リュノン初の実践です!
リュノンは成長途中のため、必然的に二対三という構図で模擬戦に挑むようになってきた。
そのため、苦戦が続くこともある中でもなんとか勝率一位をキープできていたのだが、現状は辛いものとなっている。
そんな環境を打破すべく、俺は自室で瞑想をしつつ会議を行った。
〔それでは会議を始めます!静粛に!〕
〔誰も喋っていませんが?〕
〔きゅい?〕
〔こういうのは雰囲気が大事だからな。それはさておき議題だけど、現状をどう思うかな?ファーナ君〕
〔普通にしてくれません?なんだかイラッとします〕
〔わかったよ。それでどうだ?フレアたちには戦力的にもう並ばれそうだけど〕
〔そうですね。もはやアドバンテージというものはないに等しいと思います。リンクスタイルを使うなら話は別ですが〕
〔やっぱりそうだよな……まさか召喚獣が一体増えただけでここまでバランスが変わると思っていなかったよ……〕
それに加えてリンクメイルでファーナの中に入っているので一個体に等しい。
となると俺もファーナの外に出て闘う必要がある。
だが、俺個人の戦闘力はそれほど大したものではない。
さてどうしたものか。
〔とはいえ、リュノンも順調に成長しているようですから直に立派な戦力となってくれるでしょう。後は実践あるのみです〕
〔実践か……なんか依頼受けにいくか?〕
〔そうですね。それがいいでしょう〕
〔リュノン、頑張れるか?〕
〔きゅい!きゅい!〕
〔ふふっ、頑張れるそうですよ〕
〔よし!それじゃ明日にでも討伐系の依頼を探しにいくか!〕
こうして会議は終わり、俺はゆっくりとベッドの上で眠った。
そして翌日の放課後、俺は学園内の斡旋所へと向かう。
どれどれ、討伐系の依頼はあるかな?
貼り出されている紙をじっくりと眺めていくと、俺は良さそうな依頼を見つけた。
一枚の用紙に書かれた依頼ははぐれ召喚獣の討伐だった。
学園では今の時期のように頻繁に召喚を行う時期がある。
その際、聖霊界とこの世界を繋ぐゲートから召喚獣が迷い込んでしまうのだ。
本来なら召喚士からの魔力がないとこちらでは身体を維持できないのだが、実際には維持できている。
召喚獣に研究者が言うには、こちらの世界に漂う魔素に適合した結果だと言われているが、難しいことはわからない。
ただ、はぐれと呼ばれる召喚獣は本能のままに暴れてしまうので、被害が出てしまうこともある。
そしてはぐれは基本的にランクが低い召喚獣のため、こうして学園に依頼が出されたりするのだ。
〔ツリーフォークか。木の召喚獣でツタや土や木属性の魔法で襲いかかってくる召喚獣だ。ランクはDだったかな〕
〔リュノンでも闘えそうですね〕
〔だけど目撃された場所が近くの森の中。厄介な場所だな〕
〔なるほど。擬態されると面倒ですね〕
〔ああ、探すのも一苦労だ〕
〔しかし、そういった実践こそが強くなるためには大事です〕
〔よし、この依頼を受けるとしようか〕
「エリさん。ツリーフォーク討伐の依頼を受けます」
「わかったわ、それじゃサインをお願い」
受付のエリさんに求められるまま、俺はサインをする。
「受領しました。カイ君、頑張ってね」
「任せてください!」
エリさんの笑顔をもらい、俺はやる気に満ちあふれるのだった。
そして翌日の休日、俺は朝から森へと向かった。
街から出て数十分ほど歩けば到着するこの森は、自然の恵み豊かで薬草や果物が生えており収穫する人たちもいる。
それに鹿や猪、川には魚もいてルードリアの食の源になっている場所。
早いうちに討伐しないと、美味いご飯にありつけなくなるかもしれない。
「ファーナ、リュノン」
俺は二人を召喚し、周囲の索敵に当たらせる。そんな中をリュノン、俺、ファーナの順で歩いていく。
「きゅい!きゅい!」
〔なんだか楽しそうだな〕
〔自然豊かな方が馴染むのでしょうかね?〕
〔リュノン、ブレスは禁止だぞ?森が燃えちゃうからな〕
〔きゅい!〕
そうして周囲を警戒しつつ、歩いていると、
〔きゅぅぅぅ!〕
リュノンが唸り声を上げた。
そして一直線に一本の木へと向かっていく。
ウガァァァァァァ!
気づかれたと悟ったツリーフォークはツタの鞭でリュノンを打ちつけようとした。
だが、それを爪で切り裂くとツリーフォークの本体に飛びかかる。
〔きゅぅぅぅぅぅぅ!〕
ツタを切り裂いた爪で胴体に突き刺すと、ツリーフォークは悲鳴を上げた。
ギャァァァ!
擬態したツリーフォークを発見する目もすごいが、攻撃力も大したものだ。
あっという間に相手を追い込んだリュノンは大きく振り被って、トドメの一撃を繰り出した。
その拳は深々と胴体に突き刺さると、
ガガガ……
ツリーフォークは粒子となって消えていった。
「よし!よくやってぞリュノン!討伐完了だな!」
「きゅい!」
リュノンの頭を撫でると、嬉しそうに見上げてくる。
〔素晴らしい成果でしたね〕
〔ああ、予想以上だったよ〕
「さてと、それじゃ魔石、魔石」
はぐれとなった召喚獣が死ぬと魔石を残す。
これらは魔獣を生み出す原因となるのでしっかりと回収しなくてはならない。
それに討伐の証明にもなるしな。
このあたりはしっかりと座学で学んでおいたので、初めてのはぐれ討伐でもなんとかなるものだ。
俺はツリーフォークがいた場所を探索してみると、手のひらサイズの紫色の水晶を見つけた。
「あったあった。それじゃ帰ろうか」
こうして、リュノンを迎えての初めての討伐依頼を終えた。
「エリさん、終わりました。これ魔石です」
「随分早かったわね。まだ午前中よ?」
「目がいい召喚獣のおかげで、ツリーフォークをすぐに見つけることができたんです。そのおかげですね」
「ありがとうございました。これで森の警戒態勢を解くことができるわ。魔石も大きめだし、これならお値段がつきそうね。依頼料にプラスしておくわよ」
「ありがとうございます。それじゃ失礼します」
「あっ、ちょっと待って」
「まだなにか?」
「よかったらまた保育園へ行かない?園児たちがカイ君のこと待っているみたいなの」
一年ほど前に初めての依頼を受けたのが保育園での召喚獣とのふれあい教室。
それからもたまにこうして依頼を受けては保育園へと訪れていた。
「それじゃ明日にでもいい?こちらから連絡入れておくわ」
「わかりました」
ぶっちゃけ依頼料は安いが、子どもは好きだしのんびりと楽しめるので俺はこの依頼が好きだ。
「ありがとう。時間はいつも通り二時に行ってあげてね」
「はい」
「引き留めてごめんね。ありがと、カイ君」
「えへへ……どうもです……」
帰り際のウインク、ありがとうございます。
〔まったく!すぐにデレデレするのですから!〕




