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「僕」
「ありがとう。」
彼女は最後にそう言った。
目を開けた。僕は泣いていた。それに気付いた僕は,誰かに見られる前に目をパジャマの袖で拭いた。その濡れた袖を見て,「どうして泣いてるんだろう」と自分に聞いた。目を閉じて,夢を思い出そうとする。無論,全然思い出せない。それは当たり前になっていた。先週の14歳の僕の誕生日から毎日見ていたこの夢。起きた時には泣いていた。思い出そうとしても,出てくるのは彼女の顔だけだ。あの名前を思い出せない彼女の顔。あの緑の瞳,焦げ茶色の髪,あの細い指,あの優しい声,それを全部綺麗に着飾っていたあの彼女を。それだけはっきりと覚えていたのに,名前だけ思い出せないのは何故だろう。そこまで考えて,もうこれ以上考えても何にも出なさそうだと判断した僕は,時計を見た。朝の7時だった。
初めまして。ライファと申します。読んでくれてありがとうございます。更新は不定的です。頑張ってみなさんが面白いと思ってくれる小説を書きますので,応援お願いします。