お風呂に向かいます!
トラブルも終息し、夕方へと時間が移ろうとする頃、多くの保護者たちが教会に迎えにやってきた。
一人、また一人と手を振って見送っていると十八人いた子どもたちは四人へと減っている。
そんな四人の子は教会の椅子に座って話しをしていることが気になった。
他の子たちはお迎えを期待して、入り口の方を気にしてソワソワしていたからだ。
「あの子たちは私と一緒の境遇の子たちです」
リーナの言葉に俺は納得した。
迎えのない子たちか。
一応子どもたちの名前は教えてもらったが、正直言って記憶にない。
だがこの四人はしっかりと覚えておきたいと思った。
「えーと、ごめんだけど君たちのお名前もう一度教えてくれないかな?あといくつかな?」
「スティニーです。十一歳です」
一番年長の子が答えてくれた。
茶髪でロングヘアーで垂れ目な女の子。
この中では三人をお世話をする立場にいるのだろう。
礼儀正しい子だ。
「俺はトムス!六歳だぜ!」
今度は元気な男の子が答えてくれる。
赤い髪がツンツンと跳ね返っていていかにもいたずらっ子といった印象を受けた。
「私はシェンナよ!九歳のお姉さんなんだから!」
ほぼ同時に声を上げたのは?水色の髪をツインテールにした女の子。
とてもはつらつとした子でお姉さんぶっているが、まだまだあどけない表情を見せてくれる。
「アンジ……八歳です……」
そして最後に答えてくれたのはおとなしめな少年だった。
灰色の髪の毛は左目にかかり、伏し目がちなその様子から気弱な印象を受けた。
ただそれが彼の美形さを際立たせている。
まあ、まだ少年だ。
目くじらを立てるほどでは……
「アンジったらもっと元気に言いなさいよ!せっかくカッコいいのに台無しじゃない!私のお婿さんになるんだからしっかりしてよね!」
「う、うん……」
既に婚約者がいるだと……締めるか。
馬鹿なこと言わないでください。
冗談だよ冗談……
冗談なら歯を噛み締めないでください。
改めての自己紹介をしてもらった直後、トムスがとんでもないことを言い出した。
「クリスねーちゃんとサリアねーちゃんはおっぱい大きいよな!」
その言葉に今まで笑顔だったフレアとリーナの顔が固まる。まったく悪気はないのだろうが、その分ダメージは大きい。
「あいたぁ!何すんだよティー姉!」
スティニーが思いっきりチョップをトムスの頭にかました。
「女性にそういうことを言わないの」
「なんでだよ!大きいものを大きいって言っただけじゃん!」
少年よ。
その気持ちは十分に理解するが、正直になってはいかんのだ。
「トムスのちび!ちび!」
「あぁ!シェンナちびって言ったな!」
「だって一番小さいじゃない!だからちびよ!」
「ほら、トムスも本当のこと言われて嫌でしょ?そういうこともあるって覚えておきなさい」
「うん……」
スティニーに諭されてトムスは頷いた。
少年よ、一人大人になったな……
その後は主にリーナの話を椅子に座ってすることになる。
「リーナ姉さんはどういった召喚獣を手に入れたんですか?」
「ラキシスっていうキリンさんだよ」
「キリンってどんな子なの!?可愛い?」
「えっとね、白いお馬さんで翼が生えてて頭には角も生えてるの」
「かっけぇ!アンジもそう思うだろ!」
「う、うん……見てみたいな……」
「残念だけど召喚はできないの。そういう決まりだから」
「えぇ!見せてくれよぉ!」
「リーナお姉ちゃんがダメって言っているでしょ!」
「だってよぉ!アンジが言っているんだぜ?」
「うっ……そ、それでもリーナお姉ちゃんがダメだって言っているから仕方ないでしょ!我慢できるよね?アンジ?」
「う、うん……大丈夫だよ」
子どもたちの願いを聞いてあげたいところではあるが、規則は破れない。
召喚獣はあくまでも国からの許可をもらって召喚しているのだ。
ファーナがポンポンと出てくるのも本来は違法。
そこのところわかっているのか?
私は別に危害を加えませんので。
加えているだろ。
主である俺に。
まあまあバレなきゃいいんですよ。
バレなきゃ。
ファーナって本当にお姫様か?
ちゃんと証明されたでしょう。
そうなんだけど言動が残念過ぎる……
「さてさてみなさん。夕食の準備がそろそろできそうです。お風呂に入ってきてくださいな」
調理場で料理を作っていたセレナさんが教会に戻ってきた。
「わかりました。それじゃお風呂に案内しますね」
「い、一緒に入るの……?」
リーナの言葉に俺は少し興奮してしまった。
「そ、そんなわけないでしょ!ちゃんと男女で分かれています!」
「カイにーちゃんはスケベだな!」
「トムス、お前に言われるとにーちゃん辛いよ……」
こうして俺たちはタオルを持って浴場へと向かうことになった。
その道中、
「今日はカイにーちゃんたちと入れて嬉しいな!」
トムスがウキウキな様子を見せてくる。
「でもルースにーちゃんって本当に男なの?」
「お、男だよ!」
「そうなんだ!あはは!女だと思ってた!」
「ふふふ、もう少ししたら男の証明がされるぞ……びっくりするなよ?」
「ちんちんでかいの!?」
「でかい声で言うな!女の子もいるんだぞ!」
「男の子って本当にバカね」
おいおいシェンナちゃん。
なぜ俺を見る目までそんなに冷たいんだい?
「まあカイとトムスがそうなだけだ。ルースとアンジは違うだろう?」
「うん!ルースお兄ちゃんとアンジは大人しくていい感じ!」
フレアとシェンナちゃんが隣同士で仲良く会話をしている。
そんな二人に敵うわけがなく、俺は黙った。
「リーナ、シャンプーしてね?」
「はい、お任せください」
「あっ!ボクもしてほしいな!」
「シェンナもして!」
「順番ですからね。スティニーもしてあげますよ」
「あ、ありがとう……リーナ姉さん……」
それから孤児院の中を歩くと、男女とのれんがかけられている場所へとたどり着いた。
「それでは男の子は向こうで入ってくださいね」
「了解」
そうして俺たちここで男女別へと分かれるのだった。




