『盲目』
自身の書いているTSMシリーズの生まれつき目の見えないお兄さんのルカと絵を描くのが好きな弟のヴァシリーの子供の頃のお話を書きました。
[The Strange Menシリーズ]
https://www.uchinokomato.me/episodes/5126
[ヴァシリーのプロフィール]
https://www.uchinokomato.me/chara/show/208759
[ルカのプロフィール]
準備中です。
※TSMストーリー内容やキャラクター説明を読まなくてもこの小説は読めます。
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[創作アカウント]
@Volkovsky_22
僕の目は手先にあり、耳にあり、鼻にあり、肌にある。
手元を確かめ時計のボタンに触れる。
[ゴゴシチジ、ニジュウサンプン]
機械特有の抑揚のない声でアナウンスされる。
そろそろ父さんの帰ってくる時間だ。数年前に母さんが亡くなった父子家庭はどうしても晩御飯の時間が遅くなってしまう。
有難いことに七個歳の離れた弟のヴァシリーは椅子に座り、いい子に絵を描いている。五歳児とは思えないくらい大人しく手のかからない子だ。
僕に料理ができたら小さな弟に腹を空かせて待たせることもないのに我慢をさせて申し訳ないな、といつも思っている。
この父さんを待つまでの暇な時間は大概読書をして待つ。普通の書籍は読むことができないので点字に訳された分厚い本を指でなぞりながら読む。
今読んでいるのは“色”について解説してある本だ。
もちろん僕に色を見ることはできない。けれど“色”がどんなものなのかはとても興味がある。赤ならば“情熱”という良い意味があるのにも関わらず、反対に“危険”という悪い意味もあるのが面白い。僕はこの目で色を見ることができることがこの先あるのか分からないけれどどのようなものなのか見てみたい。
『できたっ!』
ヴァシリーの明るい声が部屋に響き、無邪気な足音が僕に近づく。
『にーさんみてみて!』
なにも映らない目を開き、頭を撫で何を描いたんだい?と問うとヴァシリーは悲しそうな声で小さく父さんと天国にいる母さんと兄さんと僕を描いたんだ、と答えた。
『ぼくのえがへたっぴだからぼくがなにかいたのかわかんなかったんだ』
グシャグシャと紙を丸める音が聞こえる。
『ごめんよヴァシリー、僕は目が見えないから『にーさんなんかだいっきらいだ!!!!!』
『……ヴァシリー!』
ヴァシリーは丸めたそれを僕に投げつけ、大きな音で扉を閉め、自分の部屋に閉じこもってしまった。部屋の中でヴァシリーの泣いている声が聞こえる。
『一生懸命描いた絵を褒めて貰えないなんて辛いよね…。』
僕はしゃがんで彼の投げた絵を探し、丸められたそれをできるだけ綺麗に伸ばす。後で父さんに見せてあげよう。
まだ幼いヴァシリーには僕が目が見えないことをちゃんと理解するのは難しいのだろう。
僕だって弟が一生懸命描いた絵を見てみたい。
けれど目を開いたっていつも僕が見えるのは“無”だ。人々は僕の見ている世界を暗闇、と呼ぶ。産まれてから今までずっとその暗闇の中で生活をしている僕は生活に不便を感じたことはあまり無いのだけれど、“目を使って見る”ことをしたい時に出来ないのが辛い。
絵は耳を使っても、鼻を使っても、肌で触れても分かるものではない。
見えないということが時に誰かを傷つけ、その辛さに対して何をすることもできない僕は下唇を強く噛むことしかできなかった。
目が見えない人がどのような世界を見ているのか?逆に目の見える世界は目の見えない人から見てどのようなものなのかを理解した上で文を考えるのがとても難しかったです。
子供の無邪気さは時に人の心を傷つける。