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シンボルがなくなりました

秋風が心地よい週末の午後、いよいよ俺とルースの試合が始まりつつあった。

俺は闘技場の中央にてルースと握手を交わす。

互いの装備は制服のみ。

剣を持ってこようかとも思ったが、身軽な方がいいと判断した。


私のプリンセシオン……置いてけぼりばかりで申し訳ありません……


少し落ち込んでいるようだが、試合が始まれば実力を出し切ってくれるだろう。


「体調はもう大丈夫か?」


「もちろん。昨日はゆっくりと眠れたし絶好調だよ」


「なら遠慮は無しだな」


「えっ?カイが今まで遠慮したことあったっけ?」


冗談を言い合えるくらいに、お互い落ち着けているようだ。


ルース君は本気で言っているのでは?


……そんなはずはない。


「二人とも指定の位置へ」


少し不安になりつつも、ルナ先生の言葉に従い俺は石畳の上を歩いて行く。

そして指定位置へと到達し、振り返るとルースも同じく振り返った。


「試合開始!」


「いこうか、ファーナ」


かしこまりました。


「いくよリフィル!」


お互いに召喚獣を呼び出すと、俺の隣に白銀のリビングメイルであるファーナが、ルースの背後にグリフィンのリフィルが大きく翼を広げて召喚された。


「武装変化」


その声と同時にリフィルがルースの身体を翼で包み込んでいき、その姿を変えていく。

一瞬の輝きの後、白の双剣と鎧に身を包んだルースが立っていた。


さて、こちらもリンクするとしますか。


いよいよですか!胸躍りますね!


ファーナのテンションが高いのには訳があるのだが、その理由はすぐに分かるだろう。


「リンク……イル」


その言葉とともに、俺たちは一つになる。


俺はこれまでの試合を観て、考えていたことがあった。

それは少し言い方に難があるが、召喚獣の扱い方だ。

フレアとルースは変化、サリアは融合、リーナは吸収というように言い表せる。

だが、俺はというとファーナと重なっているだけだ。

力の引き出し方として明らかに劣っていると言えるだろう。


そこで俺は試行錯誤をした。

もっとファーナの力を引き出す方法はないのかと。

そうして思いついたのが、これだ。


「ふぅ……魔力での身体も悪くはありませんが、やはり生身だとひと味違いますね」


兜を外すと、ふさぁ……と長い金髪が風に流れていく。


「えっ……」


その素顔に驚きを隠せないルース。


「オ、オーレリアさまぁぁぁ!?」


特段驚いたであろうフレアの声が聞こえてきた。

それもそのはずだ。

俺の身体だったものは、ファーナの実体へと変化していたのだから。


リンクスタイル。


今までは鎧を重ねていたのみだが、今回は俺の身体ごとファーナへとリンクした。

サリアの融合に近いかもしれないが、身体の主導権は俺にはなくファーナに預けている。

しかし、感覚は共有しているので勝手に身体が動くという感じだ。

言うなれば、反転か。

表にいた俺が裏に回るというのが合っていると思う。

リンクメイルのときは身体の外側から無理やり動かされるものだったが、こちらの方がだいぶ楽に感じる。


ただ一つ難点があるとすれば、股間が落ち着かないこと。

何がとは言わないが、無いのだ。

男性諸君なら分かってくれると思うが、いつもあるものが無いことに物凄い違和感がある。


なんだか股間が頼りないなぁ……


何を言っているんですか。

こちらの方がスッキリしていていいでしょう?

マスターの身体の感覚を共有していたときに感じたのですが、あんなものぷらんぷらんとして邪魔でしかありません。


あんなもの呼ばわりしたな!?

男にとって神聖なるシンボルを!

しかも邪魔だとぉ!?


邪魔でしょう!?

ドッチボールをしていて股間に当たったときのあの猛烈な痛み!

即座に共有感覚をシャットダウンしましたから!


確かに最大の弱点だが、それが愛おしくもあるのだ!

ファーナもいきなり胸がなくなったら……


……なくなったら?


ははは、あんまり変わらないか。


変わりますよ!?

ちゃんとあるんですから!


ほら冗談ばかり言ってないで、ルースとの試合中だぞ。


冗談じゃありませんが!?

まったく!後で覚えておいてくださいよ!


「光よ!」


そう言うと目の前に光の剣が現れた。

それを掴んだファーナはルースへと駆け出していくのだった。


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