高野良彦
「あのさ。昨日、誰かと会った?」
倉木は高野の家を訪れていた。
そしてー。
部屋に入るなり高野に詰め寄り、質問をしたのだった。
「あー。久しぶりに月ヶ岡公園に行ったんだよ。そうしたらさ…。あれ?なんだったっけ…。名前…。ほら…。中学校の頃のクラスにいた…。」
高野は興味の無い事は覚えてはいない。人非人なのだ。
「千崎か?」
倉木は食い気味に名前を出す。
「千崎?そんな名前だったかな?ほら。あれ…。日本人形みたいな女の子…。」
倉木の脳裏に津坂の顔が浮かぶ。
「津坂か?」
「そうそう。津坂…。で…。それがどうした?」
高野は悪気無く、そう返した。
そう。高野は人でなしなのだ。悪気があるのでは無い。
言いたい事を言い。したい事をするだけなのだ。
その事によって周りが、どうなろうと関係は無いのだ。
ただ、高野は高野なりに、本能の儘に生きているだけだ…。
「まさかとは思うんだけどさ…。お前が公園に行ったのには…。この前の【蠱毒】の話とは無関係だよな?」
「ん?【犬神】やら【猫鬼】の?」
高野はそう言ってからー。
「確かめたかったんだよ。」
と続けた。
「はい?あれだけ止めろと言ったのに?」
「だってさ。【蠱毒】が存在したのか。不確かだろう?だからさ、自分で確かめた方が良いと思ってさ…。ん?何か悪い事した?」
倉木は心底、呆れている。
「いや。だからさ。【蠱毒】は実在するんだ。そういうモノなんだよ。この世界に存在するシステムの1つなんだ。」
「ん?だってさ。今まで考察してきた都市伝説の殆どが、紛いモノだったろ?」
「紛いモノ?どうしてそうなった?都市伝説の話も、世界に存在するシステムの1つなんだよ…。存在するし、存在はしない。そういうモノだと何度も言ったろ?」
「曖昧なんだろ?だから確かめようとしてだな…。」
話が平行線の儘、続きはしない。
倉木は諦めたのか…。角度を変えて質問をした。
「【犬神】や【猫鬼】を試したのか?」
「いや。しなかったよ。忘れてたわ…。」
「忘れてた?」
「俺、犬や猫のアレルギーあったわ…。痒くなるわ、痛くなるわで止めた。」
倉木は其の言葉を聞いて少し安堵した。
でも倉木には、まだ気になる事があったのだった。
「津坂に何か話したのか?」
「ん?話したよ。【犬神】と【猫鬼】の創り方…。」
「嘘だろ…。」
倉木は眩暈に包まれた。




