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俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
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7話 エミリアと指輪と




 マキナウス領の歴史は長い、200年前の人魔大戦において、聖剣レンゼリアを振るう後の初代勇者王「ランデウス=バル=エスティリマ」率いる7人の英雄達が、たったの8人で魔族の軍勢から国を守り、魔族の王を打ち倒した。


 勇者ランデウスは当時のエスティリマ王家に迎えられ、次の国王として戴冠された。

 当時ランデウス様の従者であったデクス=マキナウス様は国が安定した後、勇者王に最も近い位置でその偉業を支えた功績をもって爵位と領地を賜った。

 それがマキナウス子爵家の興りである。そこから今現在に至るまでマキナウス領は大きな災禍に見舞われる事無く、王家に尽くし、民を愛し、自領を治めてきた。


(8人だけじゃ無いって、当然軍も一緒に動いてたし、あくまでも前線で軍を率いて戦っただけだぞ。誇張すんなよな。)


(あとデクスは城に居ると息が詰まるっつって王様と相談して、辺境に領地貰ったんだからな、あいつ王様と仲良くて他の貴族から疎まれてたから)


(そうなんですか?)


(おぉ。最初は王家付き相談役とかって新設の役職をやらされそうになってた)


(へぇー。)


 エスティリマ王国の南西部の端、当時はほぼ未開拓な土地であったが、デクス子爵は領地経営に非凡な才能を見せ、その地盤を瞬く間に固めていった。

 森を開き、畑を開墾し、街を縄張りし、新しい産業を興し、大勢の人々を導いた。

 マキナウス領から王国全土に伝わった新たな技術や娯楽も多く、画期的な手押しポンプによる生活水準の向上、輪作農業による収穫量の増加、紙の作成・量産体制の確立、チェスやリバーシなどの手軽で誰でも楽しめる盤上遊戯発祥の地でもあり、特にショーギの王国大会はここマキナウス領で毎年開催されている。

 それら以外にも多数の新たな技術が世に送り出されたが、驚く事にこれら現在のマキナウス領の基盤となったものは、初代領主の時代に全て領主自らが考案しており、デクス子爵の領地経営と才能がまさに卓越したものであった事を伝えている。


(はっはー!それは俺の仕業だ!内政チートは定番だからな!)


(うええ⁈リョーがやったの?それと内政チートって何⁈)


 この様な功績を残したにも関わらず、デクス子爵はそれ以上の出世を望まず、爵位よりも人材や資源を王より賜り、自領の発展に尽くしたという。本来であれば不敬にあたるこの様な振る舞いも、初代勇者王ランデウスには笑って許され、その生涯を終えるまで家族と民に愛される領主であった。


(目立ち過ぎた上に地位が上がると色々と面倒な事になりそうだったからな、王と事前相談のうえで爵位は要らんから金を貰え、とかこいつが有能だから引き抜けとか、とにかく領地経営の方に全振りしたわ。)


(ま、まぁ…歴史の真実ってやつね。)


「と、いうのが我が領の栄えある歴史でございます、お嬢様。」


 マキナウス家では執事服とメイド服はデフォである。これも過去の所業の成果だ。

 使用人のまとめ役で家令だから執事服で問題ないだろう、イメージ通りの仕事内容だしな。


 レッセンは前領主の頃からマキナウス家に仕えている、ウチじゃ一番の古株になるからそれなりの歳なんだろう。若い頃は騎士をやってたらしいが、マキナウス家に来た時点では騎士を辞めて冒険者として活躍していた。


 体を壊して使用人として雇われた…というのは建前で、本当の所は冒険者時代に前領主に雇われて護衛として家に入った後で、そのまま使用人として雇用された。


 このオッサンかなりの手練れで、マキナウス領屈指の実力者である。初老のくせに長身で筋肉質、魔術の腕もその辺の半端な専業魔術師より上ときてる。

 黒髪オールバックにカイゼル髭ってのはどこの衝撃の人か突っ込みたい所だが。

 元騎士って事で教養もあるから、子供達の教育係みたいな事もお手のもんだ。


「毎回歴史の授業の度にその下りを聞かされるんだもの、もう暗唱出来るわ。」


(やり過ぎたとは思うが反省はしてないぞ、俺は。)


 エミリアの誕生日の翌日、家令兼エミリアの教育係であるレッセンの歴史講義について聞いていた俺は、改めてデクスとのやりとりを思い出しながら聞いていた。


王国歴 476年 春の月31日


 エミリアの部屋にてエミリアの右手の薬指に嵌ってる俺は、彼女が部屋で勉強する傍らで久しぶりに人の手の中にいた。


 現在のマキナウス家は以前の様な隆盛は誇っていない。そらそうだよね、俺の内政チートが炸裂してたのはデクスの野郎が俺と念話出来たからであって、その子供には何にもしてやれてなかったんだからな。


 ただし初っ端の全力内政チートは伊達じゃなく、辺境領なのに王国トップクラスの経済力は未だに健在だ。


 そんな中で現領主、デラク=マキナウスは無難にやってると思う。その嫁さんのミラさんと、今は一人で王都に居る長男で17歳のディクス、長女で14歳のクラリス、そして10歳の次女エミリア。


 執事のレッセンとメイドさんが2人、エナさんとベルさん。年齢はよく知らんがメイドの2人はディクスあたりと同じ程度じゃないかな。後は庭師の爺さんでロクサルってのが奥さんと敷地内の管理小屋に住んでる。家の中じゃ殆ど見ないがな。


 貴族としちゃこじんまりしてるが、これは初代の「上に立つものは贅沢するなかれ、不要な財を溜め込むなかれ」という、俺発案の格言を守っての事だ。当主の執務部屋にデカいレリーフにして飾ってある。


 その甲斐あって地位は下級の貴族だが民の信頼は百数十年経っても厚い…はずだ。




 エミリアの部屋のドアがノックされる。メイドの一人のベルさんが、昼食の時間を告げた。


「それでは本日の歴史の講義はこれくらいに致しましょう。これより昼食の後は庭にて魔術と剣術の修練ですのでお忘れになりませんよう。お嬢様。」


「はぁ…苦手なのよね…魔術。もう魔族との戦いとか滅多に起こらないんだし、魔術や剣術の練習は要らないんじゃないかしら…」


「その様な事はございません、最近は各地で魔族や賊による騒ぎも起きているとの事、勿論私共がお守り致しますが、マキナウス家の伝統では魔術や剣技は使えて損になるものでは無いとの教え、勿論礼儀作法もお忘れ無きよう。」


 結構ちゃんと伝えてるよな、俺がデクスに子供は自分の身は自分で守れる程度には仕込んどけって言ったのは間違いじゃなかった。成り上がり者は色々物騒だからってな


 年月が経っても自分がやった事が残るってのは悪い気分じゃない、デクスが死んでからはもう本当に見守るだけで暇で仕方なかった…途中で意識を操作する思考制御がパッシブ化しなけりゃ本当に狂ってたかもしれん。


 後は時折アラームかけたみたいに起きてみちゃ暫く周りの状況を確認したり、誕生日のイベントの度にデクスの子孫の指に嵌められてみたりしたが、念話のねの字も届きゃしねぇ。

 飾り台から外されて磨いて貰うのは悪く無かったが、それも年数回になってたからな…


(それじゃ、お昼にしましょうか、食堂にいきましょう、リョウ。)


(おう、しっかり食えよ!エミリア)




 やっぱりコミュニケーションは大切だな!


◇異世界の指輪◇

装備分類:リング

防御力:0

魔力値:3

アビリティ:筋力増強+1

サイズ調整

パッシブ :魔力操作

視覚自在化

思考制御


◇説明◇

詳細不明の金属で出来た指輪。

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