クリス先輩戦決着です!
ピシッ……!
プリンセシオンにヒビが入る。
クリス先輩が剣に込めた魔力に押し負けたか?
そう思った瞬間、
「ボクの負けだね」
クリス先輩の剣が粉々に砕けていった。
「ルナ先生、ギブアップします」
「クリスさんのギブアップにより、勝者カイ君!」
その宣言に闘技場が沸き上がった。
「いやあ、負けちゃったな」
クリス先輩は晴れ晴れとした様子で笑顔を見せ、ファーナの元にやってくる。
「いえいえ、一撃での制約がなければそちらが勝っていたかもしれません。こちらにはもう余裕はありませんから」
「いいんだ。ボクが求めていたのはこんな全力を出せる勝負だったから」
そう言うと手を差し出してくる。
「そう言ってもらえると、私も嬉しいです」
ファーナはその手を握り、笑顔で返した。
「よかったら顔を見せてくれないかな?」
「いいですよ?」
クリス先輩のお願いを聞き兜を脱ぐと、さらりとした金髪が流れていく。
「わぁ……綺麗だね……」
「そ、そうまじまじと見られて言われると、照れますね……」
「ふふっ、カイ君はボクとファーナさん。どっちがタイプなのかな?」
「なっ!?」
〔どっちですか!?マスター!〕
〔ただの冗談を真に受けるな!〕
〔いいえ、彼女は真剣ですよ!どちらかはっきりさせるまでは聞き続けますからね!〕
〔……本当のこと言っても怒らない?〕
〔ええ!バシッと決着をしたいと思いますので!〕
〔どっちも好き……〕
〔……マスター?〕
〔仕方ないだろ!?本当のことなんだから!正直どっちもタイプだよ!二人とも可愛いし綺麗だし!悪いか!〕
〔……まあ、そこまで言うのなら仕方ありませんね〕
「どうやらマスターは、私たちのどちらもがタイプのようです」
「あらら、優柔不断な子だな?カイ君は」
クリス先輩はクスクスと笑う。
うぅ……恥ずかしい……
「ではそろそろ私は戻りますので」
「うん、ありがとう。とっても楽しかったよ」
ファーナは兜を被ると、俺はリンクスタイルを切り召喚を解いた。
「はぁ……疲れた……」
自分の感覚が戻ってくると、トスッと腰を地面に下ろした。
「あはは、ボクもだよ」
それに合わせてクリス先輩も地面に腰を下ろす。
「クリス先輩、楽しそうでしたね」
「うん。とっても楽しかった。ボクの全力を出し切れたよ。カイ君ありがとう」
「いえいえ、悔しいですが俺が主体ではまだまだ勝てそうにないですからね。今回はファーナの勝ちということで俺との対戦成績はお預けにしておきます」
「ファーナさんの勝利もカイ君の勝利だと思うけどな」
「いいや、ここは別にさせておいてほしいです」
「うふふ、本当に君らしいな」
俺とクリス先輩が談笑していると、ルナ先生が近づいてきた。
「お二人とも、楽しそうですね……」
だが、その声色はなぜか冷たい。
「あれ……?ルナ先生なにか怒ってます……?」
「……ボクたち、なにかしました?」
「なにかしました?ではありません!見てくださいこの惨状を!」
俺たちは周囲を見渡すと、あちこちの地面に穴があったり割れている場所がある。
「いやぁ……その何と言いますか……ねぇクリス先輩?」
「うんうん……仕方なかったかなって……?」
「頑丈に新築された闘技場をこんなに荒らすなんて!まったく!」
「「申し訳ありません……」」
「……まあ、いいでしょう。二人とも素晴らしい闘いを見せてくれましたし、これ以上は言わないことにします」
「さすがルナ先生!ありがとうございます!」
「まったく、調子のいい子ですね。カイ君は」
にっこりと微笑みを浮かべたルナ先生。
その表情に思わず見惚れてしまった。
「ルナ、先生……」
「カイ君……?」
〔……マスター?〕
内外からの凄まじい圧を感じた俺はコホンと大きく咳払いをする。
だが、まったくもってごまかせていないようだ。
「ファーナさん、これはお仕置きが必要のようだね?」
〔ええ、おっしゃる通りです〕
「どうしてくれようかな……?」
〔そうですね、頬を思いっきりつねってあげるとよろしいかと〕
「なるほど、そうしようか」
「なんで二人以心伝心してるんだ!?って!ギャァァァ!」
俺は思いっきり両頬をクリス先輩につねられた。
「ファーナさんの分も合わせてやってあげたよ」
〔ありがとうございます!〕
「うぅ……なぜこんな目に……ルナ先生……」
俺はルナ先生に助けを求めようとしたが、既に闘技場の舞台から降りてしまっていた。
魔力の消費からくる疲れや肉体の疲れよりも、頬のダメージが一番大きく感じてジンジンと痛む。
「ありがとうね。これで心置きなく卒業できるよ」
「そう言ってくれたら嬉しいです……」
舞台の上で二人になったクリス先輩は穏やかな表情を見せる。
「それとね?……大好きだよ?」
「えっ……?」
クリス先輩の顔を見ると、真っ赤に染まっていた。
「えへへ……言っちゃった……カイ君は、ボクのこと好き?」
「あ、あの……好きですけど……」
「それなら今はそれでいいや。先に卒業しちゃうボクからの気持ち、覚えておいてね?」
「……はい」
「ああ!とってもスッキリした!本当にありがとう!カイ君!」
クリス先輩に差し出された手を無意識に握った。
その小さな手はとても柔らかく、その感触だけが脳裏に残っているのだった。




