フェルンへようこそです!
「あっ!そろそろ着きそうですよ!」
馬車に揺られながらトランプをして過ごしていたとき、外の風景を見たリーナがそう口にした。
窓を開けて外を見てみたいが、他の乗客の人に迷惑がかかるので我慢する。
「それじゃそろそろ二人を起こすか」
「そうですね。サリアちゃん、着きますよ」
「クリス先輩。そろそろ起きてください」
リーナがサリアをフレアがクリス先輩を起こしにかかる。
「う……ううん……?」
「おはようサリアちゃん」
サリアは反応したがクリス先輩は一向に起きる気配がない。
すやすやと熟睡中である。
「クリス先輩!起きてください!」
その後もフレアは何度か揺らしたのだが、クリス先輩は起きない。
そうしているうちに馬車乗り場に到着してしまった。
「どうする……?」
俺の問いにフレアが頭を抱えた。
「どうするも何もおぶっていくしかないだろう」
「そうだな。それじゃ俺が……」
「いや私がおぶる。カイはクリス先輩と私の荷物を頼む」
「それはいいけど、こういうのって男の役目じゃないの?」
「下心丸出しの貴様任せられるか」
「……ちぇ」
じぃぃぃ。
全員の視線が痛い。
ルースまでそこまで冷たくしないでもいいじゃん……
合法的にお尻を触り、背中に胸の感触を味わえると思ったのにな。
まったく、マスターはもう少し紳士らしくあるべきだと思いますね。
ある意味で最も紳士らしくあると思うんだけどな。
はいはい。自分の荷物とクリスさんフレアさんの荷物持ってください。
俺はブツブツと文句を言いつつ、自分のを合わせて三人の荷物を持って馬車から降りた。
すると真っ白な雪が辺りを白く染めている景色が目に入ってきた。
「うぅ!寒い!」
だが、綺麗という言葉よりも寒さの方がダイレクトに身に染みる。
「ようこそ!フェルンへ!私の家にご案内しますね!」
そのような中でもリーナは元気で先頭を歩いていく。
「この寒い中元気だな」
「ふふふ、そうだな」
「うん。久しぶりに帰れて嬉しいんだよ」
「リーナが楽しそうであたしも嬉しい」
「すやすや……」
俺たちは先頭を歩くリーナのについて行きながら街を歩く。
どこの家にも煙突があり、そこからモクモクと煙が上がっているのが目新しく思えた。
王都は冷暖房の魔法具が普及していたし、俺の家には暖炉はなくストーブを使っていたからな。
「おっリーナちゃんじゃないか。帰ってきたのかい?」
「ええ、冬休みの間だけですが帰ってきました」
商店街に差し掛かると、肉屋のおばさんが声をかけてきた。
「そうかいそうかい!シスターが寂しがっていたからよかった!あと肉の切れ端を持っておいき!」
「ありがとうございます!」
「おおリーナちゃんじゃないか!お帰り!よかったら形の悪い野菜を持っていって!」
その後も八百屋のおじさんにも声をかけられると野菜を持たされ、
「魚のあらだけど煮込めばいいスープになるよ!」
魚屋のおじさんにもいろいろと持たされた。
おかげでリーナだけでは持ちきれず、サリアとルースも手伝っている。
「それにしてもどこもリーナの顔を知っているんだな?」
「ええ、いろいろと働かせてもらいましたから」
そうか。孤児院の運営費を稼ぐ為にやっていたのか。
「きっと真面目に働いたから、リーナは愛されてるんだろうな」
隣を歩くリーナに声をかけると、リーナは嬉しそうに笑った。
「うふふ。少し気恥ずかしいですが、こうしてお帰りと言ってくれて幸せな限りです」
白い息に少し赤く染まるリーナの頬。
なんだか、いつもよりもリーナが可愛く思えてきた。
「カイ君?どうしました?」
「い、いや、なんでもないよ……」
「そうですか?」
覗き込まれるような上目遣いにさらにドキドキさせられる。
無意識でやられたらたまったものじゃないな……
「と、ところで孤児院はどこにあるんだ?」
「ごめんなさい、もう少しかかります。街外れの方にありますので……」
「そ、そっか。聞いてみただけだから気にしないで」
「ありがとうございます」
「……なにやら二人だけで楽しそうだな?」
「うわっ!いきなり後ろから声をかけないでくれ!」
「こっちは背中にぷにゅぷにゅとしたものを感じ、手には引き締まった感触を味わされて女としての敗北感に満ちあふれているというのに……」
振り返ってみると、フレアが悔しそうな表情を全面に押し出している。
「そ、そんなに凄いのか?」
「ふん。誰が教えてやるものか」
クリス先輩の身体の感触……俺も味わってみたい……
そんなことを思っていると、腰に鋭い痛みが走った。
「いてっ!えっ?リーナ?」
痛みの正体はリーナの手だった。
「えっちなことを考えているカイ君にはお仕置きです」
ぷくっと頬を膨らますリーナ。
これには俺も頬が緩むしかなかった。
「いだぁ!?」
すると今度はケツに激痛が走った。
「カイにお仕置き。二人分」
「よくやったサリア」
手をブイの字にするサリアはどこか誇らしげにしている。
「もう少し手加減してくれないかな!?」
俺の言葉に全員が笑うと、
「ううん……?」
クリス先輩が起きようとするのだった。




