学ぶことは大事です!
パソコンが二回もフリーズしたせいで遅くなってしまいました。
バックアップ機能に気づかずに一回書き直したのもあって辛い執筆となりました……
サリアの爪をルースの鎧が受け止めているのを見た俺は、ある疑問を浮かべる。
それはフレアも同じだったようだ。
「なぜルースの鎧にあれほどの強度があるのだ?」
フレアの鎧もそうだが、ファーナの鎧もサリアの爪に削られてしまい、魔力を使って再生することがある。
だが、ルースの鎧には傷もついていない。
「ふふん、ルース君の鎧をよく見てください」
リーナがなぜか自慢げにルースを指さした。
サリアの激しい攻撃を双剣で防いでいるルースの鎧をよく見てみると、何やらうっすらと光っているように見える。
あの光には見覚えがあった。
「あれってリーナの防御魔法?」
「はい、そうです。私が教えました」
「でもどうして……あっ、そうか」
自分の得意なことをライバルに教えることは、塩を送るというよりも武器を渡すに等しい。
しかし、相手も同じように武器を渡してくるというのならそれは取引となる。
リーナがルースから召喚獣のスキルの習得するコツを教わるのに対して、リーナは自身の魔法を教えたのだろう。
「お察しの通り、私にもメリットがありましたのでルース君に魔法を教えさせていただきました。ですが実際に使えるようになるというのはすごいことです。私の魔法はみなさんとは少し違うものですから」
リーナが感心の言葉を言うのには訳がある。
一般的に使われている魔法とリーナの魔法は厳密には違うものだ。
分類的には魔術と神聖術という違いがあるが、一括りに魔法という言葉で表わしている。
どう違うかと言われると、詠唱する言語が違うと言えば分かりやすいだろうか。
習得するのが非常に難しいことで知られており、それでも習得しているのは聖職者か医療関係者ぐらいだろう。
神聖術には身体や精神を癒すものが多いので、その二つの職には必須となっている。
俺も一度、神聖術の本を見てみたのだが何を書いてあるのかさっぱりわからなかった。
「ルースのやつ、よく理解できたな……」
「いろいろと器用だとは思っていましたが、短い期間で神聖術まで覚えられるとは驚きでした」
「どれくらいで使えるようになったのだ?」
「一週間ほどだったでしょうか?私がシスターに教わってから使えるようになるまでに数年がかかったので、すっかり自信喪失です……」
フレアの問いに、落ち込み気味で答えるリーナ。
「そんなに落ち込むでない。学ぶ早さは人それぞれだからな」
「あ、ありがとうございます!フレアさん!」
フレアの言葉を聞いてリーナが嬉しそうに微笑む。
そんなほっこりとしたやり取りをしている間にも、試合は動き続けている。
ルースの双剣がサリアの爪を受け止めると、空いた手で攻撃を放つ。
だが、ルースの鋭い一撃がサリアの胴を捉えることはない。
サリアは後ろに跳んでかわしており、再びにらみ合う展開になった。
どちらにも決定打がない膠着状態となってしまっている。
「むっ、サリアが動くぞ」
フレアの言葉通り、サリアが今までとは比較にならないほどの手数でルースへと襲いかかっていく。
四方八方からの素早い爪や蹴りでの攻撃を、ルースは双剣で何とかしのいでいた。
サリアさんは覚悟を決めたようですね。
いかに強固な障壁といえど、限界はあります。
絶え間なくダメージを与え続けることで壊してしまおうという考えでしょう。
ああ、ルースも防ぎきれていないな。
圧倒的な手数で圧すサリアの爪が少しづつルースの鎧を削っていき、
「くっ!」
つぅ……
ルースの苦痛の声とともに頬から血が流れていき、石畳へと落ちていく。
ついにサリアの爪がルースの肉体に傷をつけた瞬間だった。
「やっと、届いた……」
ようやく手ごたえを感じたサリアが距離を取り、ふぅ……っと一息をついた瞬間。
ルースの頬の傷は既に塞がっていた。
「あいたたた……痛みはすぐには引かないんだよね……」
「えっ……?」
そのあまりにも早い傷の治りにサリアは驚き、思わず言葉がこぼれてしまったようだ。
「もしかして、回復魔法も……?」
「……いやぁ優秀な生徒ですよ、ルース君は」
リーナは嬉しいような悲しいような複雑な表情を浮かべる。
「回復魔法は人体についての知識がないとうまく発動しないのではないか?」
「そうなのですが、図書室で自然治癒の医学書を読むことで、人体がどういった働きで治癒するのかを学んだようです。そのため打撲や切り傷といった比較的軽傷ならば、すぐに回復できるようになりました」
ということは今のルースは強固な防御魔法を操り、その防御を突破して傷を負わせても軽傷ならすぐに治せ、攻撃方面では複数の属性の攻性魔法を繰り出し、なおかつ剣でも攻撃が可能という存在なのか。
……万能過ぎじゃね?
マスターがそう勧めたのではありませんでしたか?
何でもできるような召喚師になれと。
確かにそんなこと言った覚えはあるけど、まさか回復魔法まで使えるようになるとは思わなかったんだけど?
実際になっているのですから仕方ないではありませんか。
まったく、俺のライバルたちはすぐに成長するんだから困ったものだ……
そう言っているマスターの顔は嬉しそうですが?
ああ、負けたくない気持ちで俺も強くなれるからな。
ふふふ……良い心がけだと思います。
「ホントに強くなったね」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
サリアとルースはお互いに武器を構え、仕切り直しとなりそうだ。
どうやら試合はまだまだ続きそうである。