リーナさんは頑張って闘います!
「一年に負けたのかよ……」
「ま、まあたまにはあるさ……先輩にもとんでもない才能の人がいるし……」
「そ、そうだな!次は大丈夫だよな!」
「では次の選手は前へ!」
会場がどよめく中、リーナの番が来た。
裾が短めの白いローブが可愛いらしい。
長い裾だと動きにくいんです!
と、既製品を自分で裁断してこしらえた品だ。
胸にはキリンのラキシスを模した刺繡を施し、細部にもこだわったデザインに仕上げている。
さすが女子力ナンバーワンの女子である。
ちなみに二位はルースだ。
フレアとサリアはまあ……察せるだろう。
いいですか?
人には向き不向きというものがあります。
ですので、男性女性問わずにできる人がやるべきだと思いませんか?
力説ありがたがいが、ファーナは裁縫とか家事できるんだよな?
……裁断は得意ですよ。
……一応聞くけど、布や革だよね?
いいえ?剣や盾に鎧、あとは生きた肉を切断するのが得意ですね。
さて、リーナの応援に戻ろ。
恐ろしいことを聞いた俺はすぐさま現実世界へと退避した。
「頑張れよ!リーナ」
「はいっ!」
皆で応援する中、指定の位置に着く。
「あの子はキリンの召喚に成功した生徒ですね。ですがこちらもAランクの召喚獣の持ち主です。それに一番手とは力量に相当の差がありますよ?残った四人は別格ですから……ふふふ」
ブツブツと隣のベンチから二年生の教師の声が聞こえてくる。
この人の解説は参考になるから聞いておこうっと。
ウチの先生ってガレフ先生はまあ見た目通りの筋肉だけど、ルナ先生とサフィール先生も意外に感覚派なので教えるときなんて、こうしてこうです。とかはざらだ。
それでも問題ないと言えばないのだが、やはりどうしてそういうことになるのかは知っておきたい。
理屈を知らないと対策を立てることができないからな。
「さて、相手が可愛い女の子っていうのは困ったもんだな」
相手は重装メイルの大剣持ちなので前衛スタイルだろう。
やりづらい気持ちは分かるが、見た目通りと思って闘うと痛い目に合いますよ?先輩?
「試合開始!」
「ラキシスさん!お願いします!」
「シルフィード!後ろは任せるぞ!」
お互いが召喚獣を呼び出す。
相手はAランクのシルフィードだった。
女性のようなシルエットをした風の精霊で補助を得意としているが、攻撃や回復もできる万能型だ。
「風の加護!」
シルフィードが命令に応え、手を差し出すと重装鎧が淡い光を宿す。
どうやら何かしらの補助スキルを付与されたらしい。
「さあ!重装備とは思えぬ速さを見せてあげなさい!」
「寝かしつけてやるよ。優しくは出来んがな?」
速い!
サリアほどではないが、重装備な見た目との違いによってサリアと同等のように錯覚しそうだ。
「ラキシスさん、お願いします」
しかしリーナは動じないでラキシスに声をかけた。
するとラキシスの角に光が集まっていき、輝くシャボン玉のような膜がリーナの全身を光が覆っていく。
さらに、
「聖なる御手を我が手に宿したまえ……」
金剛体は鋼のように体を硬くするスキル。
そしてリーナが唱えた魔法は武器に魔力を宿し、攻撃力を高める魔法。
その二つが重なり合い、リーナの体はキラキラと輝き始めた。
「うぉぉぉ!もらった!」
相手はラキシスに狙いを定め、大剣で斬りかかったがラキシスは避けようともしない。
「させませんよ?」
ギィィィィィィン!
激しい金属音が闘技場内に響き渡る。
「はぁぁぁ!?」
相手は目の前の状況に驚愕の声を上げる。
まあ、初見だとそうなるよな……
リーナは自分の細い左腕で、倍はあるであろう大剣を受け止めていた。
「えいっ!」
「ぐはぁぁぁ!?」
それと同時にリーナの右ストレートが相手のボディに突き刺さる。
そこからは一方的だった。
「えいえいえいっ!」
可愛らしい掛け声とは裏腹に、
ドゴ!ドゴ!バキィィィ!
「ぎゃぁぁぁ!?」
とても痛そうな悲鳴が聞こえてしまい、俺のお腹が痛くなる。
「え、えぐぅ……」
ていうか、観客の顔も引きつっていた。
リーナの拳が、鎧の上でもお構いなしで相手の腹に突き刺さっていくからだ。
シルフィードがあわててリーナを引き離そうと主の近くに向かおうとするが、ラキシスに防がれてしまい近寄ることもできない。
その間にも重装備の鎧が拳の形にへこんでいく!
「lalala~♪」
リーナは歌いながら、にこやかに拳を繰り出していく!
右ストレート!
左ストレート!
「も、もう……やめへ……」
「お眠りなさい……」
そしてトドメの右ボディ!
「……あーめん」
祈りの言葉とともに、相手はふらふらと力なくその場へと倒れこんだ……
「キ・モ・チ・イ・イ♪」
天使の笑顔で言い放つリーナ。
防御はどこに行ったのか?
先生たちの集中授業から行方不明で困ってしまう。
あ、相手の人は大丈夫かな……?
「鎧のおかげで無事だけど、重傷だわ!急いで担架を!回復チーム急いで!」
「「「合点!」」」
生きてるならいいか……
「補助魔法と補助スキルの掛け合わせだとぉぉぉ……!?」
「あ、あんなのできるんですか?」
おっ、解説してくれそう。
「補助魔法と補助スキルは似て非なるものだ!だからこそ反発することなく、掛け合わせるのは相当に難しい!例えるなら氷の中に炎を生み出し、溶かすことなくランプの様に輝かせるというようなものだ!」
そ、そんなにすごい技術なのか……
道理でリーナ以外出来ないわけだ。
解説を聞き終えた俺はリーナへと目を移すと、
「ありがとうございました!」
ラキシスに労いの言葉をかけているところだった。
その言葉に喜んだようで、嬉しそうにリーナの頬を舐めるとそのまま溶けるように消え去っていく。
「しょ、勝者リーナさん!」
「「「「う、うぉぉぉぉぉぉ!」」」」
「「「……」」」
引き気味だが声を上げる一年生応援団と、静まり返る二年生応援団。
「ただいま戻りました」
俺たちのもとに戻ってくると、リーナはにっこりと微笑んだ。
「お、おめでとう……」
「み、見事だった……」
「……すごく、つよい」
「う、うん、いろんな意味で見とれちゃったよ……」
「えへへ……なんだか照れちゃいます……」
「「「……」」」
先ほどの歌いながら殴りかかっていた人物と同一とは思えずに困惑する俺たちだった……




