人の心の深い闇
「とりあえず。1つ1つの【呪い】を説明していくね。」
倉木は冷静に優しく語る。
「1つ1つ?」
千崎は倉木の顔を見る。
「そう。1つ1つ。まずは謝らせてね。遅くなってごめんね。色々と調べなきゃいけなかったんだ。君に何があったのか…。知っておかないと【呪い】が解けないからさ…。」
屋上に、射し込む夕日が1面を紅く染めている。
「初め。君の周りで奇妙な事が起こっただろ?机や下駄箱、色々な場所で私物が消えて、変わりに獣の残骸が残されていた。骨や牙、毛皮とかさ。ソレは君に【嫉妬】した人物の陰湿な虐めだった。いや、虐めに見せ掛けて【呪い】をかけようとしたんだよ。でもね…。君に【呪い】をかけた人物は、その時点で間違えているんだよ。だから君に【呪い】はかけられなかった…。ただし…。」
「ただし…。」
「【呪い】は物の見事に其奴に反った。」
倉木の瞳はー。
艶が消えていく。
「其奴は【呪い】として使用する筈だった【憑き物】に取り憑かれた。【犬神】【猫鬼】と呼ばれる【憑き物】にね…。人を呪わば穴二つ。」
【犬神】【猫鬼】その言葉にー。
千崎の身体がピクリと反応する。
「特に【犬神】に取り憑かれた其奴は、【嫉妬】深くなっていったんだ。そして、虐めはエスカレートしていった。階段や駅のホームから突き落としたり、君の頭上目掛けて植木鉢を落としたり、命に関わる様な危険な行為を始めた…。意識のブレーキが壊れた其奴は、歯止めが、効かなくなっていった…。」
夕闇に帳が絡み付いた。
「暫くすると君の父親が経営していた会社の業績は傾いていく。少しずつ少しずつ借金が増えて…生活は苦しくなった…。でもソレは【猫鬼】の所為では無かったんだよ…。そもそも時系列的には逆なんだ…。」
【猫鬼】
この言葉を聞くと千崎の身体はー。
ピクリと、反応した。
「確かに【猫鬼】は、人の財産を奪うと云い伝えられてはいるけれど、君の父親の会社については、全くの別の意図が働いていたんだよ。」
「別の意図?」
そう。別の意図ー。
倉木は言葉を紡ぐ。
「【嫉妬】に囚われた其奴が仕組んだ事だ…。」
夕闇は帳に呑まれてく。
「罪の意識すら制御できなくなった其奴は、親である義父にある条件を持ち掛け、願いを頼んだ…。その条件を飲み込んだ義父は、とある事を実行する。」
帳は夕闇に絡み、纏わり、蠢く。
「君の父親が経営する会社へ圧力をかける様に仕向けた。」
「えっ?」
千崎は呆然としている。
「銀行からの融資を受けられなり会社の経営は傾く。」
夕日が沈んでいく。斜陽だ…。




