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俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
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8話 家族は既に受け入れ完了




 食堂に入ると焼きたてのパンの香りが迎えてくれた。既に家に居る家族は全員集まっていて、エミリアが最後に席に着いた所で領主のデラクがエミリアに声を掛けた。


「やぁ、エミリア。勉強お疲れ様。指輪様に失礼をしていないかい?」


 全員が揃って給仕が始まる中、エミリアに全員の視線が集まる。メイドのエナさんとベルさんもチラチラとエミリアの方を伺いながら配膳を進めていく。


 エナさんとベルさん、姉妹でマキナウス家に雇われている。姉のエナさんは濃いめの茶髪でストレートのセミロング、大人しい性格で料理を始め家事の殆どを賄っている。俺を結構な頻度で磨いてくれるので間近で顔を見る機会があったがかなり可愛い。仕事が早く、この家の家事一切は彼女がいてこそ回っている。


 妹のベルはオレンジにも近い明るさの茶髪で、強めのウェーブがかかったショートヘア、活発な性格で姉とは対照的、こいつはどうやら俺を磨く仕事はサボっているらしいのでなんかアレだが、顔は姉に似て可愛い。家事料理は壊滅的で、姉のサポート役になっているが俺は知っている。

 ベルはレッセンに次ぐ護衛担当なのを。レッセンが居ない時はベルが皆を守る役割を与えられている、いつも仕事の合間に筋トレしたり、レッセンとこっそり格闘訓練してるのを見てるからな。


 長机の上座に座ってニコニコしているのはデラク=マキナウス、現領主でデクスの子孫、中年に差し掛かった少し頼りなさげな茶髪のボサボサ頭に丸い眼鏡。

 貴族っぽさが皆無だが、初代に雰囲気が一番似ていて、妙に人が良くて自己顕示欲とは無縁のまったりしたオヤジである。俺は嫌いではない。


「ええ、お父様。昨晩も遅くまで昔のお話を聞かせて頂いてました。それに歴史の授業の時なんて凄く面白かったんですよ!」


「そうなのかい?いやぁ、私も是非お聞きしたいものです。指輪様。」


(エミリア、指輪様ってのはなんか恥ずかしいぞ、リョウでいいって伝えてくれ。)


「お父様、リョウと呼んで欲しいと仰られてますわ。」


 右手の甲を父親に向けながらエミリアが微笑んだ。


「あらあらぁ、リョウ様?指輪様にはお名前がお有りなのですかぁ?」


 エミリアの向かいに座った姉のクラリスが間延びした声を上げた。

 エミリアより4つ上の長女クラリス、エミリアより濃い金髪を背中まで伸ばした、エミリアをワンランクアップさせた様な美少女だ。いずれエミリアもこんな感じになるんだろうか、ゆったりした部屋着のドレスが良く似合う、そしてここが重要なんだがかなりの巨乳である。重要だぞ?


「そうなの、お姉ちゃん。本当の名前はトーノ=リョージって言うそうなんだけど、リョウでいいって。リョージが名前なんだって。」


「へぇ、トーノ殿と言うのかい?名前が後にくるのか…前後は逆にしても、まるで人名の様にも聞こえるね」


「素敵なお名前ですわぁ、リョージ様とお呼びしても宜しいでしょうか?」


「クラリス、エミリア、トーノ様は我が家の家宝であり、古くから伝わる王国の宝なのですよ、失礼な事をしてはいけません。」


 クラリスの隣に座るこの方はミラさん、デラクの嫁さんでクラリスをさらにワンランクアップさせた美女である、胸もだ。

 腰あたりまである金髪を綺麗に結い上げて、キリッとしたキャリアウーマンって感じだな。なんでこのオッサンと結婚したのやら。

 エミリアはどっちかっていうとミラさん似、活発なとこはミラ譲りだろう。逆にクラリスのマイペースな部分はデラク似かな。


(どう呼んで貰ってもいいよ。あとクラリスには気にせずに好きに呼んでくれって伝えてくれ。)


「リョウは好きに呼んでって。お姉ちゃんもそれでいいよってさ。」


 歴史の授業の際に俺が入れた突っ込みをエミリアが面白可笑しく話しながら、ちょいちょい俺が当時の当主の話を交えて、昼食は穏やかに進んでいった。


 食事も終わり、エマとベラが食後の飲み物を用意する中で、思いついた様にデラクが声を上げた。


「そうだ、忘れる所だったよ。トーノ殿、王都に貴方の事を伝えようと思うのですが宜しいでしょうか?」


(ん?どういう事だ?)


「なんで?ってお父様。」


「初代様以来、初めてトーノ殿の声が聞ける者が我が家に現れましたからね、王家にお知らせしておかないといけないかなと思いましてね。」


「そうですわね、貴方。トーノ様が意思持つ指輪という言い伝えは残っていましたが、まさか本当だったとは私も驚きましたわ。」


(それは別に構わんが、俺の声はエミリアにしか聞こえないからな…すぐに信じられたのが未だに違和感なんだが。)


「伝えるのはいいけど、なんですぐに意思があるって信じたの?って。」


「それはぁですね、エミリアの指にぃ、ピッタリになったのを皆んな見てたからですわぁ」


「クラリスの言う通りです、トーノ様。本来なら貴方は子供の指には大きすぎる指輪なのですし、ディクスの時も、クラリスの時も急に指に合ったサイズになる事はありませんでした。トーノ様の操者になれる者は、お身体の大きさをある程度変える事が出来るのでしょう?」


 そう言われると俺はエミリアの手を下に向けさせた。


(エミリア、サイズ調整、拡がれって思ってみな?)


 途端にコトンと音を立ててテーブルの上に俺は落ちた、カタカタと音を立てて回る。視覚操作して目線を上げてて良かったな、指輪視点だと落ちた時と今回ってるので酔うとこだったぜ。


 エミリアが慌てて俺を嵌めて、サイズ戻って!戻って!っと声を上げた。

音もなくエミリアの薬指にピッタリサイズになった俺を見て、ほっと息をつく。


「と、まぁこの様な事が起きたのが初めてだったもので、あっさりと理解出来たわけですよ、トーノ殿。トーノ殿ご自身はご自分の意思では大きさを変えられないのでしょう?あと、付けた者のみに声が聞こえる、と言う言い伝えもございましたし。」


(あぁ、その言い伝えの内容が凄く気になるけど概ね納得したよ。確かにエミリア以外じゃサイズ調整出来なかったからなぁ。)


「納得したって、お父様。あと今まで私以外が付けた時は大きさが変わらなかったって。」


「ふむ、トーノ様を身に付ける事が出来る者が今までなぜ初代様以外にいらっしゃらなかったのかはわかりませんが。とにかくこの度の件は王国にとっても重大な事です。」


「いいなぁ、エミリア。私もリョージ様と直接お話してみたいですわぁ」


(そこは俺にもわからん。むしろ俺がその条件を知りたいもんだ。何せずーっと誰とも話せなかったんだからな。)


 エミリアが右手を包み込むように左手で握り締めて家族に向かって急に大きな声をを上げた。


「リョウもわかんないって!でももう私がリョウと一緒にいるから大丈夫!」


「そうだね、王都に伝えを送るついでにディクスにも連絡しておこう。騎士団に入ってからロクに連絡もよこさないからいい機会だろう。」


 息子はついでか。

 とりあえず今は悪い気分じゃない、久しぶりに指輪の体が暖かくなる感じが心地いい。




◇異世界の指輪◇

装備分類:リング

防御力:0

魔力値:3

アビリティ:筋力増強+1

サイズ調整

パッシブ :魔力操作

視覚自在化

思考制御


◇説明◇

詳細不明の金属で出来た指輪。

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