マーメイドは溺れていく。
それから、暫くして千崎は学校に来なくなった。
担任からは「千崎さんは病気の為、暫く自宅療養する事になっています。」とだけ告げられた。
倉木には考えている事があった。千崎が告げていた、胸の痛み、手足の痛み、肩の痙攣、そして動物の様な唸り声。その症状の総てが【犬神】【猫鬼】に憑かれてしまったモノの症状に重なっている。状況とタイミング的に考えても…【津坂那月】が絡んでいる事に違いは無いのだ。
だとしたら…。
津坂那月が【蠱毒】と云う呪法を行ったのだろうか…。
倉木は先日の千崎の言葉を思い返していた。
【少し訳があってね。まだ行ってないよ…。】
その言葉に違和感を感じた倉木はー。
千崎の事を調べる事にしたのだった。
千崎が休学して幾日か経つとー。
学園の中で、ある噂が流れた。
【千崎は【呪い】にかけられている。】
莫迦莫迦しい…と倉木は想う。
【呪い】とは確かに存在するモノなのだが、そう易々と実行出来るモノでは無い。正しい方法を正しい順序で行わないと、ソレは確実に失敗する。失敗したモノは術を行った者へと確実に返る。【人を呪わば穴二つ】その言葉の通りに…。人を呪うのならば相手と自分の墓穴を用意しなければならない。その覚悟の無い者にも、確実に其の術は返ってくるのだ。
そしてー。
莫迦莫迦しい…と倉木は想う。
その莫迦莫迦しい状況をー。
創り出してしまった自分を…。
だからー。
倉木は思う。
幕を上げたのが自分ならー。
幕を下ろすのも自分なのだろう…。と。




