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「仮面舞踏会」  作者: 雨乃森
2/7

1「不穏な影」

どうも。雨乃森です。

ここからは一週間に一話という感じでいけたらと思います。

6月7日 水 


「おい雪野」

「……」

「…雪野!」

「ッ!はい!…はい」

休憩室でうたた寝をしていたようだ。ほぼ毎日倉庫のバイトがあるというのに、睡眠不足

はかなり痛い。結局あの後は寝て悪夢寝て悪夢の繰り返しだった。

「どうした?具合でも悪いのか?顔色悪いぞ?」

この人はバイト先の先輩。名前は確か「太田さん」だったか。彼には俺が初めて来た時に色と

教えてもらって感謝している。

「……ただの寝不足ですよ」

「そうかぁ?バイト連中とはお前が一番付き合いが長いから、何か悩み事なら相談に乗るぜ」

「じゃあ、この暇な時間をどうにかしてくださいよ」

「仕方ないさ。今日に限って向こうさんの運送トラックのトラブルだ。むしろこれでも普段

と同じ給料出るんだからお前からしたら万々歳だろ?」

太田さんは苦笑しながらシフト表を眺めていた。

「そういやお前この週末にシフト入れてないけど」

「あ、都合悪いです?」

「いや、お前は働きすぎな所があるからもっと休んでくれって話さ。ただ聞いていいならなんでかなって」

「……」

言うべきか?あれこれ聞かれても困るしなぁ。

「お疲れでーす。あれ?どうしたんですが無言で」

入ってきたのは新人の「春川」だ。適当に見えるがやることはやってくれるというのが彼女の

印象だ。一言多いが。

「ていうかハルカさん、どうしたんですか?その顔すっごいブサイクですよ」

「……元々こんな顔さ」

「いやいやいつもはもっとこう、この世が憎い、見たいに眉間にしわ寄せてたのに今はゾンビみたいですよ」

「心配してくれてんだよな?」

「おい春川、雪野は先輩だぞ少しは言葉を」

「えぇ、だって事実じゃないですかぁ」

「別にいいですよ太田さん。こんなんですが、仕事は出来ますし」

「なんすか、こんなんて…」

最近はこの三人とよく話す。バイト仲間というだけ、そしてバイト以外での関わりもない。

が、この時間が多少なりとも、落ち着ける時間というものになっているのは認める。

「で?週末の件は?」

「……えぇと」

そんなに気になるものか?まぁ、言ってもいいか

「実は…高校の同窓会がありまして」

「同窓会?そんなガラか?」

「ハルカさん、同窓会呼ばれる程愛想よかったんですか?」

「………」

結局そこまでの詮索はされなかったが、少し不本意だったというのを付け加えておく。

そこからは仕事が増えたので談笑もほどほどに俺たちは仕事に戻った。

やはり何か、集中できることが有難い。少なくともその間は何かを気にする必要はない。

「それじゃ、お疲れ様でしたー」

春川のその言葉で、時間の経過を自覚出来た。さっき話していたのは昼頃だったが

もう日は落ちている。そろそろ俺も後片付けをして帰るか。

「……ん?」

片付けを終え、休憩室に戻ってきた。もちろん誰も使っていない。なのに妙な違和感が

まず扉が半開きだ。いや、これは春川の閉め忘れか。でも誰かいる?

「…太田さん?」

もしかしてと思い呼びかける。中を覗く、しかしここの休憩室のあかりは電灯のみましてこの時間ならなおさら暗い。

きっと誰もいないだろうと、思っていたが。

「……太田さん?」

よく見えないが人のようなシルエットがあるように思う。良くない方向に思考が加速する。

俺はこれをどこかで見たような。そうだこいつは昨日の…

その瞬間、光が飛び込んできた。

「……なにやってんだ?」

「…ッ!?」

突然の光と後ろからの声。情けなく体が跳ね、急いで振り返る。

そこに立っていたのは太田さんだった

「太田さん?…」

「おう太田さんだ。そんな雪野君はこんな暗いところでどうしたんだ?」

「…えっと」

もう一度振り返る。

もちろん、誰もいない。

やはり、疲れているのか。昨日の夢で存外にナーバスになっているのかもしれない。

「…雪野」

「あ、いやちょっとぼうっとしてて」

「本当に大丈夫か?顔凄いぞ」

そういって太田さんは手鏡を向けてくれた。そこに写るのは確かに俺だが、毎朝洗面台で向き合う時とは大違い。倒れる一歩手前という所か。

「…」

「はぁ…雪野、少なくとも今週はもう休んでいいぞというか休んでくれ」

「しかし」

「こっちとしてもそんな顔をした奴に働いてほしくないし、何よりお前が体を壊す所は見たくない」

「…」

「それでも働きたいなら…お前の仕事は休むことだ。お前の抜けは春川や別の奴に任せるさ。」

きっと自分が自覚している以上に体は悲鳴を上げているのだろう。

本当に体を壊す前にここはお言葉に甘えさせてもらおう。

「…ありがとうございます。」

「気にすんな。お前の方が代わりに入る事多かったんだから。ちょうどいいだろ。それじゃ、

お疲れ。しっかり休めよ?」

「…はい。お疲れ様です。」

俺はきっと恵まれているのだろう。こんな俺でも太田さんは拾ってくれた。もちろん春川も

いい同僚だ。過去は捨てられないが、振り返るのも程ほどに。多少なりとも前に進もう。

ここまで読んでくれてありがとうございました。

また次で会いましょう。

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