その感情は…。
罪を犯したのなら償わなければならない…。
ガシッー。
飛び降り様としたー。
その時…。
千崎の腰に何かが巻き付いた。
ソレは誰かの腕だった。
千崎は、虚ろな瞳で、その主を追う。
放心している千崎の瞳にはー。
倉木の顔が映っていた。
「ダメだよ…。自ら命を棄てるのは愚かな事だよ…。だから…死んじゃダメだ…。生きなきゃダメなんだよ…。」
優しい声が鼓膜を刺激する。
倉木は瞳を覗き込みー。
「君の心に何があったのか…。話してくれる?」
と、そう訊きながらー。
千崎の視界を掌で覆った。
そしてー。
フッと息を吹き掛けて指を鳴らす…。
その音と共に…。
千崎の意識は沈んでいった。
深海よりも深い、深淵に意識は沈んでいく。
千崎は無意識にー。
今までにあった総ての記憶と感情を語っていた。
走馬灯の様に様々な感情が浮かびー。
千崎の心を刺激した。
パチン…。
千崎の聴覚に刺激が走った。
遠くで何か音が聴こえた。そんな感覚だけが残った。
意識が少しずつ少しずつ浮上する。
深い海からゆっくりと浮上する。
ゆっくりと水圧の変化に対応する様に…。
ゆっくりとゆっくりと浮上する。
あぁ。
海面へ光が射し込むのが解る。
キラキラと光が反射して幻想的な風景を魅せる。
千崎の瞳からは涙が零れていた。




