負けられない闘いです!
ルース戦が終わった後の週明けの登校日。
いつも通りルナ先生が教壇に立つ。
「王都セイリードにて開催される学生グランプリですが、このクラスの代表はカイ君とルース君に決まりました。ただ応援として皆さんも王都に行けますので、楽しみにしておいてくださいね」
王都に行けるのはてっきり俺とルースだけかと思ったが、クラス全員で行けるようだ。
そのことを知ったおかげでみんな嬉しそうな笑顔を浮かべている。
「さて、それでは日程ですが四泊五日を予定しております。学園を出発し到着すると初日は開会式です。そして翌日に第一戦が行われ、その翌日に第二戦、さらに翌日に第三戦、そして最終日に決勝戦となり閉会式を迎えて終了となります。各学年の優勝校には褒賞金をいただけますので、是非とも頑張ってください」
ルナ先生が一通りの説明を終えると、優しい笑みを浮かべていた表情が冷笑へと変わっていく。
「そして対戦相手となる学園についてですが、この学園だけは覚えておきなさい……」
カッカッカッ!
黒板にチョークで大きく名前を書き記した。
そこには、
「アルグランド学園?」
そう書かれていた。
「そうです。アルグランド学園とは王都に存在する学園で、その創立は六学園の中で一番古いものです。実力においても一番であり最高峰の学園とも言えますが……教師も生徒も無駄にプライドが高いのです!」
ダンッ!
ルナ先生が思いっきり教壇を叩く。
めちゃくちゃ怒ってるやん……
一体何があったんだ?
「クリスさんが一年生のとき圧倒的強さで優勝を果たすと、ぶつぶつぶつぶつ延々と負け惜しみを言ってくるんですよ!?そのくせ負けるのが嫌なのか去年は体調不良だとか言って突然の棄権です!そしてクリスさんが優勝すると私の生徒が体調不良でよかったですねぇ……なんてニマニマしてくる始末です!ああ!今思い出しても腹正しい!」
なるほど。
それは怒ってもいい。
「ですので!カイ君とルース君!アルグランド学園の生徒にはぜぇぇぇぇったい負けないでくださいね!むしろ優勝してください!わかりましたね……?」
綺麗な表情で微笑むルナ先生だが、冷たいものを感じてならない。
「……も、もちろん全力では頑張りますけど」
「優勝できるかまでは……」
勇気を出して発したであろうルースの言葉に俺が続いたのだが、
「わかりましたね?」
「「わかりました!!」」
再度念を押された微笑みによって、俺たちは勢いよく返事をしてしまった。
「ふふふ、よい返事です。期待していますからね……カイ君、ルース君?」
ルナ先生はそう言った後、ふふふ……と不気味に笑いながら教室を出て行く。
「ははは、とんだ約束をさせられてしまったな」
「笑い事じゃないって……」
フレアの笑顔の言葉に俺は頭を抱えて返事をする。
「ルース君も頑張ってくださいね!」
「じ、自信ないなぁ……」
「もし負けたらルナ先生からおしおきされるよ」
びくぅ!
サリアの呟きに俺とルースの身体が震える。
ルナ先生のおしおき。
その魅力的な言葉の意味は、とんでもない地獄である。
「もう……カイ君はダメなんですから……」
「はぁはぁ……ル、ルナ先生……もう無理です……」
「うふふ……もっと頑張れるでしょう?」
「そ、そんなに激しくされると……俺は!うっ……」
「まだ力尽きてはダメですよ?男の子なんですから」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
こんな調子で炎の矢の的にされるのだ。
それも木の杭にくくられて身動き出来ない状態で。
もちろん魔力壁で防ぐのだが、何発も直撃を喰らうと身体が炎であぶられるように熱い。
氷姫の炎獄と言われるこのおしおきは、男子にとっては恐怖の象徴である。
マスターたち男子生徒が規則をよく破るからでしょう?
フレアさんたちのように真面目にしていたらおしおきされないのですよ?
ちょっとえっちな本を買ったりしただけじゃないか!
それがダメなんです。
しかしこうなったら優勝するしかない!
「ルース!特訓だ!」
「うん!やろう!」
俺とルースはグランプリ開催までの間、二人で訓練を重ねていく。
負けられない闘いは……もう目前なのだ。
ファーナさま!よろしくお願いいたします!
お任せください!マスター!
まあ結局はファーナ頼みなんだけどな。
召喚獣の力は俺の力だしぃ。
……なんだか腹が立ちますね。