精霊からの便り
執務室に戻ってきた俺たちは、ようやく一息ついた。
「…はぁぁぁ……シスターエボラの説教はかなり効くな…」
「…悪いのはこちら側ですから………ほんと…シスターエボラには悪い事をしてしまいましたね…」
「…迷惑なぞかけるつもりは無かったが……結果的にはかけてしまったからな…それに説教も…」
高齢では無いが、かなり年上であるシスターエボラに迷惑と負担をかけてしまった事は事実…
今後の為にも、前向きに検討せねばならんな…
「…だが、簡単にはなぁ……信頼をおける者など…そうそういないのだが…」
「…我が王の基準はかなり高いですからね…」
「たわけ。重要機密に対する基準は高くてなんぼであろう……まぁ…高すぎるのも問題ではあるのかも知れんが…」
「……出来れば、あと2人ほどは手が欲しいですね…」
「…国外で活動している者達を…いや、ダメだな………そうなると外の対応が厳しくなる…」
「…仕方がないとは言え、外への優秀な人材を注ぎ込んだのが苦しいですね……やはり、国内の人員だけで何とかしないと…」
「…だな……いっそ、隠密部隊の隊長達に推薦させるか…自分の部隊内中から」
それならば、いくらか信頼は置けるかもしれん。
「……いい案だとは思いますが……その………他部隊同士で喧嘩しないでしょうか?」
「……」
3部隊の異なる隊員がそれぞれ1人…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……」
「……」
「……」
3人が黙々と書類整理…
なんとも平和にそれぞれ作業をしているように思えるが…
“…シュッ…!……ガギィッ…!……キィンッ!…”
ただ、書類整理をしているだけでは決して聞こえるはずがない金属音…
この3人は他の2人より先に作業を終わらせようと、死角からの一撃や早すぎる一撃など見えない妨害をやりあっているのだ。
「「「ッ!…ッ!?」」」
それぞれ同時に作業が終わったようだが…
“キギィイッ!!ガンッ!!ズゥゥェゥゥゥウッ!!!”
どうやら同時に終わることすら認められないようだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「うむ、無理だな」
俺の脳内シミュレーションの結果、99%の確率で戦闘が起こり、大切な資料が台無しになるという結論に至った。
「……他の部隊や臣下達とはそれなりに仲良くできているのに…隠密部隊同士では一触即発レベルまで険悪度が跳ね上がりますからね…」
「……全く……面倒な問題を残してくれたものだ…」
俺は先先代の王が残した問題に頭を抱えた。
というのも、仲が悪い原因は先先代の王の発言にあるのだ。
発足時は仲が悪く無かったらく、互いに認め合いながら仕事をこなしていたらしいが…
…いくら仲が良いと言っても別部隊だっ…
隠密部隊の中で1番なのはどの部隊なのだろうか…と問いかければどうなるかなどわかりきったことでは無いかっ…
「…それぞれの得意分野というか…活躍する場が違うのだから比べようも無いというのに…はぁ…」
「…いっそ、我が王が優劣を決められては?」
「…絶対嫌だッ……!あの3人にそんな事を伝えてみろッ…どんな目に合うかわからんわッ俺がッ…!!」
「…我が王の犠牲で、あの3人の蟠りがなくなるなら…」
「……ミランダよ…いつもの事ながら其方も良い性格よな……」
ミランダは、はぁぁっと深いため息を吐く。
「…我が王に言われたくは無いのですが…」
「いやっ、俺が何をしたというのだっ…!?」
「…しているのに気が付けないところですよ……」
「何でもありませんっ。…さて、色々ありましたが…おや…?」
何やら窓の外から、ゆっくりと俺の元に光の塊が飛んできた。
「ん……精霊の便りではないか」
「あ…コレがですか?」
精霊の便りとは、文字通り精霊からの知らせだ。
精霊が見たものや感じたものが書かれてたりする。
そもそも精霊達は、自然界の一部…
つまり、この世界の理が具現化した存在とも言える。
彼らと信頼関係を結ぶことができれば、起きるであろう災害や豊作について知ることができるのだ。
その際に知らせる方法として、この様に光の玉を飛ばしてくるのだ。
「…我が王は、この便りを読めるのですか?」
「まぁな。仮にも精霊達と契約を結んでおるわけだし……あと勘違いするな、この光の玉は単なる入れ物にすぎん…といっても、内容そのものでもあるわけだが…」
「入れ物…封筒の様なものですか?」
「うむ。彼らは俺たちと違い、全て魔力により形をなす。その為、封筒も内容が書かれた紙に当たるものも、全て魔力で出来ておるのだ……簡単に言えば、この玉1つで、あの魔法研究院から大金を毟り取れる程の価値があるな」
「なッ!?…あ…あのッドケチで有名な魔法研究院からですかッ!?」
「…ドケチて……まぁ…その通りだ。喉から手が出るほど欲しいというやつだな……もちろん、くれてやるつもりなどないが……ちなみに、この玉の色でどの属性の精霊からの便りなのかがわかる」
「…白色という事は…光属性の精霊?」
「うむ…さてさて、何が書かれておるか……アミュターツ」
解除の呪文を唱える。
ゆっくり、光の玉は形状が変化し、一枚の紙になった。
「…何々…………ふむ…」
「………どうかされましたか?」
「…光の精霊からの便りだったのだが……どうやら祝福の知らせのようだ」
「祝福…ですか?」
「うむ…どうやら、この国に聖女が誕生する…いやしたらしい」




