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「仮面舞踏会」  作者: 雨乃森
4/7

1-3「不穏な影」

どうも雨乃森です。

皆さん健康にはご注意ください。僕は原因明確な腹痛に悩まされています。


何とか帰って来た。想定外の客猫もいる。よく見れば整った毛並みに首輪と、迷子の子猫か?

「まぁ、いいか…ほれ、これでいいかなお客人?」

「ニャー」

一目散に牛乳に飛びつく子猫、俺もメロンパンと残りの牛乳を頂く。妙な晩飯だ。

お互い黙々と食べている。人と猫。絵になるんじゃないか?ただ、この子猫の方が身なりが

いいのが悔しいところだが。

「ニャー」

猫は見事に牛乳を平らげた。猫のことはよく分からないが、成長期か?

「ニャー」

すると猫は玄関に向かって爪をたてはじめた。

「ニャー」

「……出たいのか?」

「ニャー」

「帰れるのか?」

「ニャー」

「…そうか」

玄関を開けてやると、のんびりとした足取りでアパートから出ていった。

大丈夫だろうか。そう思ったがかなり賢そうだし、大丈夫だろ。

俺は夜の闇に消えていく猫を見送りアパートに戻ろうとした。

おかしな話だよな、アパートに戻ろうと踵を返して見える景色が「真っ黒」だなんて。

理解するよりも早く、叫ぶよりも早く。

俺は影に飲まれた。

―――――――――――

風にたなびくカーテン。窓から入る夕日の光。規則的に並べられた机。

ここがどこかの教室と理解するには、それなりの時間を要した。

そしてもう一つ。どこか、と形容したがそれは嘘だ。俺はここを知っている。

ここは確か

「ハルカ!」

有り得ない声が聴こえた。もう二度と聴けないと分かっているのにまだ焦がれている声が

聴こえた。

呼吸が止まる。

ゆっくりと。

振り返る。

そこに立っていたのはまごうことなき「ハツ」だった。

そしてここを知っている理由も分かった。彼女が身にまとっているのは中学校の制服。

なるほど。夢か。

だから?構うものか。

叶わぬ願いだからこそ。たとえそれが幻の類でも。古い記憶の彼女でも。

もう一度会えた。

「もう…」

ハツは怒った表情しながら、突然こっちに突進してきた。

俺は受け止めようとしたが。

文字通り彼女は、俺の前から姿を消した。

はっ?

「ハルカ?いつまで寝てるの?」

後ろからそう聴こえた。俺の体を通り抜けたとでも言うのか。

どうやら彼女は俺が見えないらしい。ははは、そりゃそうだよな。

その代わりと言えば変になるが、この教室にはどうやらもう一人いるらしい。

「起きてよハルカ」

机に突っ伏して寝ているそいつは…中学の俺か。

何度も揺さぶられているのにそいつは一向に起きない。

だってそいつは当の昔に起きている。こうやってハツが起こしに来るのを待っているのさ。

「ハールーカー」

困ってる。困ってる。そうだったな、俺はハツを困らすのが好きだった。

どうしようもない奴だよ。お前は。嚙み締めとけよその幸せを。

「まだ起きないの?」

それは誰に掛けられたものなのか。その前に誰だ。

振り返る。

そこ立っているのはハツと同じ制服を着た少女。特徴的なのはその前髪だ、顔がよく見えない

程には厚ぼったい。

だが。俺はお前を知っている。いや違う。思い出した。何故今まで忘れていたのか。

そして何よりこいつは俺を見ている。

「…………ハツ?」

疑問で頭が支配されているのに、俺の口からはそうこぼれた。自分でもびっくりする。

目の前の少女がハツ?

似ても似つかないぞ。

しかしその少女は驚いたような反応見せる。確信した。先の言葉は俺の向けられている。

俺の後ろではハツが俺を起こそうと必死だ。それがどうでもよくなるくらいに、その声が

聴こえなるくらいに、俺が目の前の少女に釘付けになっていた。

「違うよ……」

「なに…」

「私はハツじゃないよ」

その瞬間強い風が教室に舞い込んだ。

それと同時に少女の長い黒髪も舞い上がる。

そいつを俺はよく知っている。そんなことはどうでもいい。

何故お前はそんな泣きそうな顔している。

頼むよ。

笑ってくれよ。

つらいよ。

俺も泣きたいよ。

「なぁ…」

名前を呼びたかった。しかし、さらに強い風がいや強いなんてものじゃない。

今にも体が飛ばされそうになる。

風が俺を包む。ごうごうととてつもない轟音が耳を襲う。立っているのかも分からない。

意識も段々と遠のく。ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。

ちく

ぶつり、と途切れ

どうも雨乃森です。

ここまでありがとうございました。

ではまた次回

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