フレア戦は激闘の予感です!
「これで三勝を達成いたしましたので決着となりましたが、まだやりますか?ザコバ先生?」
にっこりと微笑むルナ先生はとっても幸せそうだ。
それに対し、ザコバ先生はというとギリギリと歯ぎしりが聞こえそうなほどに歯を噛みしめている。
「い、いえ……全員が対戦するために、総当たり戦にしたのです……ですので。最後まで試合は行わせていただきます」
「ふふふ……そう言えばそうでしたね?」
「ぐぬぬぬぬぬぬ!」
ウチの先生がドS過ぎる。
「それでは、次の選手前へ!」
「出番ありのようだな。それでは行ってくる」
「頑張れよ!」
「頑張ってください!」
「それいけフレア」
「リラックスしていこう!」
「ああ!任せておけ!」
笑顔で頷くフレアはポニーテールを揺らしながら、闘技場へと向かっていく。
そこに待ち構えていたのは、
「貴君が相手か。私の名はセツカと言う。よろしくお願いする」
黒髪のポニーテールが特徴的な女性だった。
フレア自身も相当に綺麗な女の子だが、目の前にいる女性と比べると幼さを感じてしまう。
「フレアです。私の方こそ胸をお借りします」
「すでに我らの敗北は決定している以上、胸を借りるのはこちらの方だ。だが、こちらにも意地がある。一矢は報わせていただく」
何とも似た雰囲気を感じさせる二人だ。
特に胸も控えめなところが……
俺が制服に包まれた慎ましい胸部を眺めていると、
ギンッ!
フレアと先輩が同時に俺を睨みつけてきた。
「なにやら不埒な視線を感じたが?」
「あとで相応の報いを受けさせておきます」
「任せるとしよう」
……お互い初対面なはずなのに分かり合っているのは何故なのか。
「さて、身のこなしから察するに剣を使うのではないのか?」
「はい。そちらもだと思うのですが、剣はお持ちではないのですか?」
「とっておきのがあるのでな」
「どうやら、同じようですね」
お互いに制服のまま、無手で勝負の場に来ているようだ。
挨拶を交わした二人が指定の位置に着くと、
「試合開始!」
ルナ先生の声が響いた。
「来い、フェザー」
「おいでなさい、雪月鳥」
雪月鳥とは雪のような白さを持ち、月のように美しい淡い光を放つ鳥で、高い魔力から繰り出される氷雪魔法の威力は凄まじいとされているAランク召喚獣だ。
「武装変化」
言葉を発した瞬間、セツカは白い光に包まれていく。
その後すぐに光が晴れると、セツカの手には白い剣、身体には白銀のライトメイルを纏っていた。
だが、それはフレアも同じだ。
フェザーは緋色の剣と紅炎のライトメイルへとその身を変えている。
同じ戦闘スタイルへと行きついた二人の剣士は、静かに歩き出した。
両手で剣を構えた二人が少しづつ間合いを詰めていき……
「「はぁぁぁぁぁぁ!」」
ガキィィィン!
一気に剣同士がぶつかり合った。
ザッ!
一撃を止められ、お互いに後ろに跳んで距離を取るが、
ギィィィィィィン!
すぐに詰め寄ると素速い斬撃戦が繰り広げられていく。
俺の目には完全に五分のように見えた。
「まさかセツカと同じく武装変化できるなんて……」
「雪もそうだが、火を自分の身体に纏うことは大変に難しい技術である。それは、一歩間違えれば自分の身体を傷つけることになるからだ。だというのに一年生が完全にコントロールしているというのは、どういうわけだ……?」
もともとは武器をファーナに壊されたせいでしっくりくるものが無くなったから、試してみたんだよな。
そ、そのおかげで今の闘い方を編み出したのですからいいではありませんか!
まあ、そういうことにしておこう。
ところでどっちが優勢なんだ?
一進一退の攻防が続いているようだけど。
技術的には相手の方が上手と言えますが、武器の相性が良いので互角に持ち込んでいる状況です。
やっぱり雪と炎だとそうなるのか。
ですが、相手も上手く捌いていますね。
必要以上に刀身をぶつけず、滑らせるように受け流しています。
若いながらも良く鍛錬を積んでいるようで、素晴らしい。
一度お手合わせしてみたいものですね。
フレアは勝てそうかな?
……分かりません。
ですが、一つ言えることはあります。
終わるときは一瞬だということです。
少しでも力になりたくて、俺は思わず叫んだ。
「フレア!頑張れぇぇぇ!」
「セツカ!頑張れぇぇぇ!」
同じく声をあげる人がいた。
ずっとザコバ先生に質問をしていた人の声だ。
「私だけ……負けていられるか!」
「私にも負けられないものがある!」
幾度もぶつかり合った二人の剣は、
パキィィィン……
お互いの渾身の一撃を受け止め合い、砕け散ってしまう。
「くぅ……すまないフェザー……」
「はぁはぁ……無念です……」
すれ違うように倒れ込み、二人は両手を床の上につく。
傷だらけだったライトメイルも剣と同じように光となっていった。
「両者召喚獣を喪失!引き分けとします!」
「強いな……君は……」
「いえ、先輩こそ……」
二人はふらつきながらも立ち上がると、お互いに握手をかわす。
「……それで?最後の一撃はずいぶんと重いものだったが、応援のおかげか?」
「は、はぁ!?急に何を言い出すんですか!?」
「好きな男の前だからこそ、私に勝ちたかったんだろう?」
「好きとかそんなのではありませんが!?先輩の方こそ最後の一撃は後押しされたように感じましたが!?」
「ああ、惚れた男の応援だ。力が出ないわけがない」
頬を染め、にっこりと微笑むセツカ。
ま、負けた……
試合は引き分けで終わったものの、恋する少女としては負けを認めるしかないフレアだった。




