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シスターエボラの功績


「…」



「報告は以上となります」



翌日、俺はミランダからの報告を受けていた。



モンスター達と争った形跡は無く、他勇者パーティーの姿も見つからなかったらしい。



…ならば勇者1人でこの地に?



…いくら強者といえど、物を食べず、さらには足もなく到底この地には……いや、それだけ余裕がなかったと言うことか?



……情報が少なすぎる…



「…報告ご苦労……勇者1人でこの地に来た可能性が高いか…」



「可能性は高いかと……」



「気になるのは、あの精神状態……旅をする感覚でならここまでこれよう…しかし、あの状態で…」



何はともあれ、精神的負担が極端に合ったはず…この近くまで偶然来ていて、この付近で極度の負担を抱えたと言うのか…?



「…もしかすると…」



「…ん、何だ?」



「…憶測ではございますが……体内を循環している魔力が過剰循環状態にあったのではないかと…」



「…過剰循環状態か…」



それなら、確かにありえるかも知れん。



魔力の過剰循環状態とは、平時より魔力の流れが速くなることだ。



魔力の流れが早くなることで、身体の運動機能はかなり上昇するが無理に魔力を循環させているため、身体へのダメージが徐々に蓄積されていく状態だ。



勇者クラスの魔力循環であれば、一晩で山を越えるくらいの出力は出せよう。



精神的負担から魔力の過剰循環…その結果衰弱し、この国に運良くたどり着いた…



問題は、なぜそんな精神的負担を抱える事になったかだが…



「……」



「……勇者とパーティーについて、他国に問い合わせますか?」



「……いや、しばらく様子を見る。この話はあくまで仮定だが、可能性は大きいだろう……なら、なぜそんな事になったかが重要だ……もし、国に問題があるならまともな回答は返ってこん……何より、勇者本人がこちらにいるのだ。勇者の口から、事情を聞いた後で問い合わせても遅くはなかろう」



「では、そのように…」



「変な連絡が他国からあった場合は俺に知らせよ」



「かしこまりました」



捨て駒にしたと仮定すれば…わざわざちょっかいをかけてくるとは思えんが…



念には念を入れておいて問題はないだろう。



と、頭の中でこれからの対応を考えていると…



「…失礼いたします」



シスターエボラが入ってきた。



「おはようございます、王よ」



「うむ…勇者の具合は?」



「つい先程お目覚めに」



それはタイミングがよい。



「会えるか?」



「可能でございます。特に発狂などの症状は見られませんでしたから」



「うむ。では、早速向かうとしよう」



そういうと、俺は2人を引き連れる形で病院へと向かった。



病院内は、昨日とは違い慌ただしい雰囲気はなく、落ち着いた雰囲気の中で他シスターや医療系の者達が働いていた。



「流石ですね、シスターエボラ。昨日はあれだけ慌しかったのに、次の日にはこれだけ落ち着いて作業できているとは」



「特別な事はしておりませんよ。皆、日頃からやるべき事を意識してこなしているだけですから」



当然のように聞こえるが、実際はそんな簡単ではない。



医療現場などの多忙極まる場所では特にだ。



リアルタイムで状況が変化する環境では、臨機応変に動けることが必須だ。



しかも、状況に合わせて動けば予定外の事もしなければならなくなり、後々の業務に影響することもあるだろう。



それだけ、現場では高い能力を求められる。



だが仕方がないことなのだ。



なんせ、命を預かる現場なのだからな…



しかし、今この状況を見ると、昨日の慌ただしい作業の影響は皆無だ。



これは普段から自分たちの作業を理解し、何を為せば、いつもと同じルーティンに近い行動を取れるか意識している彼女達の成果…



そして、そんな現場を熟知し、導いたシスターエボラの成果でもある。



これがどれだけ凄いことなのか…



「…よくぞここまで育てたものだ。少し前までは、荒れに荒れていたのにな…」



俺は思わず感嘆の息を漏らしす。



シスターエボラが責任者になるまで、ここの統制は皆無と言っても過言ではなかった。



教会の派遣されたアホは現場などをよく知りもしない愚者。



だから俺はそんな使えぬ存在を送り返してやった。



王として、現場を知らぬ者に、指揮を任せるなど愚の骨頂だ。



なぜ、そんな奴で事足りるのかと考えたか…



…この事を、いい加減教会のアホどもは学ぶべきだ。



この光景を作るのにどれだけの努力がいるのかを…



そして、使えぬ人材などよこすではないッ邪魔になるであろう!!





……



…こほんっ…



少し、はしゃぎ過ぎてしまったようだ…反省せねば…



「流石だ、シスターエボラ。ここの責任者にして間違いなかったようだ」



「いえいえ。全ては王の采配の賜物です」



「たわけ。平凡王な俺は、ただ責任者として必要な人材を割り当てたに過ぎぬ」



そう、俺はただ責任者としてシスターエボラを任命しただけだ。



俺に能力があれば良かったが…残念ながら全く足りていない。



ここまで、見事な環境と人材を育成したのは紛れもなくシスターエボラの力に他ならないのだ。



「ここまでの成果を出しておいて自分への報酬は受け取らないというのだから困ったものだ…………まだ至らぬ点はあるのだろうが、この事も教会と病院への報酬として取り上げさせておく……異議は認めんからなっ?」



「…王よ、横暴なのは最終的に嫌われてしまいますよ?」



どの口がいうかッ…



「であれば最初からうけとらんかっ…!頑なに拒否しよってからにっ…!」



「ほっほっほっ…それはそれ、これはこれでございますよ」



お主が受け取らんと、今後の褒美内容と付与についてハードルが極端になってしまうではないかッ!!



と、思わず大声で怒鳴りたくなるが…ここで我慢我慢ッ…



昔からシスターエボラには、口喧嘩で勝てた試しがないからな…



いいように言いくるめられるのがオチだ…



「…ふぅっ……で、勇者はどこにおる?」



「こちらへ」



シスターエボラの案内に沿って進むと、ベッドに横になったままだが、担当のシスターと会話しているのが見えた。



「…あっ…」



「目が覚めたようだな」



多少やつれてはいるが、それなりに元気そうだな…



やはり、眠れていなかったや栄養不足だったのが原因か…



「…ぇと……あなたは確か…」



「…このバルガンナ国の王、ルドラだ。無事目を覚ましたようで何よりだぞ、勇者ユーリよ」



俺が名乗った途端、慌てて体を起こそうとするユーリ。



えぇぃっ、いくら王の前だからといってもお前の体はぼろぼろだろッ!



無理をするでないわッ!



特にお主は女であろうッ!



身体に跡が残ったらどうする!?










………しかし、この慌てようは…


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