叶わない、この想い
好きな人ができた。
そんなことは、誰でも一度はあることだろう。
彼女とは、バイト先で出会った。
顔が綺麗だった、声が可愛い、スタイルが良い、etc…。人により、人を好きになる理由は多種多様だ。
だが僕は、すでに彼氏がいる彼女のことを、好きになってしまった。一目惚れである。
その人を一目見て、「可愛い」と思うと同時に、「好きだ」と思ってしまった。
なぜだかは、自分でもよくわからない。
まだ彼女の、趣味も、好きな音楽も、好物もわからないのに、好きという感情が生まれていた。
そんな叶わぬ想いを持ちながら、バイトをしている。
会う回数を重ねるごとに、だんだんと話ができた。
作業を一緒にできることが、嬉しかった。
シフトが重なるたびに、心の中で喜んでいた。
別れるたびに、また会いたいと思った。
彼女と、バイト中の暇な話している時間が、なによりも楽しみだった。
その時に見せる、彼女の笑顔が可愛かった。
僕より、彼女が年上のことをイジると、少し怒るのがまた可愛かった。
この人と、もっと一緒にいたいと思った。
だが
「これ見て!彼氏に買ってもらったんだ〜。可愛いでしょ!」
彼女の一言に、現実を突きつけられる。
あぁそっか。僕じゃ、ダメなんだ。
この人には、この人にとって、大事な人がいるんだ。
それを壊しちゃいけないし、壊す勇気が僕には無い。
叶わない想いだけが、日々募っていく。
そんな彼女とも、今日はシフトが重なっている。
せめて、せめて、一緒にいる時は、少しでも楽しい時間を過ごしたい。
僕はそう思い、扉を開け入ってくる彼女に、声をかける。
「おはようございます」