櫻ちゃんの嫉妬と独占欲は止まらない(^q^)!
「櫻ちゃんは、どこが好きなの?」
「私を救ってくれたヒーローなの……」
うっとりと頬に手を当てる櫻ちゃん。
え? みたいな顔をする柚月君。
じゃあヒーローに迷惑かけんなよ とでも言いたげだ。
「そ、そう。じゃあ僕はこれで」
立ち去ろうとした僕の首元を、櫻嬢が掴む。
「柚月君を誘惑してただで済むわけないでしょ?」
いくらで済むんだ。
「7つ集めてごはんにのせればいいの?」
混乱した僕は思わず口に出していた。
「なにとぼけてんのよ? 土下座でしょう」
「友達くらい、居ても良いと思うけどな」
ぼそっと呟いたのが耳に入ったらしい。櫻ちゃんの目付きが変わった。
「柚月君に話しかけるやつなんかみんな敵! 柚月君には誰も近寄ってこられないの! しょうがないじゃない、私が守ってあげないと柚月君が、雌豚どもに誘惑されちゃうから!
だからっ、私が柚月君のモノってみんなに教えてるの」
櫻ちゃんには、柚月君の学校生活や他人と会話することを妨げる権利があるんだろうか……?
「今日だって、これ、くれたのよ」
ウフフ、と櫻ちゃんが僕があげた緑犬のキーホルダーを手元で揺らす。
い、いえない……
「私に、って~」
「よかったですね」
僕が目を逸らして居ると隣から彼が囁く。
「平気平気、個人で包装開けたみたいな感じで清潔だし」
そんな問題だろうか?
「ねえねえ、なんの話」
櫻ちゃんがじろりと僕だけを器用に睨み付ける。
「今日は、僕がでしゃばっちゃってごめんなさい」
「名前教えて」
「永藍、です」
「どんな字書くの? 機械みたいだね」
字の説明をすると櫻ちゃんはやけにいい笑顔を見せた。
「ありがとう」
――なぜ嫉妬で狂わない?
初めて会った人であれ、好きな人、に言葉を交わした相手なんて名前聞いていやだろうに。
……何か工作があるのか?
いくら個人で渡したとはいえ、緑の犬のキーホルダーを未だに柚月君からもらったと信じてなんのためらいもなく使ってる櫻ちゃんが。
彼が他者と平然と話しても嫉妬で狂わないのはなんだか不自然だった。名前を聞いた途端に向けたあの笑みは、なんだ?呆然としてたら、目の前で柚月君が吹っ飛んだ。
「……え」
「酷い! 嘘つき! 私愛してるのに! 柚月君はあんなやつがいいの!? 密会するつもり? ねぇねぇ私だけの柚月君でしょ!?
私だけなのおおおおっ!」
横を見たらすごい形相で睨む櫻嬢が居て、柚月君を投げ飛ばしていた。すぐに近くまで歩いていく。
「ごめんね、いたかった? ううん……私が悪いの。束縛したいわけじゃないの……私、だって、柚月君も友達ほしいよね? 私以外と話したからって、私」
必死になっている。
まさか、嫌われたくないから周りとの会話も許容することにした結果が今なのか……?
「いや、どうだろ……」
櫻嬢の手が力んでいる。 よく見たら安物本と呼んだ本の表紙毛糸で出来たマフラーを付けた知らない女性が映ってる
が、なんか執拗に握られてるのを僕は忘れられなかった。
「でも私はっ! 一番に愛してほしいの!」
櫻嬢……。