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帰りの時間です!

クリス先輩の試合後も三年生の試合は続き、改心したチンピラ先輩の試合が行われた。

意外にも頑張っていたのだが、改心したチンピラ先輩は接戦の末、敗北してしまう。

その結果、改心したチンピラ先輩以外は勝利するというものになった。


そろそろその呼び方はやめてあげませんか?

試合を観ましたが、一生懸命試合をされていましたよ?


むぅ……確かにクリス先輩を愚弄していたときとは違うことは認めよう……


ならばもう許してあげませんか?


……一つ聞いていいか?


何でしょう?


あの先輩の名前なんだっけ?


……チョ、チョコルン?


絶対に違う。


仕方ない。

今度会う時があったら改めて聞くとするか。

改心したチンピラ先輩の本名を……


チョコルン……可愛いと思うのですが……


可愛いとかそういう問題ではない。


「皆さん、長時間の観戦お疲れ様でした。これからは一般の方の退場が済んだのちに我々の退場となります。それまでもうしばらくお待ちください」


ルナ先生が立ち上がり、俺たちの方へ振り返るとこれからのことを説明してくれた。

これだけの人数が一斉に帰るとなると、入り口で渋滞が起こり混乱してしまうからな。

ルースたちとおしゃべりして過ごすとしよう。


そうして会場内の人数がドンドン少なくなっていく中、俺はおじいさんのことを思い出した。

もう一度会えたらいいのだが、あいにく名前も住所も聞いていない。

少しは力になれただろうか?


きっと力になれたと思いますよ。


……ああ、そうだといいな。


ファーナの優しさに甘えていると、


「私たちの順番が来たようです。皆さん、二列に並んで出口に向かいますよ」


闘技場を去る時間が来たようだ。


カツッ、カツッ……


俺たちが歩いていると足音だけが響いていく。

すっかりと静かになった通路は祭りの後の静けさのようで、何とも言えない寂しさを感じてしまう。

朝通ってきた道をそのまま戻っていき、外へと出るとすっかりと日が沈んでいた。

それでも魔力灯の照らす光で周辺は明るく、おかげですんなりと歩けている。


「しかしさすが王都、こんなに魔力灯があるなんてな。ルードリアじゃ見られない景色だ」


「まだまだできたばかりで地方には行き渡ってないからね。でもそのうち全土に広がっていくと思うよ」


俺の身長よりも高い鉄柱の上部には加工された鉱石が収納されており、それが周囲の魔素を取り込むことで光を発するらしい。


「こう幻想的な光が並んでいると、なんだか別の世界みたいだと思わないか?」


少し雰囲気に酔った俺は恥ずかしいことを平気で言ってしまった。


「あははは、カイはロマンティックだね?」


「……なんだよ、ルースもちょっとは付き合えよな……」


「いまカイと言ったかの?」


周囲にちらほらと人がいる中でそんな声が聞こえてくる。

その声には聞き覚えがあった。


「おお!カイ君じゃ!やっと見つけたぞ!」


「おじいちゃん本当!?」


二つの人影が俺の方へと向かってくる。


「おじいさんじゃないですか!」


「お知り合いですか?」


先頭を歩いていたルナ先生が足を止め、俺に事情を聞いてきた。


「はい、昨日公園でお会いしたんです。少し話をさせてもらってもいいですか?」


「ええ、少しの間ならいいですよ。どうやらわざわざ待っていてくれたようですし」


「近くで見るととびきりの美人さんじゃのう!そんな先生を押し倒すとはやるではないか、このこのぉ」


「み、見てたんですか?」


開会式でのハプニングを見られていたようだ……


「それはもう忘れてください!」


ルナ先生も大きな声でお怒りになってしまう。


「おじいちゃん!お時間もらってるんだから悪いでしょ!えっと、君がカイ君かな?」


「あっ、はい」


えっ?この人がおじいさんのお孫さん?

まったく似てなくて信じられんが、可愛いお姉さんだなぁ……

それにどっかのお姫様と違って優しそうだし。


マスター?それは誰のことですか?


ははは、誰だろうねぇ?


むぅぅぅ!


そうやってファーナをからかっていると、


「ありがとう!君のおかげでウエディングドレス着れそうなの!」


「ほえっ!?」


ぎゅぅぅぅ!


いきなり抱きしめられた。


「「「ウエディングドレス!?」」」


クラスメイトがざわめき立ち、フレアたちは俺の周囲を取り囲んだ。


「ど、どういうことだ!?」


「お姉さんは誰なんですか!?」


「結婚するのは断固として認めない」


「こっちだって聞きたいんだが!?」


まったくもって状況が分からん。


「ほれ、お主も少しは落ち着かんか」


「あっごめんね?つい興奮して抱き着いちゃった。私はシルヴィ、よろしくね」


そう言ってシルヴィさんはいたずらっぽく笑った。


「カァァァイ……」


「どういうことか……」


「説明求む……」


そして俺の背後からは、いたずらでは済まされないような殺気を感じるのだった……

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