振り返れば……いややめておこう
「皆さん、お疲れさまでした。本日で特別メニューは終了です。私たちの考えたスペシャル指導をこなしてくれたことを嬉しく思います」
ルナ先生がとびきりの笑顔を見せてくれたというのに、俺も他の生徒たちもまったく反応できないでいた。
「ふぇ……?もう一か月過ぎたの……?」
あれから1ヶ月が過ぎていたようだ。
ここ最近は魔力と体力ともに、ほとんど空っぽになるまでしごかれていた。
そのため、俺たち生徒は日付の感覚が無くなっていた。
周囲を見渡せば死屍累々の惨状だ。
体力には自信のあるフレアだが、机の上にあごを置き、魂が抜けそうな表情を浮かべている。
辛うじてポニーテールだけがピコピコと動いており、生きてはいるようだ。
いつも礼儀正しいフレアがあんな姿勢を……
リーナはというと、無表情だった。
話を聞くときはほんのりと微笑みを浮かべ、話している人を癒してくれる。
クラスメイトからはエンジェルスマイルと名付けられていたというのに……
「……」
全てを諦めたような……そう、まるで、堕天使のような姿になってしまった……
リーナの天使の翼は黒に染められている……
サリアの方に目を向けると、スヤスヤと眠っていた。
いつだったか忘れたが、起こそうとしたときがあったんだ。
そのとき野生動物のようにふしゃぁぁぁ!っと威嚇され、ガブッと嚙みつかれたことは覚えている。
なんせまだ歯形が俺の手に残っているからな……
最後になるが、
「ふぅ……おわったぁ……」
ルースだけは普段と変わらないでいた。
もちろん疲れてはいるものの、他の生徒たちのように著しく変わった部分はない。
スケールの大きさはクラスで一番なのでは?
そう思わずにはいられなかった。
「週末の明日と明後日はお休みですが、それが終わるといよいよ二年生との交流戦があります。五対五の勝ち抜き戦で一年生のランキング上位者と、二年生のランキング上位者がメンバーとなります。我がクラスのメンバーはカイ君、フレアさん、リーナさん、サリアさん、ルース君です。選ばれた五人はクラス全員の期待を背負っていることをお忘れなく、自信をもって闘いに臨んでください。そしてメンバーには入れなかった方は、しっかりと観戦することで学んでください。それでは以上です。あっ、お風呂にはゆっくりと浸かってくださいね?」
「「「わ、わかりましたぁ……」」」
俺たちはなんとか返事をすると、ルナ先生は教室を去っていった。
その後も誰一人として動かないまま、教室の外は暗くなっていく。
そうして寮の門限ギリギリまで教室で過ごしたのち、俺たちはちょとだけ回復した体力を生贄に捧げつつ寮に帰ることができたのだった。
「「「お疲れ様ぁぁぁ!」」」
その日の夕食は打ち上げパーティーのようなテンションでテーブルを囲んだ。
このときばかりは俺たちに壁はない。
全員が戦友だからな。
「ああ……食事が美味いとは何年ぶりだろうか……」
「その気持ち、とってもよく分かります……」
「食事に感謝、命に感謝」
フレアたちは涙を流しながら、一口一口を味わって食べている。
「この一か月は、まさに地獄だった……」
「うん……ひたすら走って闘って勉強しての繰り返しだったもんね……」
むぐっ!!!
その場にいる全員が過酷な日々を思い出しそうになり、吐きそうになったがなんとかこらえる。
「だ、だけどそのおかげで、強くなれた実感はあるよな」
「うむ……召喚獣の維持時間は大幅に伸びたことは間違いない」
「それに命令をこなすだけでなく、自分で考えて動いてくれるようになりました。まるでやりたいことが分かっているように」
「うん、とっても頼りになる。まるでお兄ちゃんと一緒に闘っているみたい」
「大変だったけど……頑張ってよかった」
俺たちは満足そうに笑う。
だが、ここで終わりではない。
「これで週明けにはいよいよ、二年生との試合だな」
俺の言葉に続き、フレアたちは静かに首を縦に振る。
「もちろん私は勝つつもりでいくぞ?」
「わたしも……」
「私も負けないように頑張ります!」
「僕も負けないからね!」
どうやら俺たちの気持ちは一つのようだ。
「頑張れよ!」
「応援してるからな!」
「頼んだぜ!俺たちの代表!」
いや、クラスの気持ちが一つになっている。
「よっしゃ!勝ちにいくぜ!」
「「「「おおぉぉぉ!!!」」」」
マスター、よかったですね。
お友達がたくさんできて……
私は嬉しく思います……
お前は俺の母親か。
お姉ちゃんと呼びなさい。
ファーナお姉ちゃん……
き、気持ち悪い……
じゃあ言わせんなよ!?
俺とファーナの関係は相変わらず良好のようである。




