奇録-参- 棲家~脚~
金縛り 真っ赤なスカートで走り回る
何それ怖い 見たくない
休日、普段は遊びに出たり家にいる事が無いのだが、この日は疲れ切ってどこにも出る気がしなかった。
朝から居間でダラダラ過ごし、ソファでゴロゴロとテレビを見ながらいつの間にか眠ってしまっていた。
ふと寝返りを打ったのだろう身体が動かないことに気づいた。
あぁこれが金縛りってやつだなと思いながら脳がどんどん覚醒していったが、目は開けられずにいた。
開けたときに何かがいたらと思うと自然と強く瞼を閉じ自分から開ける気にはならなかった。
何とか動きはしないだろうかと足や、手を動かそうとするが全く動かない、声を出そうにも声にならず唸っているだけ。
足掻くだけ無駄なのかと諦め力を抜き唸るのも止めると、何やら耳元で音が聞こえてきた。
『パタパタパタッ』
『トンッタタタッ』
何かが動いている? 走っている? ありえない。
今この家にいるのは俺一人、戸締りもしっかりしていた、じゃあ何がいるのか一気に血の気が引いた。
次の瞬間、身動き一つとれずにいた身体が動いたと同時に人間や動物なら対抗できると思い、寝たままの状態で目を開けた。
「キャハハハ」
笑い声とともに、小学生くらいなのか小さな脚が見え真っ赤なスカートの裾当たりが視界に入ったが直ぐに部屋の外へ消えていった。
その後、金縛りには何度も遭うようになったが目を開けることは無く、硬直が解けた後も暫く目を開けることはしなかった。
次にもし見ることになった時、脚以外を見てしまうのが怖かった。
「愛生華、これだとお父さんがスカート履いて走り回ってるよね」
「......」
「『今だったら似合うと思うよ』って今でもスカートは嫌だよ」
「......」
「嫌だって言ったのに着替えさせないで」
「......ぷっ」