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聖女の闘いを観察します!

「なるほどなぁ……」


試合が終わり選手席へと戻る。

そして、他の生徒の闘いを見ていると今までとは違う見方をしている自分に気づく。

闘いを経験する前と後では見るべきポイントが変化しているように感じていた。

一つ一つの動作を細かく観察していき、動きの予測を立てながら思考が進む。

ただ絵を見ている感覚から、筆づかいや色の対比といったものまでじっくりと見る。

そういった感じだ。


なにごとも経験は大事だなとしみじみ思う。

これほどまでに感じ方が変わるなんて想像もしなかった。

俺は大きく息を吸い、吐き出す。

そうして興奮に高鳴る胸を落ち着かせ、見学へと意識を集中させた。


ついにリーナの試合が始まる。

しっかりと動きを見ていこう。

リーナはローブと杖を装備しており相手も同様だ。


「試合開始!」


お互いが召喚獣を呼び出す。

リーナのキリンがいななきとともにその勇ましい姿を顕現させていく。

対する相手の召喚獣はコカトリスだ。

鳥のような頭にヘビの尻尾を持つ魔獣タイプの召喚獣。

石化のブレスや鋭いくちばし、毒が強力でランクはB。

ただBランクではあるが、Aランクに近いと言われている。

Sランクのキリンだとしても油断ならない相手になるだろう。


お互いの召喚獣は間合いを測るようにゆっくりと近づいていく。

リーナも慎重に相手の動きを見ている。


「コカトリス!ブレスだ!」


先に動いたのは対戦相手だった。


シャァァァ!


コカトリスはキリンへと白い霧状のブレスを放つ。

キリンの状態異常の耐性は高いと言われているが、まともに食らってしまうと石化の効果は十分にあるだろう。


どうしのぐか。

俺はそう思いながら、リーナの動きを観察する。


「神よ、守護を……!」


キーワードを唱えると、キリンは光の障壁に包まれる。

コカトリスのブレスは障壁によって遮られ、キリンに触れることなく消えていった。


「そのまま突撃してください!」


勇ましい声とともに手を前へと差し出した。


フルルル!


歌うようないななきを上げてキリンは突進を開始する。


「ほ、炎の矢!炎の矢!」


それを妨害するように炎の矢が連続で放たれ、キリンを襲う。


キィン!

魔力と魔力がぶつかる音が闘技場に響いた。

しかし、キリンは何事もなかったように突進をやめない。


「俺の魔法が!?」


どうやら命中する前に何かにぶつかったようで、矢ははじけて消滅してしまった。

キリンのスキルかリーナの魔法かは分からないが、厄介な防御性だ。


「近づいてくる敵を撃退しろ!」


大きな嘴がキリンを突き刺そうとするが、逆に突進したキリンの頭の角がコカトリスの胸に突き刺さる。


ギャァァァ!?


傷口から血のように魔力の粒子がこぼれていく。


「雷撃です!」


キリンが雷を纏ったように光り輝くと、コカトリスの体から蒸気が噴き出る。

体内に電撃を流したようだ。


え、えげつない……


全く動かなくなったコカトリスは、やがてサラサラと消滅していった。


「ギブアップです……」


前衛がいなくなればどうしようもないからな。

特に魔法系は辛い。

いくら砲台が強くても撃てなければその真価を発揮できないということだ。


「勝者!リーナさん!」


順当に本命が勝ち上がったな。

キリンの素早い動きには十分に注意しないといけない。

それにリーナの防御魔法も硬く攻略は困難になりそうだ。


リーナ達の動きを見てどうだった?


そうですね。キリンとの一対一なら抑えることは可能ですが、彼女の魔法が援護に入ると厳しいものになりそうです。


なら今回は俺が動いてリーナの意識をこちらに集中させようと思う。

ただ、キリンが俺に向かって突進してくると一瞬で吹き飛ばされるから絶対に抑えてくれよ!


それは少し見てみたい気もしますね。


……結界があるとはいえ、骨が折れそうなんですが?


冗談です。マスターには近づかせませんよ。


ホントにお願いします……


「勝者!フィル君」


リーナ戦の作戦を練っている間に、次の俺の対戦相手が決まった。

フィルの召喚獣はドラゴンだ。

Sランクの三人を除けば同じ一年の中でもっとも強い。


さあどう闘うか?

ドラゴンの攻撃パターンはそんなに多くない。

噛みつき、爪、尻尾、ブレスといったところか。

ただダメージ量は凄まじいので十分に警戒する必要がある。

唯一、救いがあるとすれば翼のないタイプなので同じドラゴン属でも下位に属する方だということ。

空を飛ぶことを警戒する必要がないのはありがたい。


先ほどの闘い方を見たところ、勝因は召喚獣の力で押しきり勝ちだ。

ドラゴンを突撃させ、相手の召喚獣をねじ伏せたところでギブアップの宣言がされた。

フィル自身は何もしていないのでどういう援護をするのかは分からないが、杖とローブの装備だったのでおそらくは攻性魔法での援護だと思う。

ならば今回はこういくか。


ファーナに作戦を伝えた頃に、


「勝者、リーナさん!」


予想通りにリーナの勝利で試合が決着した。

次は俺の番だな。


「ではカイ君とフィル君、前へ!」


中央に行き所定の位置につく。


「試合開始!」


お互いが召喚獣を呼び出す。

ドラゴンが出現すると同時に命令が出された。


「いけ!リビングメイルを抑えろ!」


やはりそうきたか。

ファーナの倍以上あるドラゴンとの体格差を考えたら、正面からぶつかってくるのは明白だった。

俺はファーナに足止めを任せて、詠唱に入る。

発動時のイメージを構築し、キーワードを唱えた。


「氷結の柵」


何も起こらない。

しかしリングの中央にドラゴンが差し掛かった。

その瞬間に再びキーワードを唱える。


「発動」


四足で突進してきたドラゴンの前足が一瞬で凍り付く。

急激に前足が止まってしまったため体勢を崩し、顔から石畳に突っ込んだ。

サリア戦で観た氷牢をパクっ……オマージュした魔法だ。

複数の氷の矢を撃ちだす詠唱を柵のように組み合わせ、遅延効果もつけた。

そうしてできたのが、いきなりドラゴンの足元に出現させて転ばせるという魔法だ!


なんだかせこいですね。


あぁ!?そんなこと言っちゃう!?これでも結構難しいんだからな!


軽口を言っている間に、ファーナは転んだドラゴンの頭に光の剣を突き刺し、


ギュォォォン!


あっけなく消滅させる。

そしてその勢いのまま、フィルへと向かう。


「なんで俺のドラゴンがあんなに簡単に!?くそっ!」


戸惑いながらも、なんとか俺を戦闘不能にしようと炎の矢が飛んでくるが、遠距離からの直線的な魔法を避けるのはそこまで難しいものじゃない。


「せいやっ!」


襲いかかる炎の矢を俺が華麗に逃げ回っている間に、ファーナがフィルの至近距離まで近づき、剣を突き付けた。


「ギブアップ……」


「試合終了!勝者、カイ君!」


ふぅ……なんとかなったな。

お疲れファーナ。


マスターもお疲れさまです。

華麗に避けていらっしゃったようですね?

うひょう!?とう!ヤバッ!?などといった勇ましい掛け声が聞こえてまいりましたよ。


……俺だって頑張ったのに。


ふふふ、冗談はさておき、次は全力で闘う必要がありますね。


なんだか嬉しそうだな。


騎士は守ることが最大の誇りですが、強い相手と闘うことも誉れでありますので。


そうか、次は今までより強敵だ。

……俺を守ってくれ、ファーナ。


はい、全力でマスターをお守りします。


頼りになる騎士の心強い言葉をもらい、暫しの休息となった。

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