全力全開です!
「楽しい……楽しいなぁ!」
劣勢だと思われていたクリス先輩の剣圧が増してくる。
「くうっ!やりますね!」
「このくらいで驚いてもらっちゃ困るよ!はぁぁぁ!」
グググッ……!
一度ファーナの方が押し勝っていた天秤が、今度はファーナの方に傾いていく。
力押しで負けているのか?あのファーナが。
持久戦のような剣のぶつけ合いとなった試合だが、先に音を上げたのはファーナだった。
「負けたつもりはないですが!力から技の勝負にさせていただきます!」
ぶつけ合っていた剣先をずらしてクリス先輩の剣を斜め先へと受け流す。
そのまま倒れ込むかのように見えたクリス先輩は左足一本で踏ん張ると、身体を一回転させるようにしてファーナの胴をその剣で撃った。
「ぐぅっ!」
その衝撃は凄まじく、ファーナの身体は後方へと吹き飛ばされた。
身体能力のおかげでなんとか転ばずに済んだが、ダメージは大きく俺にも衝撃が伝わってくる。
〔大丈夫かファーナ!〕
〔すいませんマスター!彼女は私の想像よりも上でした!〕
〔気にすんな!クリス先輩が想定外なのは承知の上だろ!立て直すぞ!〕
「承知!」
「まだまだいくよ!」
こちらの体勢が整っていない状況で、クリス先輩は猛追してくる。
「光の剣!行きなさい!」
その僅かの隙をなんとか立て直そうと、ファーナは後ろに跳びながら二本の光の剣をクリス先輩に向けて放つ。
「おっと」
突然の遠距離攻撃に驚いた様子も見せず、簡単に二本の剣を振り払うと光の剣は後方に突き刺さった。
〔簡単にあしらってくれますね〕
〔まあそれでも時間は稼げた〕
〔ええ、今度はこちらから仕掛けます!〕
「せいやぁぁぁ!」
ファーナは一本の矢のように剣を前にして突進する。
光の剣を打ち払った僅かな硬直を狙ったものだ。
「よっと」
だが、それも素早い反応で躱されてしまった。
「まだです!」
勢いついた剣先を地面に突き刺し、固定された剣を中心に円を描くように移動する。
そして突き刺さった剣はそのままに、光の剣を召喚して上段から斬り掛かった。
「うわっ!」
キィィィン!
その動きは予想外だったらしく、クリス先輩は慌てて剣を差し込んだ。
「危なっ!」
「よくも簡単に防いでくれますね!」
「簡単じゃないよ!ギリギリだって!」
クリス先輩は楽しそうに笑顔を見せる。
きっとファーナも笑っているのだろう。
「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」
一撃の放ち合いから一転し、二人は連撃をぶつけ合う。
時には避け、時には剣がぶつかる。
その高速のやり取りはお互いが繰り出す場所を予想し合っているようで、回避、攻撃、防御が激しく入り混じっていた。
その剣の勝負に俺はまったくついていけなかったが、一番いいところで観戦できていることに嬉しさがこみ上げてくる。
これが、最高の剣士同士の闘いか!
くぅ!感激だ!
俺はファーナの邪魔にならないようにそう思った。
だが、胸に感じる心拍数は加速していく。
身体が悲鳴を上げているのだ。
「はぁっ……!はぁっ……!」
苦しさが伝わってくる。
「ふっ……!はぁはぁ!」
しかし、クリス先輩の息も荒い。
ファーナ!
〔頑張れぇぇぇ!〕
邪魔をしないと思っていたのに、つい叫んでしまった。
〔はい!〕
「そこだぁ!」
高速での戦闘中にファーナが活路を見出し、クリス先輩の右肩を光の剣が突き刺さった。
ガシャッ!
「きゃぁっ!」
右の肩当ては砕け、クリス先輩の身体がバランスを崩す。
そこに畳み掛けるようにファーナは襲いかかった。
「シールド展開!」
ギィィィン!
「くっ!」
クリス先輩は前方に黄金の盾を二枚召喚すると、ファーナの追撃を防いだ。
それらの盾が役目を終えたかのように消滅すると、すっかりと息を整えているクリス先輩の姿があった。
「ふぅ……いたたた、だよ」
「これで一本同士となりましたね」
「そうだね……提案なんだけど、次の一本を決めた方が勝ちってことでどう?時間もそう残っていないだろうしね」
「いいでしょう。このままずるずると引き分けというのもつまらないですから」
「ありがとう……心置きなく全力を出すよ!」
「こちらも同じです!」
ファーナは光の剣を周囲に展開させる。
それを見たクリス先輩も背中の翼をファーナに向けた。
「光剣縦陣!」
「天翼槍矢」
光の剣と輝く羽根の矢がぶつかり合うと、お互いに消滅する。
だが、それを掻い潜るように羽根がファーナの鎧にぶつかってくる。
「くぅ!」
少なくないダメージを受け膝を折ったが、それはクリス先輩も同じのようで体勢を崩している。
二人とも満身創痍の状態だというのに、クリス先輩の表情は明るい。
ファーナもきっと同じ表情を浮かべているのだろう。
「光剣強化・纏」
ファーナは突き刺さっていたままの愛剣プリンセシオンを拾うと、その剣身に光を纏わせていく。
「空天薙刀」
クリス先輩もロングソードに魔力を込め、その剣身の輝きは太陽のように眩しい。
「全身全霊をこの剣に込める!受けてみよ!」
「正真正銘の全力だ!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
お互いに全力突進。
上段斜めから二人の剣はぶつかり合った。
キィィィィィィィィィン!
甲高い音が闘技場に響き渡っていく。
その結果は、俺自身にもわからないのであった。




