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俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
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6話 魔族と戦うと言ったな、あれは嘘だ




 部屋の中は暗く、揺らめく魔力光の明かりがベッドとその周囲を仄かに照らす。広さはそれ程大きくは無いが良く掃除され、整理されていて綺麗でシンプルな部屋だ。

 家具は少なく光の端には机とクローゼットがあり、幼い少女の部屋にしては少々殺風景にも見える。



(と、言うわけで俺も含めた9つの武具は魔族との戦いに身を投じたんだ!)



 外はもう夜中だ、ベッドの上で小さな女の子が興奮したような声を上げる。


 透き通る様な金髪を肩で切り揃えた小柄な少女は自分の右手を目の前に持ち上げ、逆側の手を振りながら驚きの声を上げていた。


「すごい!それでどうなったんですか⁈リョウ!」


 懐かしい話だが、百数十年振りに誰かと話しが出来る俺は、昔話を聞かせるように、俺を右手の薬指に嵌めて目の前にかざした女の子と念話していた。



(最終的には勝ったぜ?攻め込んで来てた魔族を追い返して、魔族の国に侵攻してな、長い戦いの末に魔族の王を見事封印したってわけだ!聖剣レンゼリアがな)


 まぁ現場を見たわけじゃ無いけどな。帰って来た後でレンゼリアが言ってた。全能力使っても封印するのが精一杯だったけどなんとかしてやったって。



「聖剣レンゼリアって王国に伝わる伝説の聖剣ですよね⁈お話し出来るって言い伝えは本当だったんですね、リョウ、もっと詳しく聞かせて下さい!」


(いいけど、今日はもう遅いだろ。明日またゆっくり話してやるから今日はもう寝ような、エミリア)


「むー。絶対ですよ⁈寝て起きたら消えてたりしないで下さいね!リョウ!」


(あぁ、エミリアの指にちゃんと嵌ってるよ、おやすみ。)


「えへへ、うん、おやすみなさい。」


 エミリアはそのままベッドへと潜り込んだ、部屋には程なくして少女の穏やかな寝息が聞こえてくる。

 ベッドの上には光量の落ち始めた小さく光る魔力の塊がフワフワと浮いていた。


 10歳にしちゃ夜更かしした方かな。





 壮大な魔族との戦いが始まると思ったか?残念、そんなことはなかった。

 俺はな。


 あの後の事は簡単に話すとこんな感じだ。


 他の武具の持ち主はあっさりと決まったんだが、俺を装備出来る奴が居なかったんだ、騎士の中には。あと他の武器は凄え能力があったんだが、俺はほら、筋力増加しかなかったし、俺の声が聞こえるのが…色々と試した結果レンゼリアの持ち主の従者だけだったんだ。


 なので結局戦闘には参加しなかった。筋力増加で荷物運んだりが楽になるってんで、雑務サポート用の装備になってたのが当時の俺。


 色々あったんだが、全部語ると10年分位あるからなぁ…激しい戦いの中で異世界から呼び出された武器もいくつか破壊されたり、魔族の幹部の1人がこっちに寝返ったり、そいつが持ち主が死んだ武器を使えるようになって一緒に戦ったり、勇者のピンチに真の力を解放する聖剣レンゼリアとか、仲間の武器が敵に鹵獲されて勇者と戦ったり。

 まぁ、本当に色々あった…らしい。

俺?従者と2人して野営地で飯作ってたり、陣地作る時の人足になったりしてたよ、戦闘なんぞ一度も参加した事無かったし、敵の奇襲があった時は全力で従者を逃がしてたな。


 俺の日課は帰ってきたレンゼリアと念話で話してその日の成果を聞く、それから朝まで労ったり愚痴られたりお互いに色んな話をしながら朝を迎えて、俺とデクスはまた次の戦いの裏方にって寸法だった。


 10年越しの戦いが終わって凱旋したら、レンゼリアの持ち主は王様の娘と結婚して勇者王とか呼ばれだして、その従者であるデクスの野郎は勇者を支えた功績により子爵の爵位を与えられ、200年近くこの地を治めて来たってわけだな。初期の領地管理の時はデクスに内政チートさせたもんだわ。俺も若かったぜ。


 そっからだ、デクスが死んだ後はずーーーっと家宝として飾られてた俺は、誰とも会話ができない動けない状態で百数十年、飾り台の上でこのマキナウス家を見続けてきた。


 人間遠野亮司だった頃の記憶もまだあるし、200年間見聞きしていた色んな事も、もちろん覚えてる。異世界転生モノの恩恵か狂う事もなく孤独にジーッと家宝として飾られてたってわけですよ。


 それで今日だ。

 マキナウス家の次女、エミリア=マキナウスの10歳の誕生日、朝からのお祝いの中で10歳になった子供は俺を指に通すっていう、170年程前に出来たイベントで、俺を嵌めたエミリアの指にサイズが合った。

 そう、俺のアビリティ:サイズ調整 をエミリアが発動させたんだ。ビビって思わず出た念話がエミリアに聞こえて大騒ぎになるしさ。

 で、冒頭の就寝前になるわけよ。


(誰かと話せるって素晴らしいな。)


 エミリアの部屋で誰に言うとも無しに俺は呟いた。レンゼリアと別れて百数十年、デクス以来誰も俺を装備出来なかったもんな。

 既に帰る方法を探すのは大分前に諦めた、レンゼリアもずっと王家に居るらしいし、元の世界に帰る方法は無いんだろうと思う。なら…



 俺は俺を壊せる方法がやっと探せると喜びを抑えきれなかった。



◇異世界の指輪◇

装備分類:リング

防御力:0

魔力値:3

アビリティ:筋力増強+1

サイズ調整

パッシブ :魔力操作

視覚自在化

思考制御


◇説明◇

詳細不明の金属で出来た指輪。

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