不意に一緒です!
リュノンの実践の翌日の午後、俺は保育園へと向かい街を歩いていた。
すると、
「カイ先輩!」
背後から声をかけられる。
俺が振り返るとそこにはノアとイザナの二人がいた。
二人とも私服で、イザナは水色のシャツに黒いズボン。
ノアはフリフリの白いドレスのようなワンピースを着ていた。
「ノアとイザナか。二人で街を散歩中か?」
「はい。いろいろと見回っています」
「あんたは一人で寂しそうね」
「なんだか会うたびに俺の扱いが雑になってないか?」
「ノア、失礼だよ?」
「ふん。いいのよ、こんなやつ」
「あっ、イザナもノアって呼ぶようになったんだな」
「はい。ボクもノアって呼びたいなって言ったら許してくれたんです」
「もうなし崩しよ!あっちこっちからノア、ノアって呼ぶんだもん!」
「ははは、仲良くできてそうだな!」
「良くない!」
こうしてノアをからかうのもいいが、そろそろ時間も近づいている。
俺はここで別れをきり出そうとするが、イザナに先を越された。
「カイ先輩は何か予定があるんですか?」
「ああ、ちょっと保育園にな」
「えっ……」
なぜかイザナはショックを受けた表情を見せる。
「なにあんた?子持ちなの?」
「そんなわけあるか!バイトだよ!保育園からの依頼で行っているんだ!」
「あっ……そうでしたか……」
「イザナも俺が子持ちだと思ったのか?」
「えへへ……少しだけ……」
そんな可愛くごまかされると許しちゃう!(俺は笑顔ではごまかされんぞ!)
〔マスター、本音と建前が別ですが?〕
〔……気にしないでほしい〕
「それでなんですけどカイ先輩、ボクたちもついていっていいですか?」
「えっ?」
「なに言っているのよイザナ!」
「ボクたちももう少ししたらお仕事できるんでしょ?見学したいなと思って。ノアだって興味あるでしょ?」
「それは、あるけど……」
「俺はいいけど、依頼料は出ないぞ?」
「もちろんです」
「仕方ないわね!あんたの仕事ぶり、見てあげるわ!」
こうして、二人の付き添い経て俺たちは保育園へと向かっていた。
しかし、その道中でどうしても聞きたいことがある。
「イザナ、一つ聞いていいか?」
「どうぞ?」
「どうして胸、小さくしてるんだ……」
俺は小声で聞いてみたのだが、イザナの顔は真っ赤になってしまった。
「ちょっとあんた!なに聞いてるのよ!」
「だって気になったんだもん!」
「この変態!」
てしてしと足を蹴ってくるノア。
痛いのでやめてほしい。
「これはその……ボクたちの一族はあまり大きくない方が美しいとされているので、なので布を巻いて小さく見せています……」
「な、なるほど……ならフレアやセツカ先輩は……」
「ええ、美しい方たちですね」
ふむ……文化の違いか。
いやまあ、小さい方を貶すわけではないが。
〔素晴らしい文化ですね!〕
〔お、おお……〕
ファーナも嬉しそうである。
「それなら私も美しいってわけね!」
「いや、ノアは幼いだよ」
「なんでよ!」
残念ながらノアのみが不貞腐れる結果となってしまった。
そうした会話をしながら、歩いていくと保育園へと到着した。
「へぇ、結構大きいわね」
「ああ、街で唯一の保育園だからな」
俺は門の隣にある呼石に手をかざそうとしたが、鉄柵の間から子どもたちの顔が見えた。
「にいちゃん!」
「おお、エンツにケシムにサーシャ!それにみんなもいるな!」
鉄柵に顔が挟まらないかどうかドキドキに思えるように園児たちがこちらを覗いている。
そんな勢いに押されているのが、ノアとイザナだった。
「ほらほら、みなさん。大人しくしましょうね」
ダリア先生がなだめてくれ、門が開いた。
すると子どもたちが一斉に俺たちに駆け寄ってくる。
「にいちゃん!この人たちは!?」
「新しく学園に入った一年生だ」
「なら召喚できるの!見せて見せて!」
「ダリア先生、いいですか?二人のことは僕が保証しますが」
「はい、カイ君が言うのなら許可を出します」
「二人も見せてやってくれる?」
「はい、もちろんです!」
「仕方ないわね。別にいいわよ」
俺たちは園内に入ると、すぐにグラウンドで召喚をした。
すると、そこに現れたのは熾天使、堕天使、そしてファーナ。
「うわぁ!かっけぇ!」
初めて見た熾天使と堕天使にほぼ全ての子どもたちを取られてしまい、ファーナは不機嫌そうに愚痴た。
〔私の方がカッコいいじゃありませんか……〕
〔まあ子どもっていうのは初めて見るものに興味津々となるものだからな。落ち込むなよ〕
〔別に、落ち込んでませんよ〕
「にいちゃんは新しい召喚獣いないの?契約したんでしょ?」
「おっ、ケシムよく覚えていたな。それじゃお披露目しちゃおうかな、こいリュノン」
「きゅい!」
召喚されたリュノンはキョロキョロと周囲を見渡した。
「きゅい?」
なんだかよくわかっていないようで、首を傾げるリュノン。
「きゃぁ!可愛い!」
それがサーシャを始めとする女の子たちにさっさたようで、一瞬でリュノンは取り囲まれた。
「ああ!あんたたち!私のルシフォーリアの方がすごいでしょ!」
「ノアってば勝負じゃないんだから……」
「だってだって!」
「お姉ちゃん!天使さん、バサバサして!」
「いいわよ!しっかり見ておきなさい!」
「もう、単純なんだから」
そうねだられたノアは堕天使の翼を羽ばたかせる。
二人ともなんだかんだ楽しそうだった。
「それでは、ありがとうございました」
「「「ありがとうございましたぁ!」」」
「こっちこそ!またな!みんな!」
一時間ほどお披露目会をした俺たちは、ダリア先生と子どもたちにお礼を言われて保育園を出た。
「どうだった?」
そうして帰途の道すがら、体験したことを聞いてみる。
「とっても楽しかったです!召喚獣ってこんなお仕事もあるんですね!」
「まあ、結構楽しめたかしら」
「そんなこと言って、一番子どもたちと遊んでいたくせに」
「そ、そんなことないわよ!」
真っ赤に否定するノアを俺とイザナで笑い合っていると、いい香りがしてきた。
小麦粉の生地にミルクとはちみつを混ぜ込んだスイーツの屋台が立っていたのだ。
ちょうどおやつどきだな。
「どうだ?お腹空いてないか?バイト代として俺が出すぞ?」
「そんな!いただけませんよ!」
「なに言っているの?カイが出すって言っているんだからいいじゃない。私二つね!」
「はいはい。イザナはいくつだ?」
「……それじゃボクも二つで」
「はいよ。おじさん六つください」
「ありがとね!おまけしてちょうど小金貨一枚だよ!」
おじさんは一個分の代金をおまけしてくれた。
こういうのって嬉しいんだよな。
二つづつを分けて入れてもらい、三つの紙袋を受け取った。
それをノアとイザナに渡す。
「ふふん。一応お礼は言っておくわ」
「ありがとうございます……」
「ノアはそれで礼を言っているのか?それに比べてイザナはいい子だな」
「そんなこと、ありません……」
イザナはパフっと丸いスイーツにかぶりついた。
それに続いて俺とノアもかぶりつく。
すると、ふんわりと広がるミルクの風味にはちみつの甘みが口内に広がっていった。
「美味しいです!」
「甘くていけるわね」
二人の笑顔が嬉しく思えて仕方がない。
それと同時に、少し気恥ずかしく思えてきた。
「それじゃ俺は帰るよ。二人とも付き合ってくれてありがとうな」
「こちらこそ、いろいろとありがとうございました」
「結構有意義だったわよ」
「それはよかった。門限は守るんだぞ」
「はい」
「子ども扱いしないでよ!」
俺は二人と別れ、学園へと戻るとエリさんに報告をした。
その後、
〔門限までは少し時間があるな〕
〔それではリュノンの特訓でもしますか〕
〔そうだな。そうするか〕
リュノンとファーナを召喚して、ひたすらに特訓を重ねる。
その中でも嬉しそうに笑うノアとイザナの顔が、頭の中で離れないでいた。
ふふっ……二人とも可愛かったな。
またいつか、二人が依頼をこなせるようになったら一緒に受けたいものだ。
そう思う休日だった。




