最終戦開始です!
「セツカのおかげで全敗は免れた。レオン!あとは君だけが頼りだ!」
「すまんな、お前に押し付けることになっちまって」
「か、華麗に優雅に勝利を飾ってくれたまえ……」
「貴様の怪我は大丈夫なのか?だが、私からも頼む」
「ああ、期待に応えられるように頑張るよ!」
ベンチにいる先生と仲間。
「頼んだぜレオン!」
「俺たちの代表!」
「レオン!レオン!」
それに加え、応援席の先輩たちにも応援されて闘技場へと向かっていく。
ああ……今、分かった。
これが俺を見てきた同級生たちの想いか……
俺にも理解できたよ……
妬ましい……
こけろ!転んでしまえ!
どす黒い怨念で周りが見えにくいのですが?
少し怨念を晴らしてくれませんか?
それは不可……
「頑張れよ、カイ。貴様の声のおかげで引き分けまで持ち込めたのだ。その礼といってはなんだが、力の限り応援してやる……」
「私も負けないくらい応援してますからね!」
「わたしもだけど、お兄ちゃんも応援してるって。すごい興奮してるんだけどどうしてかな?」
「ぼ、僕もこれまで以上に応援するから!だから、レオン先輩をやっつけて!」
ルース、やはりお前も漢だったか。
そしてロゼル……いやロゼルさん。
分かってくれるんですね。
イケメンは敵だと!
「カイ!負けは許さねぇからなぁぁぁ!」
「すかした野郎をこてんぱんにしてやれぇぇぇ!」
「あの爽やかさが憎いぃぃぃ!」
お前ら……
応援席の妬ましさMAXの応援が俺に力をくれる。
まかせておけ!
俺は必ず勝つ!
応援席からぶつけられた妬ましさが、俺を闇から開放していく。
……マイナスとマイナスを掛け合わせた結果、視界は開かれましたがあまりスッキリしないですね。
やる気を出せ!
ファーナが頑張ってくれないと俺は負けるんだからな!
頼りにされるのは喜ばしいですが、いろいろと複雑です……
「改めてよろしく。カイ君」
「いいえぇ?……こちらこそよろしくお願いしますぅ……レオン先輩?」
「……僕は君に何かしたかな?」
「あははぁ……?何もされてませんよぉ?」
「そ、それならいいのだけど……」
「両者、指定位置へ!」
爽やかな挨拶を交わし終わり、指定位置へと向かう。
どこが爽やかですか。
笑顔同士の爽やか挨拶だったじゃないか?
マスターの狂気の笑顔に相手は完全に引きつった笑みでしたが?
ふん!表面上だけでいいんだよ!
ならちゃんと嫉妬心は隠してください。
漏れ漏れでしたよ。
くっ……抑えきれなかったか……
バカなこと言ってないで始まりますよ。
「試合開始!」
俺はファーナを呼び出し、レオン先輩も召喚獣を呼び出した。
その姿は甲冑姿の騎士と見える。
私と一緒のリビングメイルですか?
いや、格好は似てはいるが、あの輝きはエインヘリャルだな。
なんですかそれは?
戦乙女ヴァルキュリアに導かれた勇者の魂が具現化したものだ。
Sランクに近いAランク召喚獣だな。
……私は何ランクでしたっけ?
リビングメイルはDランクだな。
……ランクなど飾りということを証明してあげましょう。
漏れてる漏れてる!
鎧の隙間から闇が漏れ出してるって!
「武装付与」
その言葉でエインヘリャルはレオン先輩の身体へと手をかざす。
すると、手には光輝く剣、身体には鎧が出現していた。
「さあ……いくよ!」
二人は一直線に俺へと向かってくる。
完全な近接戦闘型だ。
「リンクメイル!」
俺はすぐさまファーナの中へと隠れる。
どう考えても一人でレオン先輩には勝てそうにもないし、エインヘリャルの方なんてもってのほかだ。
「君は、そういう闘い方をするのか?」
レオン先輩はいきなり立ち止まると、俺に声と剣を突き付けてきた。
「それが何か?これは俺の立派な戦略ですが?」
「そのリビングメイル、恰好から察するに女性だろう?君は女性一人を前に出し、自分はその陰に隠れる。こんな情けない戦略があってたまるか!」
「ぐはぁっ!?」
男子としては非常に痛い所を突かれる。
精神的には大ダメージだ。
だが、役割ってもんが……あれ?ファーナさん?
居心地の良いはずのファーナの鎧の中がどす黒くなっていく。
……少し派手に動きます。
マスターは私の維持に集中してください。
めっちゃ怒ってる!?
女の子として見てもらえるのって嬉しくないの!?
さっきは少女趣味全開だったのに!
プライベートと戦場は別です。
戦場での女扱いは一人の騎士として侮辱に等しい。
それに隣にいるあの騎士!
女は引っ込んでろと私に言いましたからね!?
えっ?そうなの?
つながりのない召喚獣の言葉は分からないが、そんなことを言ったのであればファーナが怒るのも納得だ。
それに、一番不愉快なのは……私のマスターを侮辱したこと!
マスターに剣を捧げた騎士として、断じて許すわけにはいきません!
ファーナ……よし!全力で行け!
俺の召喚獣ではなく、一人の騎士として敵を討て!
イエス、マスター!
ファーナは召喚した光の剣を掴むと二人へと駆けていく。
そのまま、向かってくるか……
気は進みませんが、やるしかないでしょう。
仕方ない。
だが、君は先ほど女は引っ込んでろと言ったね。
その暴言はあまり好ましくない。
騎士は女の遊びでは務まらないものです。
マスターも同じ意見なのでは?
僕は闘いの場においては平等のつもりだ。
それが今の国のあり方だからね。
だが、闘いの場で男性が女性の陰に隠れるというのは、同じ男として情けないと思っただけさ。
古い人間ですので申し訳ございません。
いや、現在の価値観を押し付けるつもりはない。
ですが……
ああ、男とは女性の前で恰好をつけるものだ。
それは変わらないものだろう?
ふふ、違いありませんな。
では、マスターは我が闘いをご覧あれ。
そうさせてもらうよ。
手出しはしない。
感謝します。
レオン先輩の動きが止まり、相手のエインヘリャルのみが前へと進み出た。
……なんだと?
どうやら会話をしているらしいが……
なんて言っているんだ?
相手は一騎討ちをご所望のようです。
そしてそちらの召喚師も手出し無用。
こちらからも手出しをしないのでその場から立ち去るがいいと言っています。
嘘ではないよな?
剣に誓ってという言葉がありました。
古い騎士のようですからそれは大丈夫かと。
まあレオン先輩もそういうことはしなさそうだしな。
おや?信用なさるので?
……勉強熱心で仲間想い、それに仲間からも信頼されている。
そこから判断できることはいい人だということだけだ。
ふふふ……人として、純粋に評価するマスターは好きですよ?
いきなりそんなことを言うのはズルい。
言葉に詰まるじゃないか。
……勝てよ?
俺はそれだけしか言えなかった。
イエス、マスター。
その言葉を最後に俺はリンクメイルを解いた。




