5話 それはそちらでお願いしたい
おー、なんか持ってかれたぞ、レンゼリア。
王様っぽい爺さんと話してんな。
俺にも聞こえるけど、さっきまでと全然口調が違うじゃねーか。にしてもえらく尊大な口調だな、おい。
…長くなりそうだし、話し相手も持って行かれたのでちょっと周りを見てみるか。
…視点移動とか出来ねーのかな、自分を中心にして360度は見えるんだが視界がクルクル回るだけなんだよな…
で、よく見たら視点が机からピッタリ上ってワケじゃないんだよ、若干上目と言うか。だってほら、机に置かれてるなら視界の半分は机になるわけじゃん、下半分が。
なんでイメージとしてはちょっと上にカメラがある感じなんだよね、低めの三人称視点でキャラの真上にカメラがあるイメージ。
このカメラ動かせねーかな…よっ!ほっ!…魔力ー!魔力ーーーー!!おぉ⁈
上がった上がった!カメラ位置が上がったじゃん、やれば出来るじゃん俺!
『視覚自在化:パッシブ化「します」』
パッシブ化したらより自由に動く様になったな、おぉ、指輪の俺が見える…見えるけど…俺だけショボいな。どいつもこいつも派手だ。
(一つを除いてな。)
(俺にだけ聞こえる様に言うんじゃねえ!)
豪華な木製の机の上に真っ赤なテカテカする布が引かれて、俺達?が並べられている。
他のブツは7種類か、槍、斧、鞭かあれ?弓、棒…は棍ってやつか、杖と…なんだありゃ、ボール…拳大の金属球みたいな物が2個並んで置いてあるな。
それで、俺がショボいって言ってたのはアレだ、俺だけ装飾が全く無い、黒っぽい金属製の唯の指輪だ。
レンゼリアは持って行かれる時に見えたが、やたらとファンタジーな見た目だったな、鍔が翼の形とかなんなんだよ、実用性あんのかアイツ。
それで槍は刃の付け根に竜っぽいのが絡み付いてる、斧の側面には狼みてーなレリーフが迫力あるな、杖なんか木製に見えるのに湾曲した柄頭の中心にはデカイ緑色の宝石みたいなのが浮いてやがる。浮くって。
二つの金属球みたいなのはシンプルな見た目だがミラーボールみたいなカットがしてあって不規則に光ってるし、棒は両端に青と赤の宝石みたいな物が埋め込んである、鞭に至っては金属製のイバラだぜ、イバラ。弓は…形は和弓っぽいな?真っ赤な飾り紐が持ち手のとこに巻いてある、弦も赤い。
そんでその中で、俺だけ安いシルバーリングみたいなツルっとした見た目。すごくプレーンな感じだ。くそう、悔しいのはアイテムとしてのプライドが早くも芽生えてんのか。
視点移動を色々と試してみる。コントローラーのスティックをグリグリするイメージでカメラ移動させてると限界が分かった。大体本体から半径3メートル位の球形が移動可能な範囲か、床の中に入ったときは真っ暗で上下感覚が無くなって焦ったぜ。指輪なのに上下感覚ってのもおかしいが。
「は、はひっ!」
なんだ今の声、なんか若い騎士がフラフラしながら王様の方に向かってったな。
あー、アイツがレンゼリア装備するとかそんな話か、あの聖剣様絶対中年に持たれるのが嫌だったに違いない、だってよく見たらイケメンだったしな、若いし。爆ぜろ、ははっ。
終わったかな?結局レンゼリアはあの若い騎士が持つのか、他の武器ってか俺はどうなるんだろう。魔族と戦うとか言ってたけど、俺は戦力になるんだろうか。
あー、今更だが日本には帰れるのかな。
◇異世界の指輪◇
装備分類:リング
防御力:0
魔力値:3
アビリティ:筋力増強+1
サイズ調整
パッシブ :魔力操作
視覚自在化 new!
◇説明◇
詳細不明の金属で出来た指輪。