりフレアさんとサリアさんの模擬戦を開始します!」
そして時は過ぎ、二人が激突する時間になる。
「二人とも頑張れ!」
「なんでクリス先輩がここにいるんですか?」
俺とリーナとルースの三人で観客席で座っていると、当たり前のようにクリス先輩が混ざってきていた。
「ボクは観るのも大好きだからね!」
「そんな観るのが大好きなクリス先輩はどっちが勝つと思いますか?」
「ちっとも分からないよ!」
「そんな自信満々に親指を立てられても……」
「あははは、クリス先輩らしいね」
「ふふふ、本当ですね」
そんな和やかな観客席とは違い、闘技場の中心部では、
「ハンバーグの恨み、今こそ受けてもらおう」
「やだ、受けない」
「受け取り拒否は許さん!」
「私怨はほどほどにしてくださいね」
殺伐とした空気が流れている。
そんな中で冷静なルナ先生はさすがとしか言いようがない。
「それでは指定の位置へ!」
フレアとサリアが中央から両端へと移動していく。
「始め!」
「こい!フェザー!」
「いくよ、お兄ちゃん」
二人の呼びかけに応え、炎を纏った鳥、フェニックスがフレアの頭の上に現れ、銀色の毛皮を纏った狼、セツナがサリアの足元に現れる。
そして今、激戦の幕が開かれようとしていた。




