第一章 その一 農村にて
まぁ、ファンタジーの農村ってのはこんなものですかね?
ゴレミア王国 ポッシ村
「なんじゃ?お前らは?怪しい風体をしおって盗賊か?」
「えーと‥‥俺達は怪しいものではー」
この村の村長と思われる老人と老人の後ろにいる‥‥農具を持ってこちらを警戒をしている数人の男たちに対して、一人の男が説明をしている。
そんな最中、幌馬車の内では
「あっー?‥‥やっぱりわしら怪しいのかのぅ?」
「全く俺様が何をしたってんだよ!」
「‥‥‥‥‥」
「んだ!俺はともかく先輩達が疑われるのは心外だべ!!」
「‥‥今更何を言っているんや?お前ら。」
男が言ったのは無理はない。
高身長、強面、堅気とは思えない程の顔をしている奴もいれば、鼻にピアスを着けている奴もいる。またあえて何故かピチピチの服を着て自分の筋肉を誇示をする奴もいる。
‥‥何処に言っても警戒され怪しい風体と言われても無理がない。
ちなみにこの者達がこの異世界に来て早半年で、村、都市に行くと高確率で必ず警戒されてしまう程になってきている。
「どうする?この村で宿泊出来なかったら、また野宿?」
「そうなりますね‥‥。また見張り番のシフトを今から増やすことを考えないと駄目ですね。」
「‥‥まぁそうなるような。」
「昨日は俺だったんで勘弁してくださいよ。」
「俺はここ最近なんか寝れなくても、頭すっきりしているから大丈夫ですよ。」
「お前、マジで医者に言った方がいいぞ?」
「すげぇ、気分悪い。」
「‥‥えっと、この前取った戦利品を売ると金貨、銀貨合わせて約70枚として、食費、装備品‥‥。」
「なぁ、暇なら酒でも飲むか?」
「おっ!いいね。」
と各々が勝手にしていると、村長と交渉していた男が戻ってきた。男の顔色が良くない表情だった。
「どうじゃた?カイ‥‥その様子じゃと無理かのぅ?」
「いや、なんとか村の宿泊が認められましたが、どうもこの村の人は余所者に対してあまりよく思ってはいませんでした。」
カイという男は村長達を見ると、いつの間に村の住人が集まってきた。村人たちは皆こちらを見て不安な表情を浮かべていた。
「そうか‥‥。で俺たちは今日何処に泊まるんや?」
別の男は村を見ながら呟いた。村は全体的に見れば家の数は少なく本当に小さな農村とも言えるほどの小規模なものだった。
カイはため息混じりで
「実はこの村宿泊施設はないそうです。残念ながら」
「「‥えっ!?」」
カイはそう言うと皆が驚きの表情を浮かべ、思わず声を出した者も
「‥‥えっ?じゃあ俺様達は何処で寝るんだ?まさか村の真ん中で幌馬車で野宿しろってのか?」
筋肉質の男が言うとカイはおもむろに指を指した。皆がカイが指を指した方向を見ると、村の中心から少し離れた場所に‥‥古びた家しかも見た感じでは今でも崩壊寸前の数件の空き家があった。
「村長があそこが誰も住んでいないから、あそこで泊まれ嫌ならその先の別の村に当たれと言われまして‥‥。でも村の井戸は使ってもいいと言われました。」
カイは申し訳ない表情を浮かべているなか、皆は残念な表情を浮かべる者も入れば、何をやっているんだとおい!と呆れた表情を浮かべる者もいたが、時間がもうすぐ夕刻これ以上行くと別の村には着くのは夜になってしまう。
夜になれば狼、モンスター、夜盗が現れる場合もある。‥‥昨日までに野宿を三日間をして昨日と一昨日、野盗に襲撃されており、返り討ちをしたが流石に睡眠不足で肉体的にも精神的にもキツイものがある。
「しょうがないのぅ。背に腹が変えられない。‥‥行くかのぅ。」
「そうやな。まぁここに慰めてくれる姉ちゃんが入れば最高やな。」
「俺は”お兄ちゃんとなら一緒なら大丈夫だよ?“と言ってくれる幼女が入ればいいな。」
「‥‥‥。」
「俺様は、別にいいぜ。」
「雨風と寒さをしのげれば、別にいいですね。‥‥まぁ私は好きな人とどこでも寝れば最高ですね。」
「‥‥なんか怖いんだけど別の意味で、後あの空き家幽霊でそうだね。」
「‥‥まぁ、宿賃を取られるよりましか、浮いたな。」
男の一言に皆は宿屋に泊まられるという希望を失くして仕方なく空き家に向かった。