一年生との交流試合開始です!
「それでは一年生との交流試合についてですが、いろいろと発表したいと思います」
教壇に立つルナ先生がホームルームで説明をしてくれる。
「前年は総当たり戦でしたが、今年は勝ち抜き戦で行われます。まあ昨年は特別でしたからね」
前年は二年生の担任だったザコバ先生が必勝の為に用意したのが、総当たり戦という形式だった。
クリス先輩のような例外を取り除くための策だったが、残念ながら層の厚さでも俺たちは二年生に勝利した。
「それでですが、一年生からカイ君に挑戦状が届いていましてね。ぜひとも先鋒で闘ってほしいとのことです」
ルナ先生からの言葉に俺は驚いた。
「えっ?俺がですか?」
「ええ、学園一位の人と闘ってみたいとのことです。どうしますか?」
クリス先輩を倒してしまった以上、暫定的に学園一位の座を頂いている。
「ふっ……いいんですか?全員倒してしまっても……」
〔なにを格好つけているんですか?〕
〔うっ、ウケていない!〕
俺は静まり返った教室の中で慌てて咳払いをすると、
「わかりました!頑張ります!」
素直に答えた。
「最初からそう言ってくれると助かります。ですが担任のゼルウェル先生はなにやら意味深に笑っていらっしゃいましたよ?少しは楽しませられるだろうって」
「ゼルウェル先生が……」
だとすると少し怖いな。
何の根拠もなく言う人ではないからな。
注意しておこう。
「あと、残りのメンバーですが、次鋒にルース君。中堅にリーナさん、副将がサリアさんに大将がフレアさんです」
ふむふむ、いつものメンバーだがアリシアは文句ないのだろうか?
「ルナ先生、アリシアはいいんですか?」
「アリシアさんは興味ないでしょう?明らかに戦闘能力が劣る相手と闘っても」
「ええ、よくわかっていただけて嬉しいです。手加減するのも一苦労なので……」
そういえばでっかい鎧を着て、学生グランプリでも自分にハンデつけてたよな。
「ということです。それではみなさん頑張ってくださいね」
こうしてホームルームは終わった。
〔俺が先鋒か……一年生と闘えるなんて楽しみだな〕
〔そうですか?私もアリシアさんと同じタイプですが〕
〔まあまあ、教えることも先輩の役目だぞ?〕
〔なるほど。見込みのある子がいればいいのですが……〕
〔ノエリーア……長いな。ノアでいいだろう。ノアと黒髪の男子なら楽しめそうじゃないか?きっと上位に入っているだろうし〕
〔ふむ……確かにそうですね。私も楽しみにしておきましょう〕
そうして待ち侘びた交流試合は、あっという間にやってきた。
いつもの闘技場の中央で俺たちの前に一年生の代表が五人並んでいる。
「本日はよろしくお願いいたします」
「なに、こちらこそよろしく頼むよ」
先生同士が挨拶をしている間に並ぶんでいる一年生たちを見ていく。
〔おっ!副将にノアがいて、大将は黒髪の男子か。しっかり入ってきているな〕
〔ええ、楽しみです〕
俺は自然と笑みが溢れている。
クリス先輩やアリシアのことをあまりとやかく言えそうにないな。
「はぁ……見てるだけになりそうだな……」
「うん」
「うふふ、そうですね」
「あははは……」
そんな俺の様子を見てチームメイトはいろいろな感情を見せた。
〔マスター。あまり張り切り過ぎても駄目ですよ?相手はあくまでも一年生なのですから〕
〔分かってるよ。ある程度は手は抜くって、じゃないとまずいからな〕
「では交流試合を始めます!先鋒前へ!」
相手側から選手が出てくる。
ロングソードにライトメイルの男子。
特に印象的な装備ではない。
じゃあいきますか!
「「よろしくお願いします!」」
中央で挨拶をしてから、俺は指定の位置に着く。
「試合開始!」
「こい!ファーナ!」
ルナ先生の号令と同時にファーナを召喚すると、一年生達の席から失笑される。
それに対面する相手も笑っているように見えた。
「えっ?ホントにリビングメイルだぜ?」
「もしかして勝てたりするんじゃないか?」
「油断するなよ?ゼルウェル先生言っていただろ?見かけで判断するなって」
〔……〕
ファーナから刺々しい沈黙が伝わってくる。
〔ファーナさん……手加減ですよね?〕
〔マスター、手加減というのは相手に失礼ではないですか?全力でいきましょう〕
〔おい……!〕
俺が制止しようと思った瞬間、相手の召喚獣、一つ目巨人のトロルは登場した瞬間にファーナの光の剣に貫かれていた……
そしてそのまま一年生に対し、光の剣を多重召喚し周りを囲うように展開していく。
「ひっ!?ギブアップです!」
そうして一年生は腰くだけると同時に、ギブアップを宣言した。
〔ファーナさん?〕
〔なんですか?〕
〔少しやり過ぎでは……?〕
〔いえ敵に情けは無用です〕
〔そうですか……〕
あまりのことに、余裕を見せていた一年生側の応援席はシーンとなってしまった。
そして次鋒と中堅もあっという間に散々な目に遭わされて、早々にギブアップを宣言した。
全く……プライド高いんだから……
圧倒的な実力差を見せつけられ、一年生たちがどんよりとする中で黒帽子に黒いマントのノアが歩いてきた。
〔ファーナそろそろいいだろ?〕
〔まあ少しは気が晴れました〕
〔じゃあ次からは俺も参加させてくれよ〕
〔少女目当てですか……?〕
〔違う!アドバイスした子だから闘ってみたいんだよ!〕
〔そういうことでしたらわかりました。私は手出しを控えましょう〕
〔ありがとう。じゃあいくか〕
「ノア、上位に入れたんだな」
「ノエリーアです!勝手に略さないでください!」
俺の言葉にノアは真っ赤になって怒ってくる。
「長いからな。いいじゃん」
「ふぬぅぅぅ!」
この子、やっぱり面白いな。
「ここからはさっきまでと同じようにいくとは思わないでください!」
「楽しみにしてるよ」
俺たちはお互いに礼をすると、指定の位置についた。
「試合開始!」
「我が召喚に応え顕現せよ!堕天使!ルシフォーリア!」
ノアはくるりと回転し、大きくその手を挙げた。
出るか!今年の一年生のSランクが!
シーン……
〔出てこない……?なんで?〕
〔あの召喚の仕方が恥ずかしいのではないかと〕
〔あっ、やっぱり……?〕
〔マスターがしたらとりあえず実家に帰りますね〕
〔どこだよ実家って!〕
「ごめんなさい!出てきてください!」
ノアが謝ると堕天使が出てきた。
〔どっちがマスターか分からんな〕
〔しかし実力は未知数ですよ〕
とりあえず光の剣で様子をみるか。
〔ファーナ、一本飛ばしてみてくれ〕
〔かしこまりました〕
「ふふん!その攻撃は散々見たわ!ルシフォーリア!シールド展開よ!」
堕天使が闇のように黒い盾を出現させると、ファーナの剣を弾いた。
むう、やるな。
堕天使(名前は長い)が羽ばたきこちらに向かってくる。
自律型というよりは勝手に動いてる感じだな。
ノアは詠唱を終えて、魔法を解き放つ。
「ダークブースト!」
堕天使の身体は闇の膜に覆われ、ステータスを強化したようだ。
〔ノアは後衛補助型だな〕
〔どうしますか?〕
〔後衛だというのにあんなに召喚獣と距離を離したらいかんだろう〕
〔次もあるしノア本体を攻撃するか〕
〔わかりました〕
「ブースト」
俺は自身を強化し、スピードを上げると堕天使を無視して、一直線にノアに向かう。
それに気づいた堕天使はこちら目掛けて黒い雷や羽を飛ばすが、サクッと避けて駆けていく。
そうしてあっという間に距離を詰めると、ノアに拳を突きつける。
「まだまだだな。召喚獣に勝手に動かれているようじゃ召喚士とは言えないぞ?」
「くっ……寸止めなんてしないでください!」
「まあまあ、しっかり負けを受け止めることも大事だ。無駄な怪我はしたくないだろうし、させたくない」
ノアは悔しそうに唇を噛むと、
「参りました!」
そう宣言したのだった。
「試合終了!」
お互いに召喚を解き、俺はノアに向かってアドバイスを贈る。
「プライドが高い召喚獣みたいだけど、主として認めさせるように頑張りな」
「わかりました……ですが、いずれ倒しますから!」
「待ってるぜ!」
「はっ?」
「いや倒すんだろ?」
「そうですけど……」
「だからいつでも模擬戦やろうな!」
俺がそう言うとノアは楽しそうに吹き出した。
「ぷっ……!変な人ですね、あなたは」
「なんでかよく言われるんだよな」
〔実際そうですからね〕
〔うるせー〕
「じゃあなノア。待ってるからな?」
「全く……その名前で呼ぶのはやめてくれません?」
「悪い悪い。ノエリーアだっけ?」
「……ううん。やっぱりノアでいいです」
「そうかありがとな。お疲れさま」
〔天然タラシが……〕
〔はあ!?今の会話のどこにあったよ!〕
〔マスターは召喚獣に名前をつける重要性を話しましたよね?〕
〔ああ〕
〔彼女の名前を愛称で呼ぶことが許されたのですが?〕
〔あっ……〕
言われてみれば愛称だ。
そんな単純なことに気づいていなかった。
〔間違いなく好感度は上昇しましたよ〕
〔……気をつけるよ〕
〔まあ無理でしょうね〕
〔そうですか……〕
俺はファーナの冷たい言葉を受け入れて、次の相手に目をやるのだった。




