じいちゃんにあったよ……
「そんなバカな……一勝も出来なかっただと……?」
最後の希望のレオンが敗北したことにより、ザコバは放心してしまう。
「今年の一年生のレベルはなぜこれほど高いのだ!?」
「それは、きっとカイ君の影響だと思います」
審判役を終えたルナがベンチで座り込んでいるザコバへ声をかける。
すると、その言葉でザコバが立ち上がり、
「ルナ、先生……先ほどのリビングメイルの生徒か!?なぜリビングメイルがエインヘリャルに勝てる!?常識ではあり得んぞ!生徒に何をしたんだ!?」
気になることを問いかけた。
「確かにリビングメイルは低ランクな存在ですが、その先入観に左右されず、力を引き出したのは紛れもなく彼です。そんな彼の引き出す能力が自分のリビングメイルだけではなく、クラスメイトたちの力も引き出していくことになったのです。ですので特に何もしていないですよ?私たちはそれを応援しただけです」
「生徒自身が勝手に成長したと言うのか!?なぜそれを止めない!間違った成長は危険だと分かっているのではないか!?」
「ご自身の目で見て、彼らは間違った成長をしていましたか?」
「うっ……」
彼女が育てた生徒たちの瞳には、邪念などは一切なかった。
(少し違う意味で、怨念のようなものがあったが、あれは思春期特有のものなので置いておこう)
「この結果を持って少しは認めていただきたいものです。生徒を想う気持ちは我らも変わらないということを。それが私への勝利の報酬です」
勝者から差し出された手。
「……負けたよ。そう言われてしまっては返す言葉がない。私個人としては認めるとしよう」
それを握り返したザコバの瞳はとても澄んだものになっていた。
「それじゃあ約束通り、俺たちには……」
「素晴らしいワインを一つ、お願いしますね?」
ベンチの陰で黙って聞いていた二人だったが、ザコバの肩を掴むと下衆な笑みを浮かべている。
「言われなくても約束は守りますよ!」
じゃれ合う三人を見ながらルナは笑う。
「ふふふ……ありがとうございます。あなたのおかげで教師同士の対立は少なくなるでしょう」
ルナの視線は、フレアたちに囲まれているカイへと向けられた。
「め、目を覚まさんではないか!?」
「フレアさんが首を引っ張ったからですよ!?」
「そ、そう……断じてわたしのせいではない」
「貴様らも引きずっていたのに!私一人に押し付けるんじゃない!」
「リーナ!そんなことよりも回復を!?」
「きゅ、救護班!急いで回復を!」
そこには目を回して座り込んでいるカイがおり、ルナは声を張り上げたのだった。
「おーい」
「あっ!じいちゃん!」
気づけば俺は綺麗な川の前にいた。
その対岸では死んだはずのじいちゃんが俺に声をかけてくれている。
「その川をまだ渡るんじゃないぞぉ?孫の顔を見たいからのう」
ま、まさか……この川は……
俺は渡りかけた川からすぐに離れた。
「じいちゃんのおかげでなんとか頑張れてるよ!」
「うんうん!隣の美しいお嬢さんに聞いておるぞい!」
隣?
気付かなかったがそこにはファーナがいた。
鎧姿ではなく、白いワンピース姿でだ。
ファーナはにっこりと微笑むと、俺の手を引き、
「戻りましょう。私たちの場所へ」
歩き出した。
その瞬間。
「はっ!?」
俺は再び目覚めた。
だが、先ほどのように外の風景ではなく見覚えのある室内だ。
ここは保健室?
窓の外を見てみると、すっかりと日が落ちている。
どうやらずいぶんと眠っていたようだ。
うん?なんだか右手がずいぶんと温かいな?
俺はふとそちらを見てみると、フレア、リーナ、サリアが俺の手を握ったまま眠っている。
マスターを心配して離れなかったのですよ?
そして、そのまま眠ってしまったのですから。
三人ともありがとうな。
それに、ファーナもありがとう。
な、何のことでしょうか?
いや、よく覚えてないけど迎えに来てもらったような夢を見たんだ。
白いワンピースがよく似合っていて、とても綺麗だった……
き、綺麗とかやめてください!
ゴツン!
「よぉぉぉ!?」
あっ……
照れ隠しで突き出した拳は、カイの顔を綺麗に捉えていたのだった。
「あっ!じいちゃん!」
「はよ帰れ」
二度目の訪問時は冷たい祖父であった。




