千崎ユキ
「ねぇ。大丈夫?痩せてきたんじゃない?」
倉木は千崎に訊いた。
放課後の教室での会話である。
「うん。」
そう言った千崎は青白い顔をしていた。倉木の言った通り、千崎は、数ヶ月の間に見る見ると痩せてきていたのだった。思春期独特の【痩せたい】と云う願望の現れ等では無いのだろう。あからさまに異様な事に思える。いや…。異常なのだ。少しずつ少しずつ精気と云うモノが抜け落ちていくかの様な、そんな痩せ方だった。骨。肉。皮膚。で構成されている構造から、肉が消え失せてしまったかの様な感覚だった。
「病院には行ったの?原因は?」
倉木は千崎に、また訊いた。
「少し訳があってね。まだ行ってないよ…。原因は分からないんだ…。私、どうしちゃったのかな…。」
千崎は消え入りそうな声を発した。
「何か。おかしいと感じる事はある?どこかが痛むとか?」
「胸と手足が痛いかな…。たまに肩も痙攣する。あとね…。」
千崎は、そう言うと暫く沈黙をした。
「あと?」
倉木は優しく問う。
「声がね…。」
「声が?」
「笑わないで聞いてね…。倉木くんと私の秘密にしてね。」
「約束するよ。」
私。
私の声が…。
美しかった私の声が…。
「私の声がね…。動物が唸っているみたいになる時があるの…。」
と言った。




