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ルナ先生が激怒です!

「これならどうですか!?」


グリフィンの巻き起こす風に自身の魔法である十数本の炎の矢を乗せて放つ。


「おっと」


高速で押し寄せてくる炎の雨だが、クリス先輩が騎乗しているユニコーンが前方へ駆け出すことで回避した。


グルォォォ!


しかし、回避した場所の上空にはワイバーンが待ち構えており、炎のブレスがクリス先輩とユニコーンを包み込んでいく。


直撃だ。


「あぁ!?」


俺を含めて会場内に悲鳴が巻き起ころうとしたが、


ダッダッダッダッダッ!


うっすらと光る障壁を纏ったクリス先輩たちが炎の中を突っ切って姿を現すと、悲鳴の代わりに歓声が巻き起こる。


「ふぅ……ありがとう、助かったよ。ユニユニ」


ヒヒィーン!


クリス先輩がユニコーンの首筋を撫でると、嬉しそうにいなないた。


「直撃かと思われましたが、クリス選手、ユニコーンともに無事のようです!あの激しい炎の中で何があったのでしょう!?」


「おそらくはユニコーンによる防御スキルですね。直撃する前に展開していたのでしょう。それによってブレスを防ぎ、駆け抜けたと思われます」


「ですが、ユニコーンは確かCランクですよね?Aランクのワイバーンのブレスを無傷で防げるものなのですか?」


「召喚時のままだと不可能です。しかし人が成長するように、召喚獣も闘いや日々の訓練の中で成長していきます。そして低ランクの召喚獣は高ランクの召喚獣よりもその成長が早い傾向があると、最新の研究で証明されたようです。ですのでクリス選手、彼女のユニコーンはAランク以上に相当すると言えますね」


「なるほど!成長ですか!ならば今大会における最低ランクであるカイ選手のリビングメイルもそのたぐいと言えるでしょうか!?」


おっ、俺の話題じゃないか。

なんだか恥ずかしいな。


戦闘が一旦落ち着くと、話の流れから俺の話題になった。


違います。

私のことを言っているのです。


……どっちでもいいじゃない。


俺はそう思いながら、ヴィオラさんの言葉を待った。

しかし、


「……」


「ヴィオラさん?」


なかなか口にしないでいる。


「……ああ、失礼いたしました。彼のリビングメイルは成長というよりも元から持っていたもののような気がしますね。そう……まるで生前の記憶を取り戻したかのような……」


ぎくぅっ!?


俺はヴィオラさんの言葉を聞いて、背筋が硬直した。


初見でそこまで見破りますか!?


あ、あ、あ、慌てすぎですよ!?もしかしたらルース君が手紙でお伝えしたかもしれませんし!


ファ、ファーナだって動揺しているじゃないか!

だけどその考えは会っているかも!


「ルース、おじいさんに手紙か何かで伝えたりした?」


「つ、伝えてないよ?だから僕もびっくりしたよ……」


ルースの驚く表情には嘘はない。

それにヴィオラさんも断定ではなく、思考の末の発言のようだった。


「不思議なお話ですが、どうしてそう思われたのですか?」


「動きです。カイ君のリビングメイルは一年生にしては珍しく命令型ではなく、自律型として戦闘を行っています。そのため召喚獣自身の動きが色濃く出るのですが、その動きの完成度は全てを忘れ、生前の無念の気持ちだけで動いているリビングメイルとは思えませんでした」


「とするとリビングメイルの無念が何かのきっかけで晴れ、生前の記憶を取り戻したと?」


「ははは、そんなおとぎ話のようなお話があれば楽しいとは思いませんか?」


「そうですね!私もそう思います!」


「実際の話をすると、カイ君のリビングメイルは記憶無くしたとしても、騎士としての動きは忘れてはいなかった。まさに武人と言える存在だと私は考えています。私も武を志すものとして称賛せずにはいられません」


うぅ……なんという心温まる言葉でしょう……


良かったな、ファーナ。


はい、嬉しい限りです……


死してなお後世の人に讃えられる。

一つの道を志したものとして、これほど嬉しい話はないだろう。


「さて少し話がそれましたが、戦況は相変わらずの膠着状態になっていますね」


「ええ、距離を詰めようとするクリス選手に対し、ラインドル君は攻撃を加えることで近づけさせません。早期決着は難しくなりますね」


ケンタウロスを失った対戦相手は、上空からの遠距離攻撃のみに集中するようだ。

だが、このような闘い方ではケンタウロスを失ったことの巻き返しができなさそうだが?


「勝つつもりがないのか……?」


「恐らくそうでしょうね」


俺の呟きにルナ先生が答えた。


「えっ?どういうことです?」


「時間いっぱい使うことでクリスさんの魔力と体力を削り、翌日にまで疲労を残させようという魂胆が透けて見えます。勝てるようなら勝て、それが無理なら削れるだけ削れ。そういったことを指示されたのではないでしょうか」


「そ、そのような不謹慎なことが許されるのですか!?」


「はい!ズルいです!」


「正々堂々じゃないのはダメ」


ルナ先生の考えが正しいと思ったのだろう。

フレアが憤慨し、リーナとサリアもそれに続く。

おかげで俺の言うことがなくなった。


「団体戦であれば十分に戦略ですが、個人戦では無意味です。しかしアルグランド学園、特に教師陣はどうしてもクリスさんに勝たせたくないのでしょう。そのため彼らにとっては団体戦だという考えがあるのだと思います。それに考えがどうあれ、懸命に闘うことをルール違反だとは言えません」


「それはそうですが……」


フレアはなおも食い下がろうとする。


「ですが……一生徒にそのようなことをさせるとは、許し難い愚行ですね……」


ゴゴゴゴゴゴゴ……


「「「ひぃっ!?」」」


あまりの怒気を発するルナ先生に俺たちを含め、他の先生たちも恐怖してしまう。


「いずれ、生徒をないがしろにした愚行の代償を払っていただきます。教師としての命でね?うふふ……」


俺たちは改めて思った。

ルナ先生だけは、本気で怒らせてはならない……と。

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