シスターの自己紹介です!
「あら?どうかしました、みなさん?」
さすがの察し力を発揮したファーナがお盆からお茶を配りつつ問いかけてくる。
「いやあクリス先輩がお姉さんかどうかで意見が割れちゃって……」
「ボクはお姉さんだよね!?」
「そうですね。クリス先輩は明るくていいお姉さんだと思いますよ?」
「リーナちゃん……好き!」
お茶を配り終えたリーナに抱きつくと、シスターは楽しそうに笑った。
「リーナは良い友達と巡り会えたようですね。では改めまして、この教会のシスターを務めておりますセレナと申します」
セレナさんは立ったまま、ゆっくりと頭を下げる。
その仕草に座ったままではいられずに俺たちは立ち上がった。
そしてそのまま自己紹介を終えると、
「ご丁寧にありがとうございます。みなさんリーナの手紙にあった通りの人たちですね。それにカイさん、お手紙で何度かやり取りをしましたが、寄付の発起人のなってくれたようでみなさんからの温かい御心遣い、大変感謝しております」
セレナさんはにこりと微笑んだ。
「いえいえ、リーナの為ですからね。なぁみんな?」
「ええ、僅かではあるが力になれたら嬉しく思います」
「リーナは友達だから」
「て、照れるね……」
「うんうん!友達は大切にしないとね!」
「みなさん……ありがとうございます……」
ファーナが涙を潤ませつつ、頭を下げた。
一方でセレナさんはというと、
「みなさんに女神様の祝福がありますように……」
そう言って一番近くにいたフレアを抱擁した。
「あっあっあのセレナさん!?」
ギュッと抱きしめられたフレアはおろおろとして、反応に困っている。
「シ、シスター!軽々と抱きつくのはやめてくださいと言っているでしょう!」
「ですが、祝福の際にはこうして身を寄せ合う必要が……」
「握手でもいいのですからそうしてください!」
「うぅ……残念です……」
残念そうに肩を落とすセレナさんに向かってサリアがちょんちょんとエプロンを引っ張った。
「あたしはぎゅぅしてくれてもいいよ?」
「まあ!ありがとうございます!それでは、サリアさんに女神様の祝福がありますように……」
「あったかい」
セレナさんとサリアは満足そうに抱擁を交わした。
「それでは僕も……」
「カイ君はダメですからね!」
やっぱりそうなります?
少しショックな気持ちのまま、俺はセレナさんに手を差し出した。
するとセレナさんはその手を両手で優しく包み込んでくれる。
「カイさんに、女神様の祝福がありますように……」
手に感じる温もり、少し上目遣いでまっすぐに見つめられ、優しい微笑み。
こ、こんなのされたら……好きになっちゃう!
「セレナさん……」
「はい?」
「ご結婚はされていますか?」
「貴様は!」
「なにを」
「聞いているんですか!」
「バカ!」
信じられませんね。
セレナさんを除く女性陣に怒鳴られてしまう。
そこまで言わんでもええやん……
「うふふ、残念ですが未婚です」
だが、セレナさんは気を悪くする様子もなく答えてくれた。
「シスターも答えなくていいんです!」
「クスクス……リーナもみなさんも大変ね?」
「わ、笑いごとじゃないんですからね!」
なにやら俺とルースを除いて盛り上がっているが、どういうことかよくわからない。
「……ルース、俺悪いことしてないよな?」
「うーん……あんまり褒められたことではないんじゃない?」
「そうやっていつもクールぶって!ルースだって本当は気になってたくせに!」
「ぼ、僕は違うよ!カイと一緒にしないでほしいな!」
「本性を隠すなよ!露わにしろ!ルースだってお姉さん……大好きじゃないか!?俺たちあんなに語り合っただろ!?」
「みんなの前で言わないでくれる!?そういうことは隠すものなの!」
「正直になれよ!なんでだよ!なんで素直になったらいけないんだよ!」
ゴンッ。
「おうふ」
恥ずかしいのでもう黙ってください。
ファーナの拳が俺の顎の中心を下から捉え、見事にクリーンヒットする。
それにより意識が一撃で刈り取られた。
ふらふら……ドスン。
そして俺の身体は先ほどまで座っていた椅子にどっしりと収まっていく。
「お見事」
「さすが」
「あ、あの……急に腕が出てきましたけど大丈夫なのですか?」
「シスター、ご心配なく。保護者のようなお方ですから」
「そ、そうですか……それならば良いのでしょう……か?」
「いいんですいいんです。さあ用意してくれたお茶を飲みましょう?僕、喉がカラカラです」
「そうですね。ルース君の言うとおりです。みなさんも座ってください」
俺の意識の外で楽しげな会話が聞こえてくる。
ファーナ……
はい?なんですか?
前にも言ったが、軽々と召喚主を殴るんじゃない。
仕えるものとして、主に恥を晒させるわけにはいきません。
ああ……楽しい冬休みの始まりがこんなのって、あんまりじゃないか……




