王都到着です!
肌寒くなってきた毎日をひたすら訓練で過ごしているうちに、いよいよ王都へと旅立つ日となった。
馬車乗り場には俺たち一年生が勢揃いというわけだが、早朝のためみんな眠そうだ。
ちなみにクリス先輩たち上級生はすでに出発している。
一学年で二つの大きい馬車で王都へ向かうため、三学年分の六台が固まっていくのは通行の妨げになるので、一時間ずつずらして出発するとのことだ。
ふぁぁぁ……クリス先輩は起きられたのかな……
そんな心配をしてしまう。
「クラス全員の確認が終わりましたのでこれより出発いたします。あまり騒がず、静かに過ごすようにお願いいたしますね」
貸し切りの馬車で乗客は俺たち生徒とルナ先生だけだ。
ガレフ先生とサフィール先生は後ろの馬車に搭乗している。
そうして時間になり学園を出発した馬車は、ガラガラ……と静かに進んでいく。
馬車内が騒がしくなるはずがない。
すやぁ……
横を見ても前を見ても眠っているというありさまだからだ。
王都に行くのを楽しみにしていたほとんどのクラスメイトたちは、昨夜なかなか寝付けなかった。
もちろん俺もである。
クッションの効いた席で身体を揺らしながら、俺も眠りにつく。
絵でしか見たことのない王都を夢見て。
さすが王都へと続く道のりだ。
何もトラブルがなく、整備された道はゆりかごのように俺たちを優しく揺らしながら進んでいく。
次に目覚めたときは、王都まであと少しという場所まで来ていた。
「うぅん……」
「あっ、カイ起きた?窓の外を見てみてよ」
隣に座っているルースが窓の外を指差した。
「うぉぉぉ……」
外一面は、太陽に照らされ黄金色に輝く稲穂だ。
その美しさには感嘆の声しかでてこない。
「さすが王都の食料を支える穀倉地帯だね。秋は黄金の道と言うらしいけど、その通りだと思わない?」
「ホントだなぁ……」
郊外では小麦が主食だが、王都では米もよく食べられているらしい。
しかし、あいにく俺は田舎育ちのため食べたことがない。
この滞在中に食べられるといいな。
そうして外の景色を堪能しているうちに、他のクラスメイト達も起き始める。
すると一気に馬車内はにぎやかになった。
その後、騒がしい車内で過ごすしていくと、
「そろそろ到着しますので、みなさんちゃんと席についてくださいね」
ルナ先生の言葉を聞いて、俺は窓の外を見る。
「おお!すごいな!」
見たことがないほどの数の馬車が王都に向かったり、離れていったりしている。
故郷や学園のあるルードリアとは段違いの交通量だ。
俺たちの馬車もその中の一つとして、王都へと走っていく。
「みなさん、長旅お疲れ様でした。これから宿泊先に向かいます。荷物もすでにそちらに到着しているはずです」
クラス全員の荷物となるとそれだけでもかなりの重量だ。
そのため先に全員の荷物をまとめて送っていた。
おかげで手ぶらで宿に向かえるので楽できるわけだ。
俺は馬車から降りると、周囲を見渡した。
「お、おぉ……」
あちこちに馬車や人の動きがあり、圧倒される。
下手したらすぐに迷子になりそうだ……
これはすごいですねぇ……
ファーナも初めてか?
ええ、これほど人の動きがあるのを見たことがありません。
あまりの多さにほへぇ……ときょろきょろとしていると、
「カ、カイ……あんまりきょろきょろしてたら恥ずかしいよ……」
ルースが恥ずかしそうに俺の制服を引っ張った。
どうやら周囲の人たちからクスクスと笑われているようだ。
「ふん、何を恥ずかしがる必要がある。俺は新鮮な体験をしているだけだ」
そうですとも!
周囲の視線など自信を持ってはねのければいいのです!
「あはは……カイは強いなぁ……」
「ルースも代表なんだから堂々としようぜ。そして二人で活躍して喝采してもらおうじゃないか!多くの人にな!」
俺はルースの肩を抱き、空いた手を空に突き上げた。
「うん!」
「ふふふ、相変わらず単純だが……」
「それでこそカイ君ですね!」
「二人とも応援してるよ」
見てろよ!王都の人たち!
俺は王都に向かって一歩を踏み出した。
「カイ君、向かう場所はそちらではありませんよ?」
「あ、あはは、そうでしたか……」
ルナ先生の注意でクラスメイトたちに笑われてしまう。
ほらほら、堂々としてくださいよ。
いや、これは恥ずかしいだろう……
何はともあれ、無事に王都へ到着した俺たちだった。