憧れの先輩の秘密。
「なろうラジオ大賞コン」用。1000文字以下
朝、学院へ行く準備をしておりますと、机の上に、フワッと一通の手紙が現われました。領地にいる伯爵様、お父様からのものでした。その内容はお叱りから始まっていました。
『カトリナ、魔法をもっと勉強しろ。私への手紙を厨房へ送ってどうする!』
あー、またやってしまいました。私は魔法が余り得意ではありません。朝から気分が、だだ下がりです。でも、すぐに良くなりました。学院への登校途中、憧れの先輩、フローラ様に出会え、彼女の馬車に同乗させてもらえたのです。
なんたる幸せ!
フローラ様は見目麗しく文武両道な上、性格もお優しいお方。皆から慕われる学院一のヒロインです。そして、それだけではなく、久々に現れた、人々の病を癒す聖女ではないかと噂されています。その理由は、彼女が、この世の人とは思えないからです。
彼女は全く……。
好奇心旺盛な私は、この機会を逃すまいとしました。
「フローラ様。少々不躾な質問ですが、聞いても良ろしいですか?」
「ええ、よろしくってよ」
私は彼女の厚意に甘えました。
「フローラ様は普通の人ではない、天界から来られし聖女様なんだと、学院では噂になっています。これは本当ですか?」
「バカなことを。私は人ですよ、普通の人です」
一笑に付されました。
「でも! フローラ様は、全くトイレに行かれないじゃないですか! 学院でも、その他の場所でも、貴女がトイレに行かれるのを見た者はいません。大も小もしない人なんて、この世の者だとは思えません!」
彼女の表情が険しくなりました。
「カトリナ、貴女、秘密を守れるかしら?」
私は、ごくりと唾を飲み込みました。
「はい、守れます」
「ではお話しましょう。実は、私はトイレをしない訳ではありません。トイレに行かないだけなのです」
「行かないだけ?」
「ええ、転送魔法で、便も尿も体の中からトイレの貯蔵槽に転送しています。だから、行かない、行く必要がないのです。これは便利ですよ。紙も必要ありません」
呆然となりました。
「そのようなことをして大丈夫なのですか? 失敗して貯蔵槽ではなく他のところに転送してしまったら……」
惨事、大惨事です。でも、フローラ様は……。
「私は魔法が得意、失敗などしません。でも、もし失敗したら、その時はその時。なるようになるでしょう、ふふふ」
後年、本当に人々の病を癒すようになった彼女は、その性格もあって、大いに慕われました。
優しい聖女様、おおらかな聖女様として……。
連載で使ったネタですが、連載の時とは少し角度を変えて、短編として作ってみました。しかし、1000文字以内ってキツイですね。ちょっと状況説明をいれると、すぐオーバー。