激しく移り変わる攻防です!
「フレアさんとルース君、前へ!」
今日はフレア対ルースの試合だ。
この試合の勝者と俺が闘うことになる。
二人の闘いをしっかりと見ておこう。
「サリアとの試合を見てからというもの、闘えるのを楽しみにしていたぞ」
「僕も真似させてもらったお礼をしたいと思っていたんだ」
「それなら、この試合の勝利で構わんぞ」
「それ以外でお願いしたいな」
制服姿の二人は笑顔で握手を交わす。
「二人とも指定の位置へお願いします」
そしてルナ先生からの指示が出ると、後ろを振り返ることなく歩いていく。
「試合、開始!」
「来い!フェザー!」
「リフィル!おいで!」
互いに召喚獣を呼び出すと、
「「武装変化!」」
同じ言葉を発した。
フェザーは炎の翼を広げ、リフィルも全く同じように翼を広げる。
そして自分の主の身体を優しく包んでいく。
紅の重装鎧を纏い、紅剣を手にしたフレア。
白の軽装鎧を纏い、白の双剣を手にしたルース。
二人の姿は似ているようで、相反する姿にも見える。
さあ、ここまでは予想通りだな。
お互いに得意の形ですからね。
二人がどう闘うのか、しっかりと見定めましょう。
「フレアさんとルース君、どちらが有利なのでしょうか?」
「わからない。カイは?」
隣に座るリーナとサリアが俺に視線を向けるが、あまり良い回答はできそうにない。
「いやぁ……まったく予測できないな」
なにせルースが接近戦でいくのか、それとも距離を取って闘うのかもわからない。
ただ、フレアと闘うのなら遠距離からの方が安全だとは思うが……
マスター、安全策は取らないようですよ。
ああ、正面から挑むようだな。
ルースは背中に翼を出現させると、地を這うような低空飛行でフレアへと向かっていった。
フレアも剣を構えて迎撃態勢に移る。
ギィィィン!
ルースの右の剣がフレアの剣に止められ、けたたましい金属音が闘技場に響いた。
だが、止められたのはルースにとって計算通りだったようだ。
ぶつかり合う剣を支点にし、左手の剣がフレアの後頭部へと狙いを定める。
「そこ!」
「甘いわ!」
対するフレアは両手で持っていた剣から右手を離すと、ルースの剣を籠手で防いだ。
そしてそのまま滑らせるようにルースの胸へと拳を繰り出す。
ガッ!
「うっ!?」
「手ごたえがない、防がれたか。だが隙ありだ!」
フレアの拳はルースの胸を捉えたかに見えたが、ルースの障壁が防ぐ。
しかし衝撃までは吸収できず、ルースの身体は後方へと吹き飛ばされていく。
バサァッ!
フレアは炎の翼を背中に出現させると、剣を上段に構え突進した。
二人の距離はグングンと近づいていき、フレアがルースを捉えると同時に剣を振り下ろす。
「危なっ!」
ルースは右足で地面を踏みしめると、大きく横へと方向転換を果たしフレアの斬撃を回避する。
ガァァァン!
先ほどまでルースがいた場所にフレアの剣が振り下ろされるが、石畳へとぶつかった。
ルースは態勢を整えるべく上空へと逃れるが、
「逃がさん!」
フレアも空へ追撃に向かう。
「追ってくると思ったよ」
しかし空中での機動力はルースの方が高いようだ。
速くはあるが直線的なフレアの動きを回避すると、背後を取った。
「くっ!?」
フレアはその場で反転しようと試みるが、間に合わない。
「せやぁ!」
ルースの双剣がフレアの炎の翼を斬り裂いた。
翼を失ったフレアの身体は地上へと落下していくが、
「なんのぉ!」
剣を地面に突き刺すことで、無事に着地を完了させる。
ここまでの一連の流れはあっという間の出来事だった。
地上でフレアが有利かと思えば、空中でルースが反撃。
攻防が一瞬で入れ替わっていく。
ぷはぁ……やっと一息つけるな。
まばたきするのももったいない攻防でしたからね。
「お互いに主導権を譲りませんね……」
「うん、奪い合ってる」
リーナとサリアも言葉を口にはしているが、視線は二人を離していない。
空からフレアの様子を窺うルースと、地面に突き刺さった剣を抜き構え直すフレア。
二人の闘いはまだ始まったばかりだ。