初めての後輩の召喚です!
〔なんだか初々しいな〕
〔なにを大人びたことを言っているんですか?一年しか違わないでしょう?〕
〔学生の一年は大きいんだよ〕
二年生最初のイベントは一年生の最初の召喚を見守ることだった。
俺たちも上級生に見守られながら召喚をしたものだ。
少し感慨深く思いながら一年生の召喚を見守っていく。
「それでは各自魔法陣に入り、召喚せよ!」
グラウンドの中央には魔法陣が5×2で計十個の陣が描かれている。
一年生の担任となったゼルウェル先生の号令の下、魔法陣に入った一年生たちが召喚の光を輝かせる。
〔特に大物が現れることはないな〕
〔そうですね。Aランクが今のところ最上位といったようですね〕
〔やっぱり去年、フレアたちがSランクをポンポン出したのっておかしかったんだな〕
〔そうですね〕
ファーナとそんなことを話していると、ある魔法陣の一つに変なのがいた。
「我が覇道を支えし偉大なる聖霊よ!我が呼び声に応え出現せよ!」
まったく唱える必要のない呪文のようなものを大きな声で発している。
面白いやつだな……
俺はそう思ってその生徒を注目した。
魔女のような黒い帽子に黒いマントを纏っているが、スカートを履いているので女子、周囲との身長差で小さな子だとわかる。
そんな彼女は片手で目を覆いながら召喚している。
「召喚!」
そうして気合を入れて召喚をしたが、現れたのはスケルトンだった。
「却下!もう!なんで骨なのよ!次!」
「我が覇道を支えし偉大なる聖霊よ!我が呼び声に応え出現せよ!」
また同じように召喚の儀式をし、呪文を唱える。
「召喚!」
だが現れたのはゾンビだった。
「却下!却下!却下!腐った死体なんていらないわ!次!」
「我が覇道を支えし偉大なる聖霊よ!我が呼び声に応え出現せよ!」
今度は踊るように回転し、
「召喚!」
両手を差し出した結果は、ゴブリンだった。
「ちがぁう!なんでよ!なんでSランクのカッコいい召喚獣が出ないのよ!次次次ぃぃぃ!」
「ノエリーア。君の番は終了だ。魔力を消費しただろうから少し休みなさい」
ノエリーアと呼ばれた子は、規定の三回を使いきり後ろにまわされる。
〔いやぁ、本人には悪いけど面白かったな。やる気とは関係なく低ランクの召喚獣ばかり出てきて〕
〔マスターは人が悪いですね。彼女も一生懸命なのですよ?〕
〔そう言うファーナだって笑ってたよね?〕
〔はて?何のことやら?〕
図々しいやつだなと思いつつ、俺は召喚の様子を見守る。
するとノエリーアの次に魔法陣に入った生徒に視線がいった。
珍しいな、セツカ先輩と同じ黒髪だ。
黒髪は月影族という東方にある国が由来だそうだが、彼らはあまり領地から出てこないと言われている。
男子の制服なことから少年だと思われる。
その割にはなんだか可愛らしい顔つきに見えるな?
少し距離があるのでわかりづらいが、ルース並みに可愛く見える。
ただ、月影族がそういった顔つきなのかもしれない。
そんな彼が召喚を始めると雰囲気が変わる。
魔法陣の光が強い。
おっ!高ランクの予感!
そんな俺の期待通りに現れたのは、天使の中でも最上位に位置すると言われる熾天使だった。
炎の翼を持ちランスと盾を手に、白銀の鎧を纏い長い白髪は燦然と輝いている。
「よ、よろしくお願いします!」
彼がそう言うと熾天使はコクリと頷いた。
すると熾天使は彼の中へと消えていく。
〔おお、Sランクの召喚獣と契約する生徒が現れたか〕
〔お見事ですね〕
その後は特にSランクの召喚や暴走といったアクシデントは無く、次々と生徒は契約を完了していく。
ただ一人を残して……
それはノエリーアだった。
何度やっても低ランクの召喚獣しか出ずに召喚を何度も繰り返している。
「今日はもうやめておきなさい。魔力も残っていないだろう?」
ゼルウェル先生は静止するがノエリーアは引き下がらない。
「あと一回だけ!お願いします!」
そんな精一杯なノエリーアを見て、俺は少し助言をあげたくなった。
「ゼルウェル先生」
「おお、カイ君か。どうした?」
「少しアドバイスをあげようと思って、よろしいですか?」
「ああ、もちろんだ」
「少しいいかな?」
「なんですか?貴方は?」
「俺は二年生のカイ。よろしく」
「ノエリーアです……」
俺を覗き込む幼さの残る容姿、透き通るように白い肌と長い白髪に赤い目。
まるでヴァンパイアのような少女だ。
「君に贈るアドバイスはただ一つ、真剣に願いながら召喚するんだ」
「してますよ!呪文だって唱えて!」
「言葉はいらない。ただ自分のパートナーとなる存在を祈って召喚してみなよ」
「……わかりました。やってみます」
そして彼女は魔法陣に入り、召喚を始める。
今度は何も唱えずに、ただ目をつむり祈った。
すると先ほどに負けず劣らずの光が魔法陣を輝かせる。
おっ!来たか!?
召喚獣が現れた。
漆黒の翼を四枚もち、漆黒の鎧に剣に盾までも全てが黒い。
そんな彼女はというと長い黒髪に褐色の肌という悪魔的なまでの色気が漂っている。
「ふむ、堕天使だな。それも上位クラス。間違いなくSランクだ」
ゼルウェル先生の言葉にノエリーアはキラキラと瞳を輝かせる。
そんな彼女に俺は問いかけた。
「どうする?契約する?」
「もちろん!私のところに来てくれる!?」
すると堕天使は彼女の頭を撫でると、彼女の中に消えていった。
「やった!やったやったぁ!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるノエリーアを見ていると、こちらまで嬉しくなってくる。
「ゼルウェル先生、お邪魔しました」
「ああ、世話になったなカイ君」
俺が去ろうとすると、くいっと裾を引っ張られた。
「その……ありがとうございます……」
「ははは、気にするな。面白くて見てたんだから」
「面白いとはなんですか!?」
「呪文を唱えて召喚するところとか面白かったぞ?」
「少しは感謝しようかと思ったけどもういい!さっさと行け!」
「はいはい、ノエリーア」
「気軽に名前を呼ばないで!」
ノエリーアはふん!と立ち去っていくが、
「……ありがとうございました!」
あっかんべーをして大きな声で感謝を告げてきた。
〔まったく、可愛いもんだな〕
〔マスターは少女もお好きで?〕
〔そういう意味じゃない!〕
〔そうですか。またいつもの病気かと思いまして〕
なんだよいつもの病気って……
俺はぶつぶつ文句を言いつつ、元の場所へと戻ったのだが……
「相変わらず女の子には優しいのだな?」
「本当です!」
「この節操なし」
「うふふ……可愛い子ですし、仕方ないですよね?」
ジト目で睨んでくるフレアたちと冷笑するアリシアがいた。
「あ、あの……ルース君……?」
「僕はしーらない」
「な、なんなんだよぉぉぉ!」
ちょっぴり先輩風吹かしただけなのに!
その後に召喚する身としては、ものすごく居心地が悪いものだった。




